- 取材・文・編集:岩崎 幸
- イラスト:こやまもえ
- 監修:mako(管理栄養士/KiSTA認定偏食改善アドバイザー)
更新日:2024年07月12日
暑い日が続くと、食欲が出ずに食事をおろそかにしたり、冷たいものばかりなどを食べたり、食生活が乱れがち。その結果、体調を崩しやすくなったりと悪循環に……。そんな夏こそ改めて自分の食生活を見直してみましょう! 今回は管理栄養士のmakoさんに、改めて知っておきたい偏った食事の弊害や意識して摂りたい食材、そして夏におすすめのレシピをお伺いしました。
からだに負担が大きい「低糖質」な食事
――makoさんから見て、最近よく見られる“注意した方がいいケース”などありますか?
mako:ダイエットなどのために糖質を抜いている方がいますが、栄養士からするとおすすめはしません。糖質の食べる量を減らすことで一時的に体重は落ちますが、糖質の代謝が低下しうまくエネルギーがつくれなくなってしまいます。その結果、倦怠感や頭痛、めまいなど体調を崩しやすくなるのです。
また、食べ物がどれだけの時間胃に残っているかを示す「胃内滞留時間」があるのですが、一番胃に長く残るのが脂質で、次がタンパク質、そして吸収が一番いいのが炭水化物なんです。そのため、タンパク質や脂質の割合が増えることで、胃もたれしやすくなったり、悪さをする腸内細菌の増加に繋がることもあるんです。
――かつてブームとなった「低糖質ダイエット」ですが、からだにとっては負担が大きいんですね。
mako:低糖質にすることで、体内では血糖値の乱高下が起こりやすくなります。この血糖値の急激な変化がからだにとっては悪影響で、眠気が起こったりやる気が出ないなどの症状が表れてしまいます。また、一時的に体重が落ちたとしても、結局糖質の量を元に戻してしまえば、体重も戻ってしまいます。もし現在低糖質な食事をしていたら、続けた期間と同じかその倍ぐらいかけて、ゆっくりと糖質を増やしていく必要があります。
糖質=お米のイメージが強いかもしれませんが、芋類や果物、野菜にも含まれています。これらの食材もカットしてしまうと、ビタミンなど他の栄養素も足りなくなり、免疫力が低下して体調を崩しやすくなることも。糖質を減らすのは簡単ですが、そのくらいかなりからだに影響が出てしまうのです。
やはりからだにとって一番いいのは、定食のような「昔ながらの食事」。ご飯と、野菜などが入ったお味噌汁、納豆や卵焼き、焼き魚などのタンパク質を中心に、野菜や果物を摂るのが理想的です。現代人の食事は脂質にかなり偏っており、チョコレートやケーキなどの菓子類だけでなく、お肉も昔に比べて柔らかくなって食べやすくなった分、脂肪が増えているものも多いんです。まずは脂質を減らして、栄養バランスを整えるために効果的な「まごわやさしい」の7つの食材を意識して摂るようにしてくださいね。「まごわやさしい」というワードを聞いたことがある人も多いと思います。健康的なバランスの良い食事に繋がるので、ぜひ取り入れてください。
食事の間隔は空けすぎに注意!適度な間食も必要
――女性が特に必要な栄養素がいくつかあると思いますが、代表的なものとしてはどのようなものが挙げられるでしょうか。
mako:やはり一番言われるのは「鉄分」です。鉄分は体中に酸素を運ぶ赤血球(ヘモグロビン)の重要な材料の一つですが、とくに毎月生理がくる世代の女性は鉄分不足になりやすいです。補給に一番おすすめな食材は「レバー」ですが、最近ではコンビニでも販売され、手軽に買うことができるようになったのは嬉しいですね。ただ、レバーが苦手でしたら、赤身の肉や緑黄色野菜、大豆製品などを摂り入れたバランスの良い食事をすることで補うこともできます。
また、「食物繊維」もかなり不足している栄養素の一つ。第6の栄養素ともいわれ、整腸効果や血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下などの働きをしてくれます。穀類や野菜、果物、海藻、キノコ、豆類などの植物性食品に含まれるため、さまざまなビタミンも一緒に摂取することができるので、ぜひ意識的に摂るようにしましょう。
▶▶▶女性が摂るべき栄養素についてはこちらの記事も!
