筋肉や関節の痛みへの対処法
2023.4.28 更新
肩こりや腰痛、腱鞘炎など、筋肉や関節の痛みが出たときの強い味方になるのが外用の「鎮痛消炎薬(消炎鎮痛薬)」です。湿布などを使ったことがある方も多いでしょう。とはいえ、薬局やドラッグストアには湿布だけでなく、ゲル、ローションなどさまざまなタイプの鎮痛消炎薬が並んでいて、自分の痛みを改善するために何を選べばよいか迷う人も少なくありません。上手な外用鎮痛消炎薬の選び方や使い方のポイントなどをご紹介します。
そもそも、首や肩、腰、膝、手指などの筋肉や関節に痛みが出たとき、それを和らげるには冷やしたほうがいいのでしょうか。それとも、温めたほうがいいのでしょうか。
整形外科医で竹谷内医院院長の竹谷内康修先生は、「基本的には、痛みが出始めたばかりの急性期には強い炎症を抑えるために冷やすのがいいでしょう。一方、慢性的に痛みが出る場合には、ホットタオルやカイロなどで温めて血行を改善すると痛みが緩和されやすいと考えられています。肩や腰、手首などの痛みで医療機関を受診する人には、一般に湿布(シップ)などの鎮痛消炎薬を処方するケースが多いです。急性期の痛みでしびれなどのほかの症状を伴わない場合には、まずは市販の鎮痛消炎薬を使って様子を見るのもいいでしょう。たいていの痛みは2週間程度で改善されます」と説明します。
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実は湿布薬で誤解されていることが多いのが、「冷湿布」や「温湿布」についてです。
薬剤師の三上彰貴子先生は「湿布薬には『冷湿布』『温湿布』と呼ばれるものがあり、それぞれ『冷やすもの』と『温めるもの』と勘違いされている方も多いようです。しかし、冷湿布には冷たさを感じるメントールが、温湿布にはピリピリとした熱を感じるトウガラシエキスのカプサイシンなどの成分がそれぞれ含まれているため冷感や温感があり、湿布に含まれる水分で多少冷やす効果はありますが、実際に患部を冷却したり温めたりする作用があるわけではないので、好みで選ぶといいでしょう。
湿布薬に『冷感』や『温感』とあっても、効果をもたらすのはロキソプロフェンなどの抗炎症・鎮痛作用のある成分です。湿布などの鎮痛消炎薬では、これらの成分を皮膚から吸収させて、炎症や痛みを抑えているのです」と強調します。
「温湿布に含まれるカプサイシンやノニル酸ワニリルアミドは局所刺激成分で、血管を拡張させて血行を促す作用がありますが、実際に患部を温めたいときには、ホットタオルやカイロを当てたり、入浴で血行を改善したりするといいでしょう」と三上先生。
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竹谷内先生が前述したように、腰痛や関節痛など、筋肉や関節の痛みによく使われるのが湿布などの外用鎮痛消炎薬です。
一方、内服薬の「解熱鎮痛薬」も、炎症や痛み成分が作られるのを抑える強い味方です。これらは同時に使ってもよいものなのでしょうか。
「腰痛などで我慢できないような激しい痛みが出たときには、市販の内服する解熱鎮痛薬を服用した上で、患部に湿布などの外用の鎮痛消炎薬を使うのがいいでしょう。
受診した患者さんにも、痛みが強い場合には内服薬と外用薬の両方を処方することが少なくありません」と竹谷内先生はアドバイスします。
ただし「強い痛みで市販の解熱鎮痛薬(内服)と鎮痛消炎薬(外用)を併用する場合には、必ず決められた用法・用量を守りましょう。まずは薬局・ドラッグストアの薬剤師や登録販売者に相談するのがおすすめです。さらに、短期間で痛みが改善しないときには医療機関を受診するようにしてください」と三上先生は注意を促します。
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医療機関を受診する際には、「いつ、どんなきっかけで痛みが出たのか、どのような痛みなのか、どんな姿勢をしたときに痛むのか、動いたときに痛むのか、安静にしていても痛むのか、痛み以外の症状の有無などを伝えると、診断の一助になります。あらかじめこれらをメモして医療機関に行くといいでしょう」(竹谷内先生)
自分の痛みの特徴をメモして受診を
外用鎮痛消炎薬には、パップ剤、テープ剤、ゲル、ローションといったタイプがあります。それぞれどのような特徴があり、どのように選べばいいのでしょうか。
一般に湿布薬といわれるものには「パップ剤」と「テープ剤」があります。「湿布」イコール「パップ」で理解されている方も多いかもしれません。
パップ剤は不織布に水分を含む軟膏が塗布されている、比較的厚みのあるものです。
一方、テープ剤はほとんど水分を含まないものをいい、薄くて伸縮性があり粘着性が高いという特徴があります。
「パップ剤は含水量が多いので、貼ったときにひんやりします。その感触が好きな人はパップ剤がいいでしょう。テープ剤は伸縮性がありはがれにくいので、肩や腰だけではなく、手首や肘、膝などの動きの多い部位にもがおすすめです。
また、夏場など汗をかきやすい環境でもテープ剤が向いていますが、貼る前には汗を拭き取り、かぶれるようでしたら避けましょう」と三上先生。
「関節部分に湿布を貼る際は、ある程度動きを制限して患部を固定する意味でも、湿布がはがれないようにする意味でも、サポーターやテーピングを併用するといいでしょう。
テーピングの方法は、痛みの部位などによるので、一度受診して専門家の助言を受けましょう」と竹谷内先生。
