- 乾癬(かんせん)とは、皮膚の炎症をともなって角層が厚く硬くなる病気です。
- 赤い皮疹の上に白く硬く盛り上がった皮膚は、過剰に増殖した皮膚の細胞で、最終的には鱗屑(りんせつ)と呼ばれる銀白色のうろこ状のかさぶたになってポロポロとはがれ落ちます。
- 症状の現れる場所は人それぞれで異なり、頭皮や髪の生え際、肘や膝など、比較的外からの刺激を受けやすいところに出やすい傾向があります。
- 患者の多くはかゆみの自覚症状があります。
- 比較的慢性に経過する疾患で、軽快と悪化を繰り返します。
- 感染症ではないため、人から人へうつることはありません。
- 乳幼児から高齢者まで、発症する年代は幅広く、日本での男女比は約2対1で男性の方が多くなっていますが、世界では性差がありません。
- アトピー性皮膚炎も皮膚の炎症や赤みを帯びる点では共通していますが、乾癬は赤く盛り上がって鱗屑ができるのに対して、アトピーは肌荒れの延長のような見た目という点が異なります。
乾癬とは?
種類は?
- 乾癬は5種類に分類され、それぞれに症状の現れ方が異なります。
- 1尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
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「尋常」とは普通という意味で、乾癬患者全体ののおよそ70~80%を占める代表的な乾癬です。
症状は、皮膚が赤く盛り上がり、銀白色のフケのようなものがポロポロと落ちていくとい特徴があります。
頭皮や髪の生え際、肘や膝など外部からの刺激を受けやすい部位に発症しやすいです。
症状が出ていない皮膚に引っ掻くなどの刺激を与えると、その刺激をきっかけにそこに発疹が現れることがあります。
これをケブネル現象といい、衣服や眼鏡などの刺激でも起こることがあります。
- 2乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
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関節症性乾癬(かんせつしょうせいかんせん)とも呼ばれる乾癬があります。
乾癬が原因で、手足や背骨などの関節部分に痛みや腫れ、こわばりなどの炎症が起こった状態を指します。
乾癬患者全体のおよそ10%が合併するといわれています。
乾癬性関節炎の症状は、大抵乾癬の皮膚症状が出ると同時もしくは後に現れます。
関節の症状は治療が遅れると重症化しやすく、関節が変形して戻らなくなることがあります。
日常生活にも支障をきたすので、早期発見と一刻も早い治療が重要とされています。
- 3滴状乾癬(てきじょうかんせん)
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滴状乾癬は、小さく丸い水滴のような発疹が全身に現れるのが特徴です。
発症は子供や若い人に多く、乾癬患者全体のおよそ4%を占めています。
扁桃腺炎などの風邪への感染や薬剤の影響がきっかけとなって発症することが多くみられます。
引き金となった感染症の治癒とともに症状は治まりますが、一部は再発を繰り返して尋常性乾癬に移行する場合もあります。
- 4乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
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尋常性乾癬が全身に広がり、身体全体の90%以上の皮膚が赤みを帯びて細かい鱗屑が剥がれ落ちる状態を乾癬性紅皮症といいます。
皮膚炎や感染症、薬剤などをきっかけに発症し、発熱や悪寒、倦怠感などをともないます。
非常に稀な病気で、乾癬の治療が不十分だった場合や、科学的根拠のない治療を行った場合、または治療を行わなかった場合に発症することがあります。
- 5膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
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発熱や皮膚の発赤に伴って、膿がみられる発疹が現れる状態を膿疱性乾癬といいます。
中でも急な発熱とともに全身に症状が現れる疾患を汎発性膿疱性乾癬(はんぱつせいのうほうせいかんせん)といい、厚生労働省の希少難治性疾患(指定難病)に指定されています。
重症疾患のため、ほとんどの患者は入院治療が必要です。
膿疱はすぐに潰れて一部はびらんになります。
原因は?
