抗がん剤と皮膚障害

なぜ抗がん剤で皮膚障害が起こるの?

いま主に使われている抗がん剤は大きく分けて3種類あります。それぞれ働きが異なり、皮膚障害が起こるメカニズムや症状などにも違いがあります。

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なぜ、抗がん剤で皮膚のトラブルが起こるのでしょうか?
実は、そのメカニズムはまだよくわかっていません。ただ、抗がん剤の作用によって皮膚の新陳代謝が抑えられてしまうことが基本的な要因だと考えられています。そして、次のように抗がん剤のタイプによって皮膚障害の起こる原因はさまざまです。

  1. 1 殺細胞性抗がん
    (細胞障害抗がん)

    最も古くからある抗がん剤です。がんのように細胞分裂の活発な細胞に作用しますが、正常な細胞にも影響を与えるので副作用が出やすいという欠点があります。
    皮膚や爪は細胞分裂が早いため、抗がん剤の影響を受けやすいと考えられています。とくに、ダメージを受けやすいのは皮膚のなかでいちばん新陳代謝の盛んな表皮の基底層というところです(コラム参照)。また、汗や皮脂の分泌も少なくなるので、肌の潤いがなくなって乾燥し、外からの刺激や細菌をブロックするバリア機能も弱くなってしまいます。
    殺細胞性抗がん剤による皮膚障害は、抗がん剤そのものではなく、 お薬に含まれる添加物によるアレルギーが原因になることもあります

  2. 2 分子標的薬

    分子標的薬はその名のとおり、がん細胞だけに現れる特殊な分子を標的にしてピンポイントで攻撃する抗がん剤です。治療効果が高く、殺細胞性抗がん剤に比べて正常な細胞への影響が少ないので、副作用が起こりにくいと考えられています。
    ただ、 ターゲットはがん細胞だけではなく、皮膚細胞のなかにもあるので、抗がん剤の攻撃から逃れられないことがあります。そのため、皮膚の新陳代謝が妨害されたり、汗や皮脂の分泌がおさえられて肌が乾燥するなど、皮膚の機能が十分に働かなくなってダメージを受けることがあります。

  3. 3 免疫治療薬
    免疫チェックポイント阻害薬

    私たちの体に備わった免疫には異物を排除する働きがあり、がん細胞を攻撃します。しかし、がん細胞はその働きにブレーキをかけて攻撃から逃れる仕組みをもっています。免疫チェックポイント阻害薬は、そのブレーキを解除して免疫を再び活発にすることでがん細胞への攻撃力を高めるお薬で、高い治療効果があります。ところが、免疫の力が強くなりすぎるために、自分自身の正常な細胞や組織にまで攻撃を加えてしまうことがあり、特有の副作用が起こることがあります。

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