頭痛や便秘、冷えの原因にも

自律神経の乱れに伴う症状とは? 将来の生活習慣病リスクにもつながる?

2023.3.8 更新

24時間365日休むことなく働き、私たちの体を最適な状態に保つ「自律神経」。この自律神経の機能が乱れると、本来持っている力を発揮できないだけでなく、「疲れやすい」「よく眠れない」「やる気が出ない」「頭痛がする」など、さまざまな心身の不調が現れるようになります。将来的な健康リスクにもつながる「自律神経の乱れ」について、正しく知っておきましょう。

自律神経の乱れは頭痛や冷え、便秘などを引き起こす

自律神経には活動時に優位になる「交感神経」と、リラックスしているときに優位になる「副交感神経」があり、それらがその時々の状況に応じて交互に働き、全身の状態が最適になるように微調整しています。
(詳しくは、「交感神経は緊張時、副交感神経はリラックス時に働く」(前編)」へ)

ところが、心身のストレスや不規則な生活が続くと自律神経のバランスが乱れ、この微調整がうまくいかなくなり、さまざまな不調が現れることになります。
「現代社会で多く見られるのは、交感神経が働きすぎて過緊張になる不調です。交感神経が優位になると血管が収縮して、血流が悪くなり、頭痛や肩こり、手足の冷えやしびれなどが起こりやすくなります」と、東急病院心療内科の伊藤克人先生は説明します。

部屋着を着こんで手を温めている冷え性の女性

このほかにも倦怠感や不眠、耳鳴り、めまい、眼精疲労、動悸、のどや胸のつかえ、腰痛、頻尿……と、自律神経の乱れによって生じる不調は、実に多彩。自律神経は全身のすみずみに張り巡らされ、内臓や器官の働きを調整しているので、さまざまな症状が出てくるのです。
「体の不調に伴い、不安やイライラ、気分の落ち込み、意欲の低下などの精神的症状も現れやすくなります。症状がいくつも重なって現れたり、日によって違う症状が出たりすることも珍しくありません」(伊藤先生)

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女性の場合は、女性ホルモンの変動によって自律神経が乱され、イライラや抑うつ、のぼせ、頭痛、肩こり、冷えなど、さまざまな不調に見舞われることもあります。その代表が更年期障害です。
「ホルモン分泌を管理しているのは脳の視床下部ですが、ここは同時に自律神経の中枢でもあります。更年期に女性ホルモンの分泌が乱れてくると、自律神経の働きにも影響が及んで不調につながるのです」と伊藤先生。

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また、女性ホルモンは月経(生理)周期によっても変動するため、更年期の女性ばかりでなく、思春期や性成熟期の女性にも関係しています。生理が始まる前にイライラや倦怠感、むくみなどの症状が起こる月経前症候群(PMS)も、自律神経の乱れが関与していると考えられます。

脳と腸はつながっている!?「脳腸相関」による影響

腸も自律神経と深く関係しています。「腸は第2の脳」とも言われますが、最近では腸と脳が互いに密接に影響を及ぼし合う「脳腸相関」も注目されています。ストレスを感じるとお腹が痛くなって下したり、便秘になったりした経験がある人は少なくないのではないでしょうか。
「腸の蠕動(ぜんどう)運動は、リラックスモードの副交感神経が優位なときに活発になります。ストレスで交感神経が優位になると、蠕動運動が抑えられて便通異常が起こるのです」と順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生は説明します。

通勤電車の中で急に腹痛に襲われている40代男性

このように脳がストレスを感じると腸の具合が悪くなるのと逆に、腸の状態がよくないと脳での不安や緊張も増すこともあるようです。例えば「過敏性腸症候群」という病気が、その典型。検査をしても腸自体に異常はないのですが、不安や緊張があると急にお腹が痛くなったり、下痢と便秘を繰り返したりします。脳で感じたストレスが腸に伝わり、腸は痛みに対して過敏になって下痢を起こし、その刺激がまた脳に伝わって不安が増す……という悪循環になっていると考えられています。
「実は、こういった脳と腸との情報のやり取りを行っているのが自律神経。腸をよい状態に保つには、食事などで腸内環境を改善すると同時に、ストレスを減らし、規則正しい生活をし、自律神経の働きを整えることがとても重要です」(小林先生)

