子どもは大人と違って抵抗力が弱く、内臓の働きも十分ではないため、薬の影響も大人とは異なります。必ず説明書(添付文書)を読み、年齢に合った薬を使うようにしましょう。
市販薬の場合、原則3ヵ月未満は使用不可、1歳未満は医師の診療を優先させるものがほとんどです。子どもには使えない薬の成分もありますので、自己判断で、大人と同じ薬を、量を調節して飲ませるようなことは避けましょう。
体には、さまざまな病気に抵抗するための免疫が備わっています。生まれて間もない赤ちゃんはお母さんからの免疫細胞を受け継いでいますが、生後6~8ヵ月までにだんだん減少します。それを補う自分の免疫細胞がつくられていきますが、7~8歳頃を過ぎるまでは大人よりも免疫が弱い状態なので、感染症をはじめさまざまな病気にかかりやすくなっています。子どもを介して家庭内で大人が同じ感染症にかかることもありますが、その場合でも、自己判断で大人と同じ薬を子どもに飲ませないように気をつけましょう。
薬は消化管(胃や腸)で体内に吸収され、主に肝臓や腎臓の働きによって、代謝・排泄されます。子どもの消化管は未成熟で、薬の吸収が不安定なため、薬によっては効果や副作用が大人より強く出すぎる場合があります。また、子どもは大人と比べて体内の水分の割合が高く、年齢によって適切な薬の量が異なります。使用できる年齢や適切な分量などは薬によってそれぞれ異なるので、説明書(添付文書)をよく確認することが大切です。
市販薬を使うときには、子どもの年齢やアレルギー・持病の有無などを細かく薬剤師に伝え、相談して薬を選びましょう。アレルギーのある子どもは特に注意が必要です。
ヒトには、自分の体を作っている成分とは違うもの(細菌、ウイルス、食べ物、ダニ、花粉、化学物質など)が体の中に入ってきたとき、それを攻撃して排除する「免疫」という機能が備わっています。この免疫反応が過度にはたらき、自分の体を傷つけてしまう場合を「アレルギー」といいます。
アレルギーの病気には、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎のほか、特定の食べ物や薬に対してアレルギー反応を起こす食物アレルギー、薬物アレルギーなどがあります。
食物アレルギーは、特定の食べ物を食べると、じんましんなどの皮膚症状のほか、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状などを起こす病気です。1歳ごろまでは卵、牛乳、小麦など、1歳を過ぎると甲殻類や果物類などが、主なアレルギーの原因として挙げられます。複数の臓器に同時にアレルギー反応が起こり、血圧が低下したり、呼びかけに反応せずぐったりと脱力してしまう「アナフィラキシーショック」と呼ばれる危険な状態になることもあります。
薬によっては、卵や牛乳などの成分を原料に含んでいるものがありますので、子どもにアレルギーがある場合は、市販薬を選ぶ際、必ず薬剤師に伝えるようにしましょう。
薬物アレルギーは、飲み薬や注射のほか、湿布やぬり薬、目薬、吸入薬でも起こることがあります。「薬疹」と呼ばれるじんましんや紅斑といった皮膚症状としてあらわれやすく、腎臓や肝臓、肺などにも症状が起こることがあります。薬を使ってから数時間以内に起こる場合と、半日以上経ってから起こる場合があり、特に数時間以内に起こるアナフィラキシーショックには注意が必要です。
はじめは軽く見えても後から重くなることがありますので、アレルギーが疑われる症状が出た場合はすぐに医師や薬剤師に相談しましょう。
また一度アレルギー反応を起こすと、その薬に対する抗体ができ、次に同じような薬を使ったときにアレルギー反応が起こることがあります。アレルギー反応を起こした薬がある場合は、市販薬を選ぶ際、必ず薬剤師に伝えましょう。アレルギーは同じ体質の人にも起こりやすいので、家族で薬物アレルギーを起こした人がいる場合も、伝えるようにしましょう。
小さな子どもは、副作用が出ていても言葉で不調を正しく訴えられないこともあります。じんましんや発熱、黄疸などわかりやすい症状のほかにも、呼吸がしにくそうだったり、脱力したり、だるそうにしていたり、副作用にはさまざまなあらわれ方があります。子どもの変化を見逃さないよう、薬を飲ませた後は注意深く様子を観察しましょう。
同じ成分でもさまざまな形の薬があります。小児向けに飲みやすく工夫されたものを選んだり、飲ませ方を工夫するとよいでしょう。
小児向けに甘い味がついたシロップ剤や、口の中で水を使わずにかみ砕けるチュアブル錠があります。シロップ剤の味を嫌がる場合は、冷凍庫でシャーベット状にすると飲みやすくなることがあります。なお、お菓子と間違えてたくさん飲んでしまわないように、手の届かない場所に保管するなどの注意は必要です。
粉薬や顆粒状の薬は苦手な子どもが少なくありません。少量の水でペースト状にして上あごに塗って水やぬるま湯を飲ませる、服薬補助ゼリーを利用する、ジュースやプリン、ゼリーなど、子どもが好むものに混ぜるなど、飲みやすく工夫するとよいでしょう。
ただし、グレープフルーツジュースや牛乳など、薬の成分と混ざると効き目が悪くなったり副作用が出やすくなったりするものもありますので、事前に薬剤師に確認しましょう。乳幼児の場合、ミルクに薬を混ぜるとミルクを飲まなくなってしまうことがあるため、避けたほうがよいでしょう。
一般的には5~6歳ごろから大人と同じように水で飲めるようになりますが、個人差があります。錠剤の大きさを子どもにあわせて考慮しながら、小さい錠剤ならば飲ませてみるなど、少しずつトレーニングしてみるとよいでしょう。3歳未満の子どもでは喉につまらせる可能性があるため、使わないようにしましょう。
子どもが薬を誤って飲んでしまう事故が起こっています。
乳幼児期には、飲むことを想定されていない塗り薬などまで飲んでしまうことがあります。1歳~2歳を過ぎると大人のマネをしたがる時期でもあり、高い場所や冷蔵庫に保管してある大人用の薬を飲んでしまうことがあります。2歳を過ぎると、甘いシロップ剤やチュアブル錠をお菓子と間違えて多く飲んでしまうことがあります。
こうした誤飲事故が起こらないように、子どもの年齢に合わせて、手の届くところに薬を置かない、薬はカギのかかる棚などに保管するなど十分に気をつけましょう。きょうだいや友達など子ども同士で遊んでいるうちに、いつもは登らないような高い場所にある薬を飲んでしまうこともありますので、踏み台なども片づけておくようにしましょう。
もし子どもの誤飲に気づいたら、すぐに「こども医療電話相談(#8000)」「中毒110番(下記)」などに連絡し、状況を伝えて対処しましょう。
年齢と注意事項の目安はこちらの表も参考にしてください。
本文監修:国立成育医療研究センター 薬剤部 薬剤部長 山谷明正 先生