抗がん剤の種類により症状の種類や現れる時期は違う
殺細胞性抗がん剤で起こる皮膚障害の症状が、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬でも現れることがあります。ただし、同じような症状でもお薬の種類によって現れ方が異なることがあります。
分子標的薬によって起こりやすい皮膚障害・症状
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ざ瘡様皮疹
ひどいニキビのような発疹が、顔や胸、背中を中心に全身にできます。頭皮や耳のなかにできることもあります。
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爪囲炎
爪の横の皮膚が爪を巻きこむように盛り上がり、出血や痛みを伴います。
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皮膚乾燥症(乾皮症)
皮膚がカサカサして粉をふいたり、ウロコのようになってかゆみが起こります。ひどくなると、皮膚がひび割れて痛みます。指先の皮膚に亀裂ができることもあります。
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手足症候群
症状は、殺細胞性抗がん剤によるものとは違った現れ方をします。手のひらや足の裏などの紅斑から始まって、圧力がかかる部分の皮膚が硬くなって腫れることもあります。痛みを伴うことが多く、悪化すると水ぶくれになります。症状が急激に起こるという特徴があります。
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爪の変化
肌だけでなく爪にもいろいろな症状が現れることがあります。爪の変色や変形が起きたり、爪が薄くなったり、割れたりします。進行すると、爪がはがれ落ちることもあります。また、爪のまわりに炎症が起こって赤く腫れることもあります。
分子標的薬はタイプにもよりますが、時期によって特有の症状が現れます。
たとえば、分子標的薬のひとつ上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬では、ひとつの目安として治療を開始してから1〜2週間目ごろに「ざ瘡様皮疹」がピークになり、3〜5週間目に「皮膚乾燥症」が、6週間目ごろに「爪囲炎」が起こりやすくなります。
免疫チェックポイント阻害薬によって起こりやすい皮膚障害
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皮疹
免疫チェックポイント阻害薬によって起こる皮膚症状は多様で、皮疹、発疹、皮膚炎、そう痒症、丘疹、乾燥肌などがあります。多くは軽症です。
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白斑(脱色素斑)
皮膚の色素が白く抜ける症状が起こります。これは白斑といって、全身のどこにでもでき、その大きさや形はさまざまです。
免疫チェックポイント阻害薬による皮膚障害が起こりやすいのは、治療を始めてから3〜6週間目で、投与量が増えると現れやすくなります。場合によっては治療を始めて1年以上経過してから現れることもあります。
皮膚はどんな構造になっているの?
皮膚は、最も表面にある「表皮」とその下の「真皮」、そして脂肪などの「皮下組織」から構成されています。
このなかでいちばん新陳代謝が活発なのは、表皮のいちばん下にある「基底層」です。
表皮の細胞は基底層で生まれ、これが皮膚の表面に少しずつ上がっていき角質層になって、アカになって自然にはがれ落ちます。こうして、皮膚は部位にもよりますが、約40〜50日で新しいものに生まれ変わるといわれています。このサイクルは「皮膚のターンオーバー」と呼ばれています。
基底層には、皮膚の色に関連するメラニン色素をつくる細胞も分布しています。
抗がん剤で基底層がダメージを受けると、皮膚の新陳代謝が鈍くなって皮膚トラブルの原因になります。
静岡県立静岡がんセンター作成:抗がん剤治療と皮膚障害第7版,2019;p3