客員教授/ウエルケアわきた整形外科
名誉院長 筒井廣明先生
隠れ肩こり・腰痛の
発見にも有効なセルフチェック
現代人の肩こり・腰痛は、“頑固”だと思います。“頑固”というのは治りにくいという意味です。現代の生活は便利すぎて、動くことが少なく、幼いときから人間の体の機能を十分に使わず生活しています。そのため、体の対応力や応用力が落ち、自力で「こり」や「痛み」を治せない体になっているのです。
人間に本来備わっている機能を使い、当たり前に動くことができればいいのですが、「当たり前のことが、当たり前にできない」ことが現代人の体の特徴だと思います。筋肉が正しく動いていない部分があると、それを自動的に補正する能力が人間には備わっています。筋肉の伸びが悪かったり、固まっていたりする部分があり、体の一部がうまく動かなくても立ったり、座ったり、歩いたり、走ったりできるのは、人間の体の補正機能がオートメーション化されているからです。しかし、うまく動かないところを補正できているときはいいのですが、補正ができなくなると肩こり・腰痛の原因になります。症状が悪化する前に肩こり・腰痛の原因となっている体の動きの悪いところを自覚して対処していきましょう。
パソコンなどデスクワークが多い人や、ドライバーなど座っている時間が多い人は、20分に1度、体の一部分を動かすことをおすすめします。たとえば、お尻の体重をのせているところを少し変えたり、ゆっくり深呼吸をするなどの簡単な動きを習慣的に行うようにしましょう。
また、体の動きやバランスのチェックを習慣的に行うことも重要です。たとえば、ラジオ体操をゆっくりと正確に行えるかどうかは、体の動きのチェックに役に立ちます。一見きちんと動いているように感じていても、実は腕が正確に上がっていないことなどがあるので、大きな鏡や窓ガラスに映して確認をしてください。
セルフチェックで
肩こり・腰痛を予防しましょう
体のバランスのチェックとして簡単に毎日できるのはセルフチェックです。体のどこかに負担がかかり、うまく動けなくなると、他の部位が動きをカバーしようとします。体の中で次々とこのような状態が起こると、体のバランスが崩れ、一部の筋肉に強い負荷がかかるようになり、肩こり・腰痛として症状が現れます。負担がかかっているかどうかを知るには、自分一人で手軽にできるセルフチェックが有効です。筋肉が正しく使われているか、関節の可動範囲はしっかりあるか、左右のバランスが崩れていないかを下記の方法でチェックします。
肩こり・腰痛がある人はもちろん、自覚症状がない人にも隠れ肩こり・隠れ腰痛が潜んでいる恐れがあります。実際に自分の目で自分の体をじっくり観察してみると、「左右の肩の高さが違う」など、意外な姿に気付くことが多いはずです。
体のゆがみの原因は、体の使い方が無意識のうちに左右どちらかに偏り、使わない方の筋肉や関節が衰えたり、動きが悪くなることにあります。
鏡を見てセルフチェック1
セルフチェックの方法として気軽にできるのは、鏡を使って一人で観察する方法。大きな鏡を一枚用意して、なるべく薄着で行いましょう。
鏡を見てセルフチェック 2
肩の筋肉が固まっていないかのチェック。
脇を締め、腕を動かさずに肩先だけをまわしましょう。肩こりの解消法としても有効です。
鏡でチェックをして、きれいな○が描けていれば筋肉は固まっていません。△や□になる、または音がなるなどの場合は筋肉や関節が固まっています。
手のひらを真上に向け、ひじを90°にして前に出し、その状態から脇を締めて腕を開きます。
違和感や動かしにくくないかチェックし、腕を開いた角度が60°以上なら問題ありません。
手のひらを下にして両腕を前にまっすぐ出し、そのまま真上にまっすぐ上げましょう。
次に、手のひらを上にして、真横に広げて、そのまま真上にまっすぐ上げます。
どちらか片方が上がらなかったり、ひっかかりや痛みを感じたりしないかチェックしましょう。
セルフチェックで重要なこと
セルフチェックは、できれば毎日行うことをおすすめします。全身が映る大きな鏡を自分で見て行う、または、人に見てもらったり、スマホで撮影したりして確認するのもよいでしょう。
なかには肩こり・腰痛の自覚症状がない方もいます。筋肉は固くなっているけれども自覚がない隠れ肩こりや隠れ腰痛は、自分の体からの信号を受け止められていないので、そのまま気付かず放置しておくと病気につながるリスクが高くなります。筋肉が正しく機能していれば、肩こり・腰痛、そしてその先にある病気の予防につながります。肩こり・腰痛予防の筋トレなどをする前に、まずは、セルフチェックを行ってください。
ウエルケアわきた整形外科 名誉院長筒井廣明(ツツイ ヒロアキ)先生
プロフィール
1976年昭和大学医学部卒業。1999年~2007年昭和大学藤が丘リハビリテーション病院病院長、2010年昭和大学教授に就任し、大学院保健医療学研究科と藤が丘リハビリテーション病院スポーツ整形外科を担当。2016年3月退任し、現在、昭和大学藤が丘病院整形外科客員教授、ウエルケアわきた整形外科名誉院長、NPO法人スポーツ・健康・医科学アカデミー理事長。日本整形外科スポーツ医学会名誉会員、日本肩関節学会名誉会員。
マスメディアにも多数出演し、「肩の名医」として知られる。