春こそ食事の見直しを。予防医療・栄養コンサルタントの細川モモが解説する、女性に摂ってほしい栄養素3選
――そもそも、現代女性は摂取カロリー自体が足りてないということを耳にしたことがあるのですが……。
mako:それは人によるかもしれませんね。ハイカロリーなお菓子などを食べていたらカロリーは足りると思いますが、からだにとっての栄養は不足します。間食をするのであれば、ドライフルーツやふかし芋など、ビタミンやミネラルが入っている栄養にもなるようなものを選ぶとよいでしょう。ただ、お腹が空いている状態で一気に食べてしまうと血糖値がグッと上がってしまうので、少しずつ20分ぐらいかけて、ゆっくり食べてあげるとよいでしょう。
――間食=太りやすくなると思いがちですが、適度な間食も必要なのでしょうか。
mako:全体的な量が増えてしまうと当然太ってしまうので、そこだけは注意してもらわないといけないですが、先ほどもお話したようにからだにとって血糖値の乱高下は負担がかかることなので、食事の間隔を空けすぎないのは大切です。食事を3食ではなく、1回あたりの食事量を見直して1日5食に分けて食べることもおすすめです。ただ、あまりにもちょこちょこ食べてしまうと虫歯のリスクもあるので、「何時間空くか」を考えてもらうのが分かりやすいと思います。例えば、“朝9時に食べて、昼を12時に食べる”のであれば、3時間しか空かないので間食する必要はないですが、もしこれが“朝6時に食べて、昼を12時に食べる”であったら、間に少し食べてあげる方が血糖値の上昇も穏やかになるのでいいと思います。
コンビニやスーパーなどで一品足すなら?
――忙しいと自炊できず、コンビニやスーパーの総菜や宅配、外食などで済ませる方も多いと思います。例えば「朝:パン、昼:麺類や丼などの一品料理、夜:コンビニやスーパーの弁当」といった内容ですと、どんな栄養素が不足しているでしょうか?
mako:一見して糖質と脂質に偏っていて、その他の栄養素はあまり摂れていない感じですね……。特にビタミンやミネラルが不足しているため、疲れやだるさ、貧血などの症状が起こりやすくなります。もしまず変えるとしたら、朝食時にサラダやスープを足して、ビタミンやミネラルが豊富な野菜を摂るようにしたり、パンも菓子パンではなく、食パンにタンパク質を補うチーズを付け加える、などにしてみるといいと思います。
つい昼食に手軽にパパっと食べられる丼やパスタなどを選びがちですが、選び方・頻度には注意! 中華丼やビビンバなどいろんな食材が入っているものでも、ご飯の量が結構多いこともあります。毎回丼やパスタなどの糖質だけのメニューにならないように、意識するようにしてあげてくださいね。
――ちなみに、コンビニやスーパーなどで一品足すときにおすすめのものなど他にありますか?
mako:スーパーで売っている雑穀米のパックご飯を買ってみるのも一つの手ですし、惣菜コーナーでは白あえやごま和えなど野菜類や、脂質少なめのタンパク質のある小鉢などを足してあげるといいと思います。
……と、理想的な食事のお話をしてきましたが、今までお伝えしたことを急に今日明日の食事からできるかというと難しい人も多いと思います。実際、管理栄養士として栄養指導をしていても、「やっぱり無理でした……」と次の面談でおっしゃる方もいます。まずは自分のレベルに合わせて、できるところから始めるのが大切。朝時間がなくて余裕がなかったら、青汁などを足すことでも十分なんです。最近ではそういった栄養補助食品も販売されているので、余裕のない朝や夏バテ時に、栄養補助として上手に活用しながら、少しずつ見直してみてくださいね。
――たしかにいきなり頑張りすぎて、続かなかったら意味がありませんしね。これからのシーズン、夏バテで食欲が出ない……という日も出てくると思いますが、そんな時に気をつけたいことなど教えてください。
食欲がない時には、フルーツやスムージー、おかゆなどの消化にいいものを摂るといいでしょう。どうしても夏は冷たい食べ物や飲み物を摂りがちですが、冷たいものばかり食べていると内臓に負担がかかり、胃腸の働きが低下してしまいます。冷たいものに偏りすぎないように注意してくださいね。
管理栄養士makoさん直伝! 夏にぴったりなおすすめレシピ
(1)カット野菜で作る豆乳サラダうどん
(2)ビタミンアップ月見そば
※2024年7月12日更新(一部内容を修正しました)
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