PRACTICE

実践する

ケアと指導のポイント

がん薬物療法に伴う皮膚障害はさまざまですが、疾患・症状にかかわらず看護師が行うべきケアには共通するポイントがあります。まずは、ケアや患者指導を行う際の看護師のマインドセットと基本的な考え方を押さえておきましょう。

患者さんの苦痛は症状の程度に比例しない

症状が軽いからといって、患者さんが苦痛を感じていないとはかぎりません。大切なのは、医療者側の一方的な認識ではなく、治療の主体である患者さんの気持ちに寄り添い、QOLを高めることです。そこで重要になるのが、患者さんの意思決定を含めた「アドヒアランス」という観点です。痛みや外見の変化などさまざまな苦痛によって患者さんのアドヒアランスは低下します。その低下要因を把握した上でセルフケアの指導を行うことが大切です。

患者さんが気になっていることをキャッチする

セルフケア指導の第一歩は、的確なアセスメントによって患者さんが気になっている点をキャッチすることです。例えば外見に関して、気になる場面や対象、状況について評価します。気になることについて、「どんなときに?」「どんなところで?」「誰といるとき?」「誰に対して?」「どんなところが?」と具体的に尋ね、解決策を患者さんと一緒に考えていきましょう。その際、患者さんの反応にも注意してください。外見について隠れた別の悩みがある可能性も考慮します。

スキンケアは特別なことではない

一般に「治療が始まったらスキンケア」と考えがちです。しかし、スキンケアは特別なことではありません。老若男女問わず、家族みんなにも大切なことです。そして、薬物療法が始まる前からの重要な基本事項となります。
スキンケアには保清、保湿、保護の3つの意味があります。保清について大切なのは、皮膚に炎症があるからと言って怖がらずに、皮膚障害のある部分こそよく洗うように指導することです。また、保湿では、普段からこまめにしっかりと保湿剤を塗る習慣をつけておくようアドバイスし、家族全員で行いましょうなどとすすめるのもよいでしょう。

入浴や洗顔後は早めに十分な保湿剤を塗る

入浴や洗顔後は肌にうるおいが残っているうちに保湿することが大切です。目安としては15分以内程度に保湿剤を塗るのが望ましいでしょう。
保湿剤は十分な量を使用することが重要です。肌につけたティッシュペーパーが落ちないくらいの量を塗るというのもひとつの目安です。

普段から「関心を持っています」と患者さんに示す

外来での患者指導については、患者さんに対して普段から「あなたに関心を持っています」と態度で示すことが重要です。患者さんには「いつでもお声をかけてください」と伝えるとともに、看護師の側からもこまめに声をかけるよう心がけましょう。
チーム医療として、医師、看護師や薬剤師だけでなく、クラークや受付の方などの医療スタッフを巻き込んでいくことも大切です。外来で指導する際は、プライバシーが守られる環境を用意し、患者さんが十分に話せるように配慮します。

治療のゴールを示すことでアドヒアランスが高まる

抗がん剤治療による皮膚障害は部位も症状もさまざまですが、分子標的薬では「皮疹の種類」「頻度」「起こる時期」「起こる順序」などがある程度決まっています。そのことを患者さんに伝え、皮膚障害とその治療がどのくらい続くのかといった目安を伝えることも大切です。個人差はもちろんあることを説明したうえで、ある程度のゴールを示すことでアドヒアランスも高まります。
また、分子標的薬による皮膚障害は抗腫瘍効果の表れであることも説明しておきましょう。

観察のポイント
  • 患者さんとともに学ぶ姿勢で臨む
  • 患者さんの言葉にしっかり耳を傾ける
  • 重要なのは指導することではなく、患者さんに身につけてもらうこと
  • セルフケアを一緒にやってみるのが効果的
  • 指導後は定着度を確認する