胸やけをほうっておくと、ダメージを受けた食道が刺激を受け続けることで症状が悪化してしまうことがあるため、早い段階での対策が必要です。一過性の胸やけは市販薬(OTC医薬品)で対処できますが、薬を数日服用しても症状が緩和されない場合や、繰り返す場合などは、早めに医療機関を受診しましょう。
医師の診断が必要なものとして、以下の症状がサインとなるので、すぐに専門医を受診しましょう。
脂肪の多い食事や甘いものを食べ過ぎたなど、原因がわかっていて一過性に起こった胸やけであれば、市販薬を利用するなどのセルフケアが可能です。
しかし、胃酸の逆流をほうっておくと食道炎となり、それが悪化すると出血したり、食道が狭くなったり、まれには食道がんにつながることもあるため、症状を繰り返す場合は早めに受診しましょう。
高齢の方などでは食道炎になっても胸やけなどの自覚症状があらわれず、出血してからわかることもあります。健康診断でみつかることもあるので、検査は定期的に受けるようにしましょう。
胸やけは、胃酸が食道に逆流することが原因のため、胃腸薬を使用するときには、胃酸の分泌を抑える薬や、胃酸を中和する作用のある薬を選びましょう。
くすりの種類 | こんな症状に | ポイント |
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胃酸分泌抑制薬 (H2ブロッカー) |
胸やけ、胃もたれ、胃痛、むかつきなど | 胃酸の分泌を抑制することで胃の粘膜が傷つくことを防ぐ。ファモチジンなどがある。胃酸の基礎分泌を抑え、効果が速く長時間続く。またファモチジンは、胃粘膜の修復を助ける作用も認められている。 |
胃酸分泌抑制薬 (M1ブロッカー) |
胃酸の分泌を抑制することで胃の粘膜が傷つくことを防ぐ。ピレンゼピン塩酸塩水和物などがある。副交感神経による胃酸分泌を抑制する。 | |
制酸剤 | 胸やけ、胃痛など | 胃酸を中和する。炭酸水素ナトリウム(重曹)や合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウムなどがある。胃酸を中和することにより胃粘膜への刺激を緩和する。 |
胃酸の分泌は、ヒスタミン、アセチルコリン、ガストリンという神経伝達物質が、胃の粘膜の壁細胞膜上にあるそれぞれの受容体に結合する(スイッチON)ことによって起こります。ヒスタミン受容体は胃酸の基礎分泌に大きく関与しています。H2ブロッカーは、ヒスタミンH2受容体と結合(スイッチOFF)してヒスタミンの刺激をブロックし、胃酸分泌を抑制するタイプの薬です。
胸やけの主な原因となる「胃食道逆流症(GERD)」は、症状のあらわれ方や食道のただれ方(食道炎の所見)によっていくつかのタイプに分けられます。
食道に炎症がみられるタイプは「逆流性食道炎」と呼ばれ、高齢の男性、喫煙者などに多いことが知られています。胃酸が異常に逆流することで食道の粘膜がただれ、胸やけなどの症状を起こします。「食道裂孔ヘルニア」という病気によって逆流が起こりやすくなっている人もこのタイプには多くみられます。逆流性食道炎のなかには、自覚症状があらわれないタイプの人もいます。
一方、食道に炎症がみられないのに胸やけなどの症状だけがあるタイプは「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」と呼ばれ、若年の女性、体重の軽い人に多いことが知られています。このタイプの人は、逆流した胃酸にさらされてはいるもののまだ食道に炎症が起こっていない場合、食道が刺激に敏感(知覚過敏)なため少量の胃酸や酸度の弱い胃液の逆流でも強く反応してしまう場合などがあると考えられています。
このように炎症と自覚症状の関係もさまざまなため、慢性的に症状が続く場合は、早めに医療機関を受診して、正しい診断を受けましょう。
胸やけ対策をサポート
H2ブロッカー胃腸薬