胃痛は様々な原因で起こりますが、
原因を振り返り、その対策、
予防をこころがけることが大切です。
監修:平塚 卓 先生
(平塚胃腸病院 院長)
胃のトラブルは自分で症状が見えないので、
分かりにくいですよね。胃痛の原因・対処・
予防について分かりやすく解説します。
胃痛とは?
一般的にみぞおちの辺りに痛みが現れることを「胃痛」と表現します。胃酸の過剰な分泌や細菌などによって胃の粘膜が傷つけられてしまう場合や、胃の機能が低下して不調が起きる場合など、胃痛にも様々な原因があります。
胃痛の痛みは、どんな痛み?
一口に「胃痛」といっても痛みの表現はいくつかあります。医師はこの痛みの表現を、原因となる疾患を類推するための一つの手がかりとしています。
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シクシクする
鈍い痛みが継続します。
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キリキリする
鋭い痛みがはしります。
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ズキズキする
脈打つような痛みが
絶えず続きます。 -
キューっとする
締め付けられるような
痛みを感じます。
日常生活における、胃痛の主な原因は?
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食生活
暴飲暴食をしたり、脂っこい食べ物など消化しづらいものを大量に摂取したりすることで、胃酸の分泌が高まり、胃の粘膜を傷つけるため胃痛が発生します。そのほか、唐辛子のような刺激の強い香辛料やアルコールなども同様に注意が必要です。
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ストレス
ストレスを受けることは自律神経の乱れにつながります。
自律神経は胃や十二指腸の働きをコントロールする役割を持つため、
自律神経が乱れることで胃酸が過剰分泌されてしまうことがあります。
その結果、胃酸が粘膜を傷つけ、痛みを引き起こします。 -
ピロリ菌
ヘリコバクター・ピロリ菌とよばれる細菌に感染すると、胃の粘膜を覆っている粘液の中にピロリ菌が住みこみ、粘膜を傷つけ胃痛を起こします。本来胃の中は強い酸性のため細菌は生息できないのですが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を産生して胃液中の尿素からアンモニアをつくりだし、自分の周囲をアルカリ性に変化させて生育します。ピロリ菌が胃の粘膜を傷つけるメカニズムはいくつかの説がありますが、ひとつはピロリ菌がつくりだす様々な分解酵素が原因といわれています。
胃痛を伴う病気は、様々
胃痛を引き起こす病気とその症状について、紹介します。
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急性胃炎
突然胃がキリキリと痛みはじめます。胃痛のほか、胃の膨満感(重苦しさ)や胸やけ、吐き気を伴うこともあります。原因としては暴飲暴食やストレス、細菌やウイルスの感染などが挙げられます。
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慢性胃炎
長期間にわたり胃の粘膜が傷ついたり修復したりを繰り返すことで胃の粘膜が萎縮し、修復が追いつかなくなります。主にピロリ菌の感染が原因ですが、慢性的な食生活の乱れやストレスから起こることもあります。慢性胃炎は胃痛、吐き気、胃の膨満感やもたれ、胸やけ、むかつきなどの症状がみられます。
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胃食道逆流症(GERD)、逆流性食道炎
酸性の胃の内容物が食道に逆流し胸やけなどを起こします。粘膜が傷ついている、びらん※を伴う胃食道逆流症を逆流性食道炎といい、粘膜の傷がみられない場合には非びらん性胃食道逆流症といいます。どちらも胃痛・胸やけのほか、のどや口に酸っぱさや苦さを感じることがあります。原因としては食後すぐに寝転んでしまう、お腹に圧力がかかりやすい(肥満、妊娠、姿勢が悪い)、胃の内圧が上がりやすい(早食い、食べ過ぎ、脂っこいものの摂りすぎ)などが挙げられます。
※びらん … 粘膜層の組織の欠損 -
胃・十二指腸潰瘍胃・十二指腸潰瘍
胃酸は胃そのものを溶かしてしまうほど強力です。しかし、胃の粘膜は胃酸を分泌すると同時に粘液を分泌するなどして自身を守っています。普段は胃の粘膜を攻撃する因子と守る因子のバランスが保たれていますが、何らかの原因でこのバランスが崩れることで、胃酸過多となったり、粘液の分泌が減ったりしてしまいます。それにより胃酸にさらされた胃や十二指腸の一部が深く欠損します。
欠損する位置により胃潰瘍と十二指腸潰瘍に分類されますが、主な症状は共通しており、胃痛や腹部膨満感、胃のむかつきなどがあらわれます。ただし胃潰瘍では食後の胃痛が、十二指腸潰瘍では空腹時の胃痛が多いといわれています。
主な原因はピロリ菌感染ですが、頭痛・腰痛などの鎮痛剤が原因となることもあります。
胃痛が起きたら?
