妊娠中にも、風邪や花粉症、頭痛、胃痛などの症状が起こることがあります。多くは、ウイルスや細菌などに感染して起こる感染症やアレルギー症状などですが、妊娠中にはまず、「感染しないための予防」を心がけることが大切です。
人混みに出るときはマスクをする、帰宅後は手洗い・うがいをする、栄養バランスのよい食事や十分な睡眠をとるなど、日常生活における心がけが大切です。
予防接種で防げる病気もあります。予防接種のうち生ワクチンは、ワクチンのウイルスが赤ちゃんに移行する可能性があるため、妊娠中は接種できません。不活化ワクチンは、医師が必要と判断した場合には接種することが可能です。授乳中は、生ワクチンも不活化ワクチンも、母乳に影響を与える心配はないとされています。
感染症の中でも、特にインフルエンザは、妊娠中にかかると流早産や胎児死亡など、重い合併症を起こすことがあります。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、妊娠中に接種しても妊娠や赤ちゃんへの影響はないとされています。そのため、産婦人科学会でもインフルエンザワクチンの接種を推奨しています。
予防を心がけていても、病気になってしまうことはあります。お母さんの体調が悪い状態は、赤ちゃんにとってもよくないため、不調を感じたら早めに受診しましょう。
妊娠を伝えた上で病院で処方された花粉症や喘息などアレルギーの薬、解熱剤や抗炎症薬、抗生物質などを、一般的な処方量で数日間一時的に飲むことは、まず心配ありません。ただし、厳密にはそれぞれの薬の種類や量、妊娠時期などによっても異なるため、妊娠がわかる前に飲んだ薬が心配な場合や、これから市販薬を使いたいと考えている場合は、医師に相談しましょう。
以下に、妊娠中でも起こる日常の症状と薬について注意するポイントをまとめました。
症状 | 薬について妊娠中に注意するポイント |
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風邪 | 妊娠中は不要な薬をできるだけ避けるためにも、熱、鼻水、咳など症状に応じた薬を使うほうがよい。医師に相談を。 |
花粉症 | 花粉・ダニ等のアレルギー薬には、妊娠中に使用できるものもあるので、医師に相談を。点鼻薬や点眼薬のほうが飲み薬よりも血液中に入る成分が少ないため、より使われやすい。 |
頭痛 | 解熱鎮痛剤によく使われる非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)などの成分は、妊娠中期~後期に使うと赤ちゃんの健康に影響する場合があるので添付文書の記載を確認。痛み止めは自己判断で使わずに医師に相談を。 |
胃痛・胃もたれ | 胃腸薬には作用の異なるさまざまな種類があり、妊娠中に使えないものと使えるものがある。使用前には医師に相談を。 |
一部の抗ウイルス薬、抗リウマチ薬、抗凝固薬、抗潰瘍薬、甲状腺の病気の薬、高コレステロール血症の薬、解熱鎮痛剤、抗てんかん薬などには、赤ちゃんに影響を及ぼす可能性のある薬もあるため、妊娠中には避ける必要があります。しかし、持病がある人が妊娠した場合、お母さんの健康や妊娠の継続、おなかの赤ちゃんのためにも必要な治療は続けなければなりません。その場合は、病気の状態や妊娠の時期などに応じて、できるだけ影響のない薬を選びながら治療をおこないます。
妊娠の可能性がある場合は、妊娠前に持病の治療などに使用していた薬や、市販薬を使用する前には、必ず医師に相談しましょう。妊娠を伝えた上で病院から処方された薬や、医師が使用しても問題ないと判断した市販薬については、指示を守って使用するようにしましょう。
本文監修:日本赤十字社 葛飾赤十字産院 副院長 鈴木俊治 先生