専門家が語る、働く女性の口臭問題とは? 働き女子をとりまく口臭の原因は、 実に多様。
予防医療コンサルタント細川モモさんと、口臭専門医である東京歯科大学の亀山敦史准教授に
働く女性の口臭問題についてそれぞれ聞いた。
もともと私は口臭は加齢と口腔ケアが主なリスク因子であると理解していました。ところが、働く女性の健康に寄り添い続けてきた結果、加齢以上に、個人の生活習慣や勤務状態が健康状態に強い影響力をもっており、働く女性は口臭や歯周病などの様々なリスクを抱えていることがわかりました。
慢性的なストレスを抱えているとき、身体が弱っているとき、寝不足が続いているとき、リラクゼーションだけを考えるのではなく、もしかしたら口臭が出ている?と疑ってみるのも大切なインナーケアといえます。無自覚なことで人からの印象を悪くさせてしまうほど残念なことはありません。女性が真に輝く社会を叶えるためには、女性の社会進出による健康面へのリスク増大を受け止め、インナーケアをあらゆる角度から支えていくことが必要だと考えています。
細川さんのサジェッションは非常に鋭いものだと思います。挙げられた7つの健康問題について、口臭専門医の立場から下記のように検証できました。
朝食の欠食
世間的には食事をする前よりも食事をした後に口臭がきつくなると思われていますが、食事は唾液を多く分泌させるので口臭は抑えられます。朝食を欠食させることは、唾液を分泌させる機会を減らしてしまうことになり、口臭を発生させやすくすると言えます。
ストレス
ストレスの積み重なりは自律神経のバランスを悪化させて唾液の分泌低下を招きます。したがって必然的に唾液の量は減少していきます。唾液の減少は唾液に含まれる殺菌効果を弱くし、洗浄効果も低下させるため口臭リスクが高まります。
喫煙と飲酒
喫煙と飲酒は口の中の粘膜にダメージを与え、タンパク質を分解させやすくして硫化水素とメチルメルカプタンを発生させます。また飲酒は口の中を乾燥させてしまうため菌の濃度が濃縮されて口臭リスクが高まると言えます。
腸内環境
腸内環境の悪化による、肝機能の低下が口臭に影響を与えます。特に疲労を感じたときに臭いを感じやすくなるでしょう。
歯周病
歯周病の菌が作るタンパク質の分解酵素が口の中の粘膜を破壊し、口臭物質を作り出します。歯周炎がある人は、硫化水素に比べてメチルメルカプタンの比率が高くなります。これは歯周病菌がメチルメルカプタンを作り出すだけでなく、歯周ポケットの中にメチルメルカプタンの元となるメチオニンが多く含まれるからです。その結果として、歯周病の人は口臭が強くなります。
生理中
ホルモンバランスと口臭の関係は強いといえます。人によって口臭を発生させる時期は異なりますが、排卵日、月経前、月経中の3回の周期に多くの口臭を発生させる人が多いです。
睡眠不足
睡眠不足になると起きていても体が寝ている状態になり、唾液が分泌されなくなります。口腔内の洗浄効果と殺菌効果を持つ細菌が減少して口臭を発生させるのです。
女性の方が口臭リスクが高いといえますが、気になったらひとりで悩まずに身近な人や、口臭外来に相談しましょう。
予防医療コンサルタント
細川 モモ
(ほそかわ・もも)
10代で両親が末期がん患者になったことから予防医療に関心をもち、以後7年間、サンフランシスコやニューヨーク、ロンドンに通い続け、大学や学会に定期的に参加。2009年春に、日本で“知るべき知識と得るべき機会を普及することで大衆の健康を守る” Public Health を普及させるため、医療・健康・食の専門家によるプロフェッショナルチーム「Luvtelli(ラブテリ) Tokyo&NewYork」を日本とニューヨークで発足、論文発表を続けている。
東京歯科大学
千葉歯科医療センター准教授
亀山 敦史
(かめやま・あつし)
日本口臭学会、日本歯科東洋医学会が認定する口臭専門医、歯科東洋医学専門医。本来の専門分野は歯のホワイトニングやコンポジットレジンを用いた審美歯科治療であるが、2001年に東京歯科大学千葉歯科医療センターの口臭外来開設とともに外来を担当、口臭に悩む患者と向き合い、従来の歯周病治療による口臭へのアプローチに加えて漢方薬を併用した口臭治療を実践し、効果をあげている。