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    よくあるご質問

低気圧が近づいたり、雨が降ったりすると体調不良になる「気象病」も自律神経が関わる不調です。気温や気圧、湿気などの変動が身体的ストレスとなって、自律神経の働きを乱し、頭痛やめまい、むくみ、倦怠感などの症状を招くと考えられています。
「気圧が低くなると交感神経の働きが低下し、元気がなくなる傾向があります。季節の変わり目も寒暖差が大きく、自律神経が不安定になりやすいので体調を崩しやすい時期です」と小林先生。

自律神経のバランスが崩れやすい不調

自律神経のバランスが崩れると起こりやすい不調

(イメージ図)

市販薬でできる対処と、受診する目安

このように、自律神経の乱れから起こる頭痛やめまい、肩こりなどのつらい症状がある場合、どう対処すればいいでしょうか。
「まずは自律神経の乱れの原因になっているストレスや不規則な生活を見直すことが大切です。それと同時に、頭痛ならば解熱鎮痛薬、食欲不振なら胃腸薬など、市販薬を上手に使って症状を和らげるようにするのも一法です。
ただし、市販薬を使っても症状が全く改善しない、症状が2週間以上続くという場合は、内科や耳鼻科、眼科など、症状のある診療科で診てもらうようにしてください」
と伊藤先生。

自律神経の乱れによる不調だろうと思っていたら、他の病気が隠れているということもあるので、注意が必要です。我慢せず早めに医療機関を受診しましょう。

頭痛で病院を受診しようとしている女性

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自律神経の乱れは将来の生活習慣病にもつながる!?

自律神経の乱れによる不調はそのときにつらいだけでは済まない可能性もあります。
「自律神経の乱れが生活習慣病の引き金になることも考えられます。例えば残業が多く、ストレスの多い毎日を送っていると交感神経が優位になり、血圧が上がることに。その後、仕事が落ち着いてストレスや疲労が改善すれば通常は血圧も自然に下がるものですが、中にはそのまま血圧の高い状態が続く方がいます。その場合には、生活習慣病の一つである『高血圧』になってしまうのです」と伊藤先生。

さらに高血圧が長期にわたって続くと動脈硬化が進み、やがて心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気を招く可能性も。

自分の血圧の高さに驚く男性

また、小林先生はこう指摘します。「これまでに説明したように交感神経が優位になると、血管が収縮して血流が悪くなります。血流が障害された状態が長期間続けば、免疫機能も低下しますから、長い目で見ると『がん』などの病気の発症にもつながりかねません。血流障害はさまざまな病気のもとになりますから、将来の病気予防という観点からも、日ごろから自律神経のバランスを整えておくことが大切なのです」

自律神経の乱れと将来の病気のリスク

(Topics)疲労は副交感神経を疲弊させ、睡眠の質を悪化させる

働きづめの毎日が続けば誰でも疲れがたまり、体調を崩します。理化学研究所生命機能科学研究センターチームリーダーの渡辺恭良先生らの共同研究では、残業時間が月に80時間以上という過酷な労働環境下にある勤労者の健康状態を追跡調査しました。その結果、体調の悪化は次の4段階で進むことが分かったそうです。

  • 自律神経の機能低下。特に副交感神経の働きが低下
  • 睡眠の質が低下
  • 疲労が取れなくなる
  • 意欲の低下や抑うつ傾向、アレルギーなどの免疫系の不調、月経不全などのホルモン異常、胃腸症状など、さまざまな症状が出現

