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親を悩ませる「子どもの偏食」…管理栄養士に聞く、改善のコツ

July 1, 2024

  • 取材・文・編集:岩崎 幸
  • イラスト:こやまもえ
  • 監修:mako(管理栄養士/KiSTA認定偏食改善アドバイザー)

更新日:2024年07月03日

子育てをしているとさまざまな壁にぶつかりますが、特に小学校に入る前のお子さまをお持ちの親が悩むことの一つとしてあるのが「子どもの偏食」。夏バテになりやすい時期になると食事のバランスがいつもより偏りやすく、「うちの子の栄養バランスは大丈夫なのかな?」と悩む方も多いのではないでしょうか。今回は「子どもの偏食」をテーマに、管理栄養士・KiSTA認定偏食改善アドバイザーのmakoさんにお話を伺いました。

子どもの偏食で悩んでいる親のリアルな声

実際、子どもの偏食・好き嫌いで悩んだことのある親はどのくらいいるのでしょうか? makoさんがInstagramで「子どもの偏食・好き嫌いに悩んだことはある?」とアンケートを実施したところ、約半数の方が偏食に悩んだ経験をお持ちのようです※。

※子どもの偏食・好き嫌いについての調査(2024年5月/makoさんInstagramストーリーズアンケート回答者n=533)

具体的には、「緑のもの(特に葉野菜)全般を食べない」「肉・魚・野菜をほぼ食べない」「初見の食べ物、野菜、果物は一切食べない」など、お子さんそれぞれによって食べないものはさまざまですが、「好きだったものを突然食べなくなる」「気分で食べてくれない」ということで悩む方も。

また、実際にどんな工夫をしたか聞いてみると、
・葉野菜を刻んで餃子やハンバーグに投入
・ものすごく小さく切ったり混ぜ込んだり、原型が分からないようにする
・くたくたにしたり、逆にシャキシャキにしてみたりなど、食感を変える
・子どもが好きな味付けに変えてみる
・野菜ケーキにしたり、好きなキャラクターの形にしてみる
など、皆さん日々奮闘しながら試行錯誤しているようです。

子どもの成長のためにしっかりと栄養バランスを……!と、つい焦ってしまう方は多いと思いますが、makoさんによると「偏食改善には即効性がなく、長い期間をかけていく必要がある」とのこと。ここからは、「そもそも子どもの偏食はなぜ起こるのか?」「そのまま成長したらどんな弊害が?」などの疑問から、対処法、さらに夏におすすめのレシピまで、makoさんに解説いただきました。

子どもの偏食には2パターンある

――そもそも子どもの偏食はなぜ起こるのでしょうか。

子どもの偏食は2パターンに分かれることが多く、まず1つ目は離乳食期から偏食が見られるパターン。からだの発達や感覚機能が関係しており、生まれた頃から感覚が他の子よりも過敏な子に多いです。ちょっとドロッとするだけで気持ち悪く感じたり、少し冷たいだけで敏感に感じたり、なかなか飲み込めなくてすぐに吐き出してしまったり。運動や歌、踊ることが苦手な子がいるように、食べること自体が苦手な子もいるんです。

そして2つ目が、離乳食期は食べていたのに、1歳以降くらいからだんだんと食べなくなってくるパターンで、こちらは成長に伴う脳の発達と関係しています。子どもは少しずつ色々な器官が発達していきますが、脳も同じ。まず「これは嫌だ」と瞬時に判断する、扁桃体という部分が先に発達していきます。そしてこの扁桃体のすぐ横に、記憶を司る海馬があるので、「なんか食べた時に思った感じじゃなかった、嫌だ、もう食べない!」などと感じると、それを海馬が記憶してしまうんです。そのため食べられるものが狭まってきたりしてしまうのですが、このパターンは子どもが成長するにつれて改善しやすいとされています。

それは、4歳前後から前頭前野(前頭葉)が発達してくるため。前頭前野は考える・行動する・感情や行動を抑制する・判断するなど、私たち人間が生活する上で必ず必要となることを司る場所です。2〜3歳のうちはここがまだ発達していないため、特に自分の食べたいものだけ食べるという思考になってしまうんです。このコントロールする機能が発達してくると、「ママが頑張って作ってくれたから、一口だけ食べてみようかな」「このジャガイモはポテトと一緒らしいから、じゃあ食べてみよう」など考えられるようになってくるのです。

――なるほど、一言で偏食といってもパターンがあるのですね。では、偏食のまま成長すると、どのような弊害があるのでしょうか。

その子がどんな物を食べて、何を食べないのかによっても変わってきますが、偏食のまま成長してしまうと、生活に支障が出る子もいます。幼稚園や保育園に通っていた頃は気にならなかったけれど、小学校に上がったら疲れやすかったり、朝起きられない、勉強に集中できない、イライラしやすいなどの症状が出てくることも。すべてが栄養不足からの不調とは言えませんが、栄養が不足するとしっかり寝るために必要なメラトニンというホルモンも出にくくなったり、成長ホルモンなども不足してきます。

――ちなみに、何歳までに治すといいなど、大体の目安はありますか?

