血管周辺に異常が起きる発作性の頭痛で、激しい痛みと吐き気などを伴う
「片頭痛」は、女性に多い発作性の頭痛です。この「片頭痛」と「緊張型頭痛」の2つは混同されることがよくあります。
その病名から、頭の片側が痛んだら自分は「片頭痛」だと思い込んでしまう人も多いようですが、両側とも痛むこともあります。正確には、次のような特徴的な症状を伴うものを「片頭痛」と呼んでいます。
- 1.痛みが拍動性である(ズキン、ズキンと脈打つように痛む)
- 2.持続時間が4〜72時間と比較的短い
- 3.頭痛が始まると、寝込んだりして生活に支障をきたす
- 4.吐き気がしたり、吐いたりする
- 5.頭痛発作が起きると、光や音が耐えられなくなり、暗いところへこもってしまう
こうした症状を伴わない場合は、「緊張型頭痛」のケースが多いようです。
典型的な片頭痛の症状とは?
「片頭痛」では、頭痛発作が始まる前に、閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる前兆が現れることがあります。ただし、この前兆はすべての人に起こるわけではありません。
この前兆のある人は、目の前に「火花が散るような」、または「ギザギザした歯車のような」光がみえたり、視界の一部がその光によって白く遮られたりする症状を訴えるのが特徴的です。それがおさまったかと思うと、こめかみから側頭部のあたりが脈打つように痛み始め、その尋常ではない痛みが数時間から長くて3日くらい続き、自然に消えていきます。この間、日常生活もままならなくなるような症状を呈すのが「片頭痛」の特徴です。
三叉神経血管説が有力
「片頭痛」の原因やメカニズムについては諸説ありますが、現在最も有力視されているのは三叉神経が刺激されて起こるという説です。
脳底部の主幹動脈から大脳皮質表面の軟膜動脈、および硬膜血管周囲には、三叉神経から伸びた神経線維が張り巡らされています。何らかの原因で三叉神経が刺激を受けると、その刺激でセロトニンなどの神経伝達物質が血液中に一気に放出されこれにより脳血管は収縮するのですが、そのあと、セロトニンは代謝して減少し、逆に脳血管が拡張し、周囲に炎症が起こります。同時に、拡張した血管が周りに張り巡らされた三叉神経を圧迫するため、動脈が脈打つたびに拍動性の痛みが起きます。ムカムカしたり嘔吐したりするのは、その刺激を受けて脳が興奮状態に陥るためと考えられます。
片頭痛のトリガー(誘因)は
人によってさまざま
「片頭痛」はこのように何らかの原因で三叉神経が痛みに過敏になっているところに、もう1つの要因が重なると、それが引き金となって起こるとされています。そのトリガー(誘因)についてはいろいろありますが、よく知られているのが「ストレスからの解放」です。
トリガー 1
ストレスからの解放
「緊張型頭痛」ではストレスそのものが原因となりますが、「片頭痛」では不思議なことにストレスがかかっている最中よりも、むしろそれから解放されたときなど、副交感神経が優位になると発作が起きやすいことがわかっています。たとえば、責任の重い仕事をやり終えて肩の荷が下りたとたん頭痛が始まったということがよくあります。「片頭痛」が週末に起きやすいのも同じ理由からです。
トリガー 2
気候に影響
気候にも影響されます。春先によく起きる人、秋口に起きやすい人などいろいろですが、梅雨時や低気圧のときは、一様に悪化する傾向にあります。また、朝、カーテンをパッと開けたら、いきなり頭痛が始まったというように、強い光も誘因になることがあります。大きな音、雑踏、タバコや排気ガスのにおい、他人の香水の匂いなども人によってはトリガーになります。
「片頭痛」では、睡眠との関係も指摘されています。寝不足はもちろんですが、寝すぎや長時間の昼寝などでも起きることがあります。
トリガー 3
空腹で血糖値が
下がったとき
空腹で血糖値が下がったときにも起きやすい傾向があります。欧米などでは、チョコレートや赤ワイン、チーズなどの食べ物は血管を広げる作用があるため「片頭痛」を誘発するといわれていますが、全く食べてはいけないというわけではなく、多量摂取や重ね摂りは片頭痛を誘発しやすいと言われています。アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドは血管拡張作用があるため、血管拡張により起こる片頭痛持ちは、飲酒により頭痛が誘発されることが多いようです。
生まれつき起きやすい人がいる
「片頭痛」は、遺伝的な体質も関係していると考えられています。「片頭痛」持ちの患者さんに聞いてみると、お母さんも「片頭痛」で苦しんでいたとか、妹も「片頭痛」持ちだ、などということがよくあります。だれにでも起こりうる「緊張型頭痛」と違って、「片頭痛」は、起きる人と起きない人がわりとはっきり分かれているのです。
薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)
や群発頭痛の可能性もあります。
症状一覧
- ・目をえぐられるような激しい頭痛
- ・必ず頭の片側に起こる
- ・1〜2ヶ月の間、毎日痛みがあらわれる
- ・痛みがあらわれるのは15〜180分
- ・入眠時や早朝に頭痛がおこる
- ・頭痛が月に15日以上ある
- ・頭痛薬を月に10回以上飲んでいる
- ・薬を飲んでも頭痛が強くなってしまう
- ・頭痛薬が効かなくなってきた
人によっては当てはまらない場合もあります。
頭痛には、重大な病気が隠れている場合もあります。
※今までにないような激しい頭痛、高熱や手足のマヒ・しびれを伴う頭痛、日を追うごとに悪化する場合など、いつもと違うと感じたら、すぐに専門医を受診してください。
監修
医学博士/東京女子医科大学 脳神経外科 頭痛外来 客員教授/
獨協医科大学 脳神経内科学 臨床准教授(兼任)
清水俊彦(しみずとしひこ)医師