手足症候群
原因
がん薬物療法によって皮膚の細胞障害が起こって生じる副作用のひとつです。手掌、足底の発赤、皮膚知覚過敏から始まるため、「手掌・足底発赤知覚不全症候群」とも呼ばれます。
殺細胞性抗がん剤でも分子標的薬でも起こりうる皮膚障害ですが、それぞれ症状や現れ方に違いがあります。
マルチキナーゼ阻害薬で起こる手足症候群のメカニズムはまだよくわかっていませんが、薬剤による表皮角化細胞の変性、汗腺の障害、汗腺からの薬剤分泌などが原因だと考えられています。
発現時期
薬剤により発現時期には違いがあります。多くのマルチキナーゼ阻害薬は、投与1〜2週間目が発現のピークです。徐々に頻度は減っていきますが、投与から2か月程度は好発するので注意が必要です。
マルチキナーゼ阻害薬による手足症候群のほうが皮膚症状は急激に起こってくる傾向があります。殺細胞性抗がん剤によるものが「慢性」、マルチキナーゼ阻害薬によるものは「急性」と考えればわかりやすいでしょう。
外見的特徴と自覚症状
殺細胞性抗がん剤による副作用の場合はびまん性に、手のひらや足の裏全体に紅斑が現れます。色素沈着が生じることもあります。【写真3、4】
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写真3 手足症候群
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写真4 手足症候群
一方、マルチキナーゼ阻害薬による手足症候群は、手指の腹部や関節、かかとなど荷重部位に限局性に紅斑や水ぶくれが現れます。【写真5、6、7】
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写真5 手足症候群
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写真6 手足症候群
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写真7 手足症候群
マルチキナーゼ阻害薬による手足症候群は痛みが強いことも特徴のひとつです。荷重負荷がかかると痛みは増します。安静時には我慢できないほどではありませんが、皮膚に亀裂が生じると、じんじんするような強い痛みが起こります。
対処法・指導
殺細胞性抗がん剤による手足症候群では効果的な支持療法はありません。
マルチキナーゼ阻害薬による手足症候群の場合は、対症療法としてサリチル酸ワセリンや尿素含有軟膏などが使われます。水ぶくれからの感染にも注意が必要です。
創傷被覆材(ドレッシング材)と尿素含有軟膏を併用することで水ぶくれができるのを抑えられる場合もあります。被覆材は痛みへの効果もあります。
あまりにも痛みが強いために治療中止になるケースもあります。2〜3週間ほど休薬すれば水ぶくれは硬くなり、症状も急速に回復してきますが、再開すると症状は再燃する傾向があります。