人それぞれではありますが、ひとつには前述したように前頭前野が育つのが4歳以降といわれているので、小学校入学を目指して、生活習慣や食習慣などを、ある程度整えてあげられるといいと思います。ただし人それぞれですので、子どもがきっかけをつかめそうなタイミングで取り組めばよく、あまり年齢にとらわれ、思いつめないことも大切です。

偏食で一番悩むのは2~3歳頃ですが、あの手この手を使っても効果が出にくい時期。この時期は偏食改善と栄養補給を切り離して考え、上手に栄養補助食品などを使って栄養を補いつつ、偏食改善のアプローチは別で行いましょう。

苦手なものを混ぜ込んでいることを隠さないのが大切!?

――子どもの偏食改善するためにできることについて、まずmakoさんが伝えていることはなんでしょうか。

よく細かくしたりして子どもが嫌いなものを混ぜ込むことをしている人が多いと思いますが、一番大切なことは「混ぜ込んでいることを隠さない」ということです。私は偏食改善を子どもの気質を見て、その子に合ったアプローチ方法をお伝えしているのですが、もちろん中には(隠していたことを)全く気にしない子もいます。そういう子の場合は「実は入っていたんだよ」と伝えると、「そうなんだ! 美味しかったよ!」といった反応が返ってきます。しかし、繊細なタイプの子の場合だと「ママ、僕のこと騙したんだ……」と思ってしまったり、怒りっぽい子や癇癪がある子だと、「そんなの聞いてないよ!」と怒り始めてしまうこともあります。

――苦手なものが入っていることを伝えない方がいいと思いがちですが、違うんですね。

食感や見た目を変えて“感じにくくさせる”ということは大事ですが、やっぱり後々のことを考えると言ってあげたほうがいいと思います。

先ほど“子どもの気質を見て”と言いましたが、例えば、感覚に過敏な繊細タイプの子は「無理に食べさせない」「食べられないことを認めてあげる」「何が入っているか、どんなものかをきちんと伝える」といったことが有効です。ついつい「一口だけでも食べてみたら?」などと言ってしまいがちなのですが、繊細なお子さんには逆効果。むしろその食材に対して嫌悪感を抱いてしまって、それがまた海馬に記憶されてしまうのです。なので、「食べられないんだったら無理に食べなくていいよ」というスタンスでいてあげることがポイントです。それと「何が入っているか伝える」時も、「ほうれん草のごま和えを作ってみたんだけど、ちょっとにおいだけ嗅いでみる? ちょっと触って舐めてみる?」などと、まずにおいなどから触れさせてみるのもいいと思います。子どもにとって食べ物との良い関係を築いてあげましょう。

また、頑固な食べないタイプの子では「子どもの意見を少しだけ汲んであげる(全否定しない、フルーツなどを食べたければ一緒に食卓に少し出してみる)」「スポーツ選手など憧れの人のようになるためには、好き嫌いせずに食べることが大切だと伝える」などが効果的。これはあくまで一例で、子どもの気質や食卓での様子、年齢などでアプローチ方法は変わってきます。

――その子に合ったアプローチ方法をしていくことが大切なんですね。

偏食改善には即効性がなく、長い期間をかけていく必要があります。本人にとってその食べ物への“いい記憶”を積み重ねていくことが大切なので、無理やり食べさせるよりも親自身が美味しく食べているところを見せてあげる方がいいんです。1回その姿を見せたからと言って次出した時に食べるわけではありませんが、それをずっと繰り返していくことで、「ママってあれいつも美味しそうに食べているな。僕は食べないけれど意外と美味しいんだろうな」という思いが芽生え、ちょっと気が向いた時に、一口食べることに繋がったりします。

また、食育の絵本で美味しそうなものを見たり、一緒に料理をしたり、家庭菜園などで野菜を育ててみることなども、すぐには効果が出ないけれど、やり続けることは大切です。そして忘れてはいけないことは、たとえ一緒に作ったからと言って必ずしも食べるわけではないということ。そこで「せっかく作ったのに……」とガッカリしてしまうと、親自身もつらいので、そう知った上でやるのが大事かなと思います。

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