具体的な対処方法 ざ瘡様皮疹
アセスメントの注意点
ざ瘡様皮疹の好発部位は、顔面、頭部、頸部、前胸部、背中、四肢などです。毛穴に一致した紅色丘疹や膿疱が最初に顔に出る傾向があります。顔面では特に鼻や口の周り、おでこ、あご、脂漏部位である頭部、髪の生え際、耳の後ろなども注意して観察しましょう。顔面以外はチェックしにくいので、好発部位に皮疹ができていないかを患者さんから聞き取ることも重要です。
アセスメントのポイント
- 顔面など好発部位に皮疹ができていないか観察する
- 髪で額が見えない場合は髪の毛を上げてもらって確認する
- 頭部の皮疹は患者さん自身も気づきにくいので注意してチェックする
- 「ニキビができていませんか?」と尋ねると患者さんは理解しやすい
- 「前胸部にブツブツはできていませんか?」と具体的な好発部位を挙げて尋ねる
- 皮疹があると患者さんは外見を気にするので、長袖、帽子、マスクなど肌を隠す服装をしている場合は要注意
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皮疹の数、大きさ、盛り上がり、広がりなどを把握して重症度を評価する(表)
表 ざ瘡様皮疹の重症度評価
注釈:この、皮膚障害の重症度評価(分類)は、有害事象の評価であるCTCAE v5.0に準じているが、患者さんの自覚症状・日常生活への影響を重視して作成した。
軽症:軽い皮膚症状がみられるが、不快な自覚症状はなく、日常生活に差し支えない
中等症:皮膚症状が明らかにみられ、不快な自覚症状を時に感じ、日常生活の作業に差し支える
重症:皮膚症状が強く、不快な自覚症状を常に感じ、日常生活の作業が著しく制限される軽症 顔面を中心に全体で20個前後の丘疹、膿疱を認める。疼痛、そう痒はない。日常は気にならない 中等症 顔面、躯幹に全体で50個前後の丘疹、膿疱を認める。疼痛、そう痒を時に感じる。症状について他人から指摘される 重症 顔面、躯幹、四肢に全体で100個前後の丘疹、膿疱を認める。疼痛、そう痒を常に感じる。他人との面会が億劫である 著作権:皮膚科・腫瘍内科有志コンセンサス会議(無断複製禁止)
山本有紀, 他 : Prog. Med. 2020 ; 40(12):1315-1329より作表
- 痛みやかゆみなどの有無と、それによって生活上困っていることはないか聞き取る
重症化予防のためのセルフケア指導
保清と保湿のスキンケアを継続することが予防とケアの基本です。治療開始前から患者さんが習慣にできるようなスキンケアの方法やケア用品を提案しましょう。部位によって保湿剤の剤形などを使い分けることも、アドヒアランスを高めるために有効です。
保清
- 洗浄剤は泡タイプを使うか、石けんをよく泡立てて使う(図1)
患者指導のポイント
- 洗浄剤は、固形石けんや液体のボディソープなどをよく泡立てて使用するのがよい
液体のボディーソープは、使いすぎないように注意する(肌に直接つけず、2~3プッシュして泡立てて使う) - 体や顔を洗うときは、ナイロンタオルなどは使用せずに、手のひらを使って泡でなでるような気持ちで洗う
- 洗浄剤は皮膚に残らないように十分に洗い流す
- 頭部に皮疹がある場合、洗髪はブラシを使ったり爪を立てたりせずに、指の腹を使ってやさしく洗う
- 頭部に痂皮がある場合、気になって取ってしまいたくなりがちだが、皮膚を傷つけてしまうので無理に取ろうとしない
- 入浴・シャワー浴は38~40℃のぬるめの温度のお湯で
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水分をふき取るときは、こすらず、やわらかいタオルでそっと押さえるようにして水分を吸収させる(図2)
保湿
- 保湿剤は、一日に数回外用する(塗るタイミングとして、特に入浴後には必ず外用する)
- 顔に皮疹がある場合は保湿剤の油分が強すぎると刺激になるので、医師に勧められたものを使う
- 保湿剤は、ポンポンと点在して置き、やさしく伸ばす