チューブに入ったゲルタイプは、手で患部に塗るものなので、「痛い部分をマッサージするように塗ると、心地よい感覚を得られます(急性期など熱や炎症のある痛みは除く)」(三上先生)。
これに対してローションタイプは容器から直接薬液を塗布できるので、手を汚さずにサッと塗れるのが利点です。
「湿布を貼りにくい部位や湿布でかぶれやすい人には、ゲルやローションタイプを使うといいでしょう」(三上先生)
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鎮痛消炎薬の使い方にも日本人と欧米人で違いがあるようです。
三上先生は、「欧米人は肩こりや腰痛でも内服の鎮痛薬を使用する人が多く、パップ剤やテープ剤など貼るタイプの鎮痛消炎薬を使う人は少ない傾向があります。おそらく体毛の量の違いがあるのではないでしょうか。体毛が多いと、湿布などを剥がす際に痛いために使いにくいからでしょう。そのため、ゲルやローションタイプは使われているようです」と話します。
一方で、「日本には昔から『手当て』という言葉があるように、痛みなどの症状がある局所に薬草などを塗ったガーゼを塗布するといった習慣があったため、外用薬が好まれやすいのかもしれません」と話します。
現在市販されている外用鎮痛消炎薬に含まれる炎症や痛みを抑える成分には、「ロキソプロフェン」、「ジクロフェナク」、「インドメタシン」、「フェルビナク」、「ケトプロフェン」があります。外用鎮痛消炎薬には、これらに加えて清涼感を与えるメントールや、温熱感を与えるカプサイシンやノニル酸ワニリルアミドなどの局所刺激成分が配合されています。
「効能効果は成分で変わりませんが、一つ気をつけてほしいのが『ケトプロフェン』を含むタイプの使い方です。
ケトプロフェンを含む湿布薬を使い、紫外線を浴びると光線過敏症(光接触皮膚炎)を起こす可能性があるからです。光接触皮膚炎を起こすと、使用部位に発疹や発赤、かゆみなどが現れます。ですから、ケトプロフェンを含む湿布薬を肌が露出する部分へ使うのは避け、使用する場合は衣類やサポーターなどで覆い遮光してください。
多くは使用中や使用後1週間以内に紫外線に当たることで起こりますが、まれに湿布を貼るのをやめてから3〜4週間後に症状が出ることもあります。湿布をはがした後も4週間ほどは、貼った部分に紫外線が当たらないようにする必要があります」と三上先生は指摘します。
また、トウガラシエキスのカプサイシンを含む湿布薬を使う際も注意が必要です。「敏感肌の方などは、カプサイシンの局所刺激が強く、かぶれを起こす可能性があります。はがした後、熱いお風呂に入るとピリピリと痛みを訴える方もいらっしゃいます。刺激が強いと感じたときは使用を控えましょう」(三上先生)
いずれのタイプの鎮痛消炎薬にしろ、どれくらいの量を使えば良いか迷うことがあるのではないでしょうか?
「どんな鎮痛消炎剤でも、原則として製品パッケージなどに記載された用法・用量を守って使用してください。
例えば湿布薬の場合には、大きいサイズで2~3枚、小さいサイズで4~5枚までが一般的です。もし、複数の関節や筋肉が痛み、規定の枚数や回数で治りきらないようなら、内服の解熱鎮痛薬を使うか受診をお勧めします。
痛みや辛さの原因がわかっていて、貼っていると気持ちがいいという場合を除き、3〜4日使っても症状に変化がない、あるいは悪化するようなら医療機関を受診してください。
また、貼り替える頻度にも注意が必要です。
メントールのひんやりとした感触が薄れてくると、湿布薬をはがして新しいものに貼り替えたり、ローションやゲルを塗り足したりする人もいますが、それはもったいないことです。
メントールの刺激はなくなっても、鎮痛消炎成分の作用は持続するように湿布薬は設計されています。ですから、1日1回もしくは2回の決まった回数で効果は得られるのです。過剰に使わないためにも、用法用量をまもってください。
例えば湿布薬の1日の使用回数が2回なら、1枚の使用期間を12時間を目安に貼り替えるといいでしょう。1日1回のものなら24時間を目安にし、入浴後のタイミングに汗をよく拭き取ってから貼り替えるのがいいでしょう。その際、全く同じところに貼るとかぶれやすくなるので、場所を少しずらしたり、縦と横の向きを変えるといった工夫をするとかぶれ対策になります」と三上先生は説明します。
塗るタイプのローションやゲルは「手のひら●枚分を目安に」などと書かれていることがあります。その場合には「塗る前に患部に手のひらを当ててみて、その覆われた範囲を目安に塗るようにしてください」(三上先生)
「湿布薬のにおいが苦手」「湿布薬にはどうして独特のにおいがあるの?」と思っている方も多いのでは?
「湿布薬のスッとしたにおいは、冷たい刺激を与えるメントールなどによるものです。メントールには冷感刺激のほかに、知覚神経を麻痺させる局所麻酔作用があり、痛みを和らげるのにも役立っています」(三上先生)
最近の湿布薬は、従来のものよりもメントールのにおいが軽減されているものも出てきています。また、サリチル酸グリコールという成分を使った無臭タイプのものもあるので、外出の際においが気になる方は、そうしたタイプを選ぶといいでしょう。
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湿布薬にはさまざまなタイプがあり、使うシーンによってきめ細かく使い分けることができます。筋肉や関節の痛みが気になるときの強い味方になってくれるでしょう。
今回は、鎮痛消炎薬の上手な選び方や活用法を紹介しました。
つらい体の痛みが起こる原因や改善方法が知りたい方は、前編で紹介しているのでチェックしてみてください。