実際に胃痛が起きてしまったとき、どのように対処するとよいか、みていきましょう。
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食事量を減らす
暴飲暴食やストレスにより急性胃炎を発症した場合には、まずは食事量を減らして消化のよいものを食べたり、時には絶食をすることで胃への負担を減らすことが必要です。具体的には、できるだけ食物繊維や脂肪分が少ない食材を柔らかく調理したもの、例えばお粥やうどん・豆腐・白身魚の煮つけなどが望ましいでしょう。また、香辛料の使用や味付けの濃さなどにも注意しましょう。
夏場には脱水を起こさないよう水分補給が重要ですが、冷たい飲み物も胃への負担となるので、常温もしくは温かい飲み物にするのが理想的です。 -
市販の薬を使用する
市販の薬を使用することも効果的です。市販薬の中には、胃酸分泌抑制薬として代表的なH2ブロッカーとよばれる種類があり、ファモチジンやロキサチジン酢酸エステル塩酸塩、ニザチジンといった薬があります。例えばファモチジンは過剰な胃酸分泌を抑えるとともに、胃粘膜の血流を増加させ、胃粘膜の修復にも作用するなど、それぞれの薬に少しずつ違った特徴があります。薬剤師に相談するなどして、薬を正しく理解し自分に合った薬を選ぶようにしましょう。
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医療機関を受診する
子どもや高齢者の場合は、年齢によっては使用できない市販薬もあり、胃痛の原因により症状が悪化することもあるため、原因が分からない場合やすぐに良くならない場合は内科や小児科などの医療機関を受診しましょう。また、妊娠中や授乳中の場合には、医師のアドバイスなしに薬の服用はできませんので、かかりつけの産婦人科や内科に相談してください。
※薬には使用可能な年齢や条件が明記されています。使用する前に使用上の注意を確認しましょう。こんな時にも医療機関を受診しましょう
- ・嘔吐や発熱を伴う場合
- ・我慢ができないほどの激痛がある場合
- ・市販薬を3日ほど服用しても、症状の改善が見られない場合
- ・その他、異変を感じた場合
胃痛を起こさないために
なによりも胃痛が起きないことが一番。胃痛の原因が分かれば胃痛の発生を予防できることもあります。日ごろから胃痛が起きやすい方は、医療機関を受診したり自分の生活を振り返ってみるなどして、胃痛の原因を理解したうえで予防に取り組んでみましょう。
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規則正しい生活
食事を抜くことが多いと、空腹(=胃が空っぽ)の時間が長くなり、胃が荒れる原因となります。寝る直前の食事も胃に負担をかけるので、可能な限り1日3食、同じ時間帯に食べることが望ましいといえます。
また、睡眠不足も体にストレスを与え自律神経を乱れさせる原因となります。時にはゆっくりと休むことも重要です。 -
暴飲暴食を避ける
消化の悪い脂っこいものをたくさん食べたり、度数の強いアルコールを大量に飲んだりすることは胃への大きな負担となります。冬には忘年会や新年会が続き、胃痛を起こす方が多いようです。普段から、満腹まで食べずに腹八分目を心がけましょう。また夏場には、キンキンに冷えた飲み物やアイスなどを口にする機会が増えますが、冷たいものの摂りすぎも胃の働きを悪くする原因となるので、注意が必要です。
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たばこを控える
たばこは血行を悪くすることで知られていますが、これは胃でも同様です。胃の毛細血管への血流量が減ると胃粘膜が弱くなったり、胃の機能が低下したりして胃痛につながります。喫煙が習慣となっていると慢性的にその状態となるので、潰瘍ができやすく再発もしやすくなります。
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定期的なストレス発散
ストレスが重なると自律神経が乱れ、胃酸の過剰分泌につながります。自分なりのストレス発散方法を見つけ、ストレスをためないように心がけましょう。リラックス効果の高いアロマを生活に取り入れる、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かる、深呼吸をするなどといった方法も自律神経を整えるのに効果的です。
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ピロリ菌の除去
子どもや高齢者の場合は、年齢によっては使用できない市販薬もあり、胃痛の原因によっては症状の悪化が早いこともあるため、原因が分からない場合やすぐに良くならない場合は内科や小児科などの医療機関を受診しましょう。また、妊娠中や授乳中の場合には、医師のアドバイスなしに薬の服用はできませんので、かかりつけの産婦人科や内科に相談してください。
※保険診療でピロリ菌の検査・除菌治療を行うには、まず内視鏡検査を行う必要があります。
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