その他の皮膚障害
頻度は低いものの、注意を要する皮膚障害もあり、皮膚科へのコンサルテーションが必要になることもあります。
薬疹
一部の分子標的薬では、アレルギー性薬疹が出現することもあります。重度の薬疹が生じた場合は、皮膚を生検して皮膚障害の程度を評価する必要があります。重症度によっては減量・休薬となる場合もあります。
軽症であれば薬剤を中止すると軽快しますが、再開するとまた現れることが少なくありません。薬疹で気をつけなければならないのは、症状を繰り返しているうちに重症化していくことです。
とくに、薬疹の範囲が広い場合、唇がむけたり目が充血するなど粘膜疹の症状が出た場合は重症度が高く、皮膚科へのコンサルテーションが必要です。
また、マルチキナーゼ阻害薬による治療中には、頻度は低いものの多形紅斑型薬疹が現れることがあります。しかし、まれに最重症のスティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症を発症したという報告もあり、注意が必要です。
EGFR阻害薬による紫斑性病変
上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬による皮膚障害のひとつとして、血管障害を起こすことがあります。
血管内皮細胞は真皮にあり、EGFRを発現しています。したがって、EGFR阻害薬は真皮にも作用することがわかります。
症状としては、下腿部などにIgA血管炎(皮膚の毛細血管に起こる血管炎)に似た皮疹を生じ、皮膚血管炎が生じた部位は紫斑になります(いわゆる内出血の状態)。ざ瘡様皮疹に見えることがあるので注意が必要です。
【写真15】
写真15 紫斑性病変
眉毛・まつ毛の伸長
毛包周囲にEGFR阻害薬が作用すると、正常な毛髪の発育を阻害します。
毛の成長には周期があり、成長・休止・退行を繰り返していますが、休止期の毛に影響があると、毛が長くなりやすくなります。
頻度は少ないものの、EGFR阻害薬により眉毛やまつ毛の伸長が認められることがあります。
【写真16】
写真16 眉毛、まつ毛の伸長
頭髪以上に眉毛、まつ毛の異常は容貌を変化させるため、患者さんのQOLに大きく影響を与えます。
分子標的薬が原因である皮膚障害は、その薬剤の効果と皮膚障害の程度が正の相関を示し、副作用というよりも薬剤の主反応の結果として起こると考えられます。しかし、皮膚障害が重度になった場合、やむを得ず薬剤を中断・中止しなければならないケースもあります。
重要なのは、皮膚症状をうまくコントロールしながら、治療を継続することです。そのために、看護師さんをはじめとする医療チームが適切に対応していくことが大切になります。