- 「保湿剤がベタベタするから」と患者さんが嫌がる場合、治療効果は多少落ちても朝・昼はクリーム基剤を選び、夜だけ軟膏製剤を使用するなどの工夫をする
- 頭部に皮疹がある場合は、ローション基剤を使う(ローション基剤は指先にたらして頭髪を分けて塗りこむようにする)
- 尿素配合の保湿剤はしみることがあるので、医師の指示に基づき、角化した皮膚の部分にのみ使用する
保護
- 皮疹を触ると悪化するので、気になってもいじらないように指導する
- 額に皮疹があると外見を気にして前髪を下ろす患者さんも多いが、刺激を防ぐためになるべく髪の毛が顔にかからないようにする(家にいるときはヘアバンドやバンダナなどで髪を上げておく)
- 衣類はタグや縫い目が刺激にならないように気をつける(タグは取る、裏返しに着用する、縫い目のない製品を利用するなど)
- 肌に触れる肌着などは皮膚がすれないようサイズに余裕のある綿素材のものを選ぶ
- 外出時は帽子をかぶって紫外線を防ぐ
サポーティブケア
ある程度進行した場合はステロイド外用薬が使われます。ステロイドの吸収は部位によって異なり、特に顔や外陰部では吸収率が高くなります(図3)ある程度進行した場合はステロイド外用薬が使われます。ステロイドの吸収は部位によって異なり、特に顔や外陰部では吸収率が高くなります(図3)。ステロイド外用薬は症状の程度や塗布する部位などによって適切な強さのランクの薬剤が処方されます(図4)。副作用予防のため、例えば体用に処方された薬剤を顔に使うといったことは避けるよう指導しましょう。
患者指導のポイント
- ステロイド外用薬を必要以上に恐れる患者さんもいるので、治療のために必要な薬であり、医師の指示に基づいて正しく使えば副作用のリスクは少ないことを丁寧に説明する
液体のボディーソープは、使いすぎないように注意する(肌に直接つけず、2~3プッシュして泡立てて使う) -
ステロイド外用薬の使用量の目安として1フィンガーチップユニット(FTU)を指導する(図5)。
- ステロイド外用薬は、一般に塗る量の少ない患者さんが多いので、看護師が実際に外用して見せることが大切
- 皮疹にあるところにのせるようにしてから塗り伸ばす。強くすりこむ必要はない
- 部位や症状によっては、ステロイド外用薬を綿棒につけて塗るよう指導する
- ステロイド外用薬と保湿剤を塗る順番が効果・副作用に影響するとのエビデンスはないので、主治医の指示に従うようにする
- 分子標的薬に伴うざ瘡様皮疹の予防・治療にミノサイクリン内服も行われるが、肝障害やめまいなどの副作用に注意する
- ほてりやかゆみがある場合は冷罨法(冷湿布)も有効。ただし、保冷剤が直接肌に触れないようにタオルやハンカチで巻いて当てる
アピアランスケア
ざ瘡様皮疹は重篤化して治療が中断されることは少ないのですが、外見の変化に伴う苦痛や負担が大きいので、患者さんの思いを聞き取ってアプローチすることが特に重要になります。特に、顔に皮疹があると、人目を気にして外出を控えたり、自宅に引きこもってしまいがちになるので精神的なケアも必要になる場合もあります。
患者指導のポイント
- エビデンスは確立されていないが、患者さんの状態によっては、ざ瘡様皮疹をカモフラージュするために、メイクアップをすることを勧めるのも一考である
- メイクに用いるファンデーションやコンシーラーなどの製品種類の選択については、尋常性ざ瘡に準じてもよい
- スキンケア製品が使用できる皮膚の状態であればファンデーションも使用できる
- 症状が強い場合でも、外見の変化に伴う苦痛が改善されてアドヒアランスが高まる可能性があれば、主治医に相談した上でメイクアップすることを考慮する
- メイクアップをする際には、ファンデーションを清潔な指もしくはスポンジに適量とり、やさしく軽く肌に置くようにして塗る
- メイクアップする際は十分に保湿をする
- メイクはクレンジング剤でしっかり落とし、肌に化粧料が残らないようにする