- 乾癬は、皮膚が硬く分厚くなったのちに、うろこのようなかさぶたになり、次第に剥がれ落ちます。
- これは、免疫系が何らかの原因により異常をきたし、正常時のおよそ10倍の速さで皮膚の細胞が増殖し、ターンオーバーを繰り返すことにより起こります。
- 根本的な原因については、まだはっきりと分かっていませんが、遺伝的要因と環境要因が重なり発症すると考えられています。
- 生まれつき乾癬を発症しやすい体質を持っている人が、外部からの刺激や日頃の生活習慣などから影響を受けると、発症することがあります。
- 環境要因には、肥満や妊娠・出産、ストレスや睡眠不足など身体の中で起きる内的要因や、外傷や日焼けなど皮膚への刺激や気候の変化、感染症、薬剤の影響など外的要因があります。
どんな症状?
- 乾癬の代表的な症状は以下の通りです。
乾癬の 主な症状 |
具体的な症状 |
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紅斑 | 皮膚が円形に赤くなる |
肥厚 | 皮膚が分厚く盛り上がる |
鱗屑 | 銀白色のかさぶたが 皮膚の表面を覆う |
落屑 | フケのようにボロボロと 剥がれ落ちる |
- 銀白色のかさぶたを無理にはがすと、点状の出血がみられます。
- 乾癬の中でもっとも代表的な尋常性乾癬において多くはかゆみを伴います。
- かゆみの程度には個人差がありますが、とくに入浴やアルコールなどで身体が温まるとかゆみが起きやすくなります。
- また、症状のない場所でも、圧迫したり擦ったりなどの刺激が加わることで新たに感染の症状が現れます。
- そのため乾癬は、肘や膝などの関節周辺や髪の生え際など、日常的に刺激が加わりやすい部位に発症します。
- ほかにも、爪の変形や関節炎、陰部の皮疹を伴う場合もあります。
治療方法は?
- 乾癬は、専門医による診断と治療が必要です。
- 根治させる根本的な治療法はまだ確立されていませんが、適切な治療によって症状が出ないようにコントロールすることができます。
- 主な治療法は以下の4つです。
外用療法
光線療法
内服療法
生物学的製剤 - これらの治療法は必ずしも単独ではありません。
- 医師は患者の状態やライフスタイルによって、これらを併用して治療を進めます。
- 1外用療法
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塗り薬を使用する、乾癬の基本的な治療法です。
大きく分けてステロイドとビタミンD3の2種類あり、両方の作用が組み合わさった合剤もあります。
ステロイドは皮膚の炎症を抑え、活性型ビタミンD3は皮膚の異常な増殖を抑える効果があります。
- 2光線療法
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治療用の紫外線を患部や全身に照射し、免疫系細胞の過剰な働きを抑制する治療法です。
治療用紫外線を照射する前に、紫外線に反応する特殊な薬剤を内服したり、塗布したりする場合もあります。
十分な効果を得るために、定期的に通院して照射を受ける必要がありますが、皮膚がんのリスクを考慮して照射できる量が決まっています。
- 3内服療法
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飲み薬による治療法です。
乾癬の症状を抑える内服薬に加えて、かゆみ症状が強い場合にはかゆみを抑える抗ヒスタミン薬や、関節痛があれば消炎鎮痛剤を併用して症状を緩和します。
乾癬の症状を抑える薬には、それぞれに利点もありますが、注意すべき副作用もあるので、副作用が出ていないかを定期的にチェックしながら服用します。
- 4生物学的薬剤
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生物学的製剤は、抗体が生体内で生成されるメカニズムを利用して作られた、化学的に合成された薬とは異なる新しい種類の薬です。
注射または点滴によって、炎症や免疫異常に関与する物質に直接作用することができます。
生物学的製剤は、主に外用療法、光線療法や内服療法で十分な効果が得られない患者に対して適用されます。
この治療を開始できるのは、日本皮膚科学会によって生物学的製剤の使用が認められた施設に限られます。
対処・予防法は?
- 乾癬は治療だけでなく、生活習慣を改善することで、治療効果がより現れやすくなったり、乾癬の症状自体が改善することも報告されています。
- 薬だけではなく、乾癬と上手に向き合いながら、症状をコントロールすることが大切です。
- 乾癬はその見た目から感染を心配される人もいますが、感染する病気ではありません。
- 患部に触れたり、温泉やプールに一緒に入っても他の人にうつす心配はありません。
- また、乾癬にかかりやすい体質は遺伝すると考えられていますが、乾癬が家族内で発症する頻度は5%程度であり、心配する必要はありません。