「オーバーワークでは交感神経が優位になりますが、それに追随する形で副交感神経のパワーも上がってバランスをとり、体を良い状態に保とうとします。しかしそうした状態が続くと、まず副交感神経が疲弊してしまい、機能が落ちてしまうのです。副交感神経の働きが落ちると睡眠に影響してよく眠れなくなり、その結果さらに疲労が蓄積し、全身にさまざまな不調が出てくると考えられます」と渡辺先生。

不眠や睡眠の質の低下は自律神経からのSOSです。このサインを見逃さず、無理をしすぎないよう健康管理に努めたいものです。

(Topics)自律神経が乱れると年齢より老けて見える!?

「自律神経の乱れが続くと、体の中だけでなく、見た目も実年齢より老けて見える可能性があります」と小林先生。
その理由は、ズバリ、血流です。
「自律神経が乱れ、交感神経が優位になると血管が収縮して血流が悪くなります。その結果、肌や髪の毛を作る細胞などに十分に栄養が行き渡らなくなり、肌のターンオーバーにも影響してしまいます。また、自律神経の乱れは腸内環境も悪化させ、肌トラブルにもつながります」(小林先生)

人生100年時代、いつまでも見た目も体も若々しくいるためにも、自律神経を乱さない生活を心がける必要があるようです。

鏡の前でほうれい線などのシワを気にしている40代の女性

(Topics)「自律神経失調症」は正式な病名ではない!?

「自律神経失調症」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。実は、自律神経失調症は正式な病名ではありません。けれども、診療現場では診断名として使われることが少なくありません。
日本心身医学会では、自律神経失調症のことを「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」と暫定的に定義しています。つまり、自律神経の乱れによるさまざまな症状があり、血液検査などの検査をしても体に異常は認められず、うつ病などの精神疾患もない、そういう場合に自律神経失調症とみなされる、ということです。

「自律神経の乱れによる症状は、他の病気から生じることもありますから、自律神経失調症という診断を下す場合は、まず他の病気ではないことを確認しておくことが絶対条件です。例えば頭痛の場合なら、血圧を測ったり、CTやMRIなどの画像検査を行ったりして、脳に異常がないかどうか確かめなければなりません。
また、うつ病の場合も自律神経の乱れによる症状が現れやすいので、しっかりと見分ける必要があります。そうした意味で、自律神経失調症というのはいろいろな病気の可能性を一つずつ消していった結果、最終的につけられる診断名といえます」
(伊藤先生)

「自律神経失調症」が病名ではないということに、驚いた方も少なくないのではないでしょうか。

後編では、自律神経の乱れが引き起こす症状やリスク、対策について紹介しました。
自律神経って何? どんな仕組みか? を知りたい人は、前編で説明していますので、読んでみてください。

専門家プロフィール(あいうえお順)

伊藤克人先生
東急病院心療内科医師。1980年、筑波大学医学専門学群卒業。東京大学心療内科を経て、1986年から現職。専門は心身医学、産業医学、森田療法。過敏性腸症候群をはじめとするストレス性疾患の治療に取り組む。職場のメンタルヘルスに造詣が深い。東急電鉄(株)統括産業医、労働衛生コンサルタント、日本心身医学会専門医。
小林弘幸先生
順天堂大学医学部教授。順天堂大学医学部卒業、同大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、現職。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートや文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上の指導に携わる。日本スポーツ協会公認スポーツドクターも務める。
渡辺恭良先生
理化学研究所 生命機能科学研究センターチームリーダー。1976年京都大学医学部卒業、1980年京都大学大学院医学研究科修了。大阪バイオサイエンス研究所神経科学部門研究部長、大阪市立大学大学院医学研究科教授などを経て現職。専門は神経科学、分子イメージング医学。疲労研究の第一人者。大阪公立大学健康科学イノベーションセンター顧問、日本疲労学会理事長、日本リカバリー協会会長なども務める。
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