- 編集:健康美塾編集部
- 文:小野貴弘
- イラスト:小迎裕美子
更新日:2023年05月23日
皆さんは、2017年1月に施行された「セルフメディケーション税制」という、市販薬に関する税制をこれまでご存じでしたか?本制度が2022年1月にバージョンアップしました。今回は、この「セルフメディケーション税制」全体の仕組みと、2022年1月に新しく追加されたポイントを、まるっとわかりやすくご紹介します。
思い込み case:1
対象の市販薬を買ったら、後でお金が戻ってくる? 「セルフメディケーション税制」をおさらいしましょう
2017年1月から5年間の特例としてはじまった「セルフメディケーション税制」、より使いやすくなって2022年1月より5年延長されることになりました。まずは、この制度についておさらいしましょう。
2017年1月から医療費控除の特例として施行された「セルフメディケーション税制」は、自己負担をした医療費が、家族の分を合わせて年間「合計10万円」を超えた場合に、確定申告をすることによって所得税や住民税が減額される医療費控除の仕組みに、プラスで生まれた制度です。
具体的には「特定の成分」を含んだ市販薬の年間購入額が、「合計1万2千円」を超えた場合に適用される制度で、1年間(1月~12月)に支払った額を翌年に確定申告すれば控除の対象になるというものです。もっとわかりやすく言うと、市販薬の購入額を含めた「1年間の医療費が10万円」という壁から、より低額でも控除が受けられるということなんです!ここで注意したいのは、所得から控除される上限が8万8千円ということになります。
医療費控除のことはなんとなく知っていたけど、医療費の年間合計金額が10万円に届かないからお金が戻ることなんて気にしていなかった…。家族用の市販薬の購入金額は多い方だけど数万円だし…。そんな、市販薬をよく購入していたけど医療費控除とは無関係だった人は、ぜひ詳しい情報(くすりと健康の情報局サイト内)を読んでみてください。
では、そもそもなぜ「セルフメディケーション税制」が設けられているのでしょうか?まず、セルフメディケーション=自分で自身の健康を管理するということ。アメリカでは医療費が高い、という話を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、それは日本のように国民皆保険という制度がないからです。でも、その分アメリカでは日本よりもセルフメディケーション(自己管理)の意識が高いともされています。
医療費控除の特例として設けられたセルフメディケーション税制は、病院に行くまでもない軽い症状であれば、市販の薬を使って、自分で治療できるようになりましょうという考えに基づきます。年々増大する医療費の削減を目指すためには、病院にいくこととセルフメディケーションで健康を自己管理することを、うまく両立させることが大切なんです。
自分の健康のためにセルフメディケーションをすることで、1万2千円から税金的な恩恵が受けられるかもしれない。ユーザーの立場からすると、市販薬が控除の対象になるなんて、経済的にちょっと嬉しい制度ですよね。
思い込み case:2
市販薬を買った すべての人の税金が減るの?
ズバリ、条件つきです!次の3つの事項すべてに該当する人が対象となります。(1)所得税、住民税を収めている人。(2)健康の維持増進や疾病予防のために、特定健康診査、定期接種やインフルエンザなどの予防接種、定期健康診断、人間ドックなどの健康診査、がん検診のいずれかを受けている人。(3)1年間で、対象となる市販薬を1万2千円を超えて購入している人(扶養家族分を含む)。
(2)は身近なところでいうと、会社で受ける健康診断や、各自治体の健康診査などが該当します。
以上の3つの条件を満たす人がセルフメディケーション税制を利用した確定申告が可能となります。そうなると、果たしてどれぐらい税金が減るのか気になりますよね。ちょっとシミュレーションしてみましょう。
例えば…所得税率20%の申告者が、
セルフメディケーション税制対象製品を年間3万円購入した場合、
- 所得税分:(3万円-1万2,000円)×20%=3,600円 … 還付されます
- 翌年度の住民税(地方税)分:(3万円-1万2,000円)×個人住民税率10%=1,800円 … 翌年度の徴収額から減額されます
- 合わせると:所得税(3,600円)+住民税(1,800円)=5,400円
つまり、5,400円の税金が減ることになります。
詳しくはこちらをチェック(日本一般用医薬品連合会サイト内) してください。
また、会社勤めをしていると、実際に確定申告そのものに触れる機会がなかなかないと思いますので、「確定申告書等作成コーナー」をチェックしてみてください。
あと「セルフメディケーション税制」の確定申告をするにあたって、大事なのは、市販薬を購入した際の「レシート」や「領収書」を必ずキープしておくことです!
対象製品にはレシートの商品名の項目に★マークが付いたり、文字等で該当品である旨の説明が記載されています。それをもとに購入額と控除額の計算をしていきます。レシートを捨てがちの人は、市販薬購入時のレシートだけでも、意識して保管しておくようにしましょうね。
思い込み case:3
対象となる市販薬の見分け方と 2022年に新しくなった税制のポイントって?
セルフメディケーション税制の対象製品はパッケージに「共通識別マーク」が表示されているので、簡単に見分けがつきます。製品の正面や上面などにマークを表示することによって、対象製品が一目で分かるように視覚的な訴求をしています。
2022年に新たに「新ルル点鼻薬」は対象になりましたが、「ルルのどスプレー」は対象外など、同じブランドの中であっても、含まれる成分によって対象のものとそうでないものがあるため、この「共通識別マーク」はそれを知らせるものです。
なお、この「共通識別マーク」の表示に法的義務はないので、マークが表示されていない製品も中にはあるかもしれません。そのような場合には、シールをパッケージに貼ったり、プライスカードやPOPに対象製品である旨が表示されています。
セルフメディケーション税制対象の第一三共ヘルスケア製品を見る(くすりと健康の情報局)
その他対象となる全製品を見る(厚生労働省サイト内)
これまでセルフメディケーション税制についておさらいしてきましたが、最後に2022年1月から変わるポイントもご紹介します。
まず、1つ目は「対象期間の延長」。冒頭にもお伝えしましたが、2022年1月より期間が5年延長されることになりました。この制度を活用いただける期間が長くなったということですね。
続いて、2つ目は「対象製品の拡大」です。セルフメディケーション税制の対象製品は、これまで病院などで使われていた成分をドラッグストア等で購入できるOTC医薬品として製品化したスイッチOTC製品のみでしたが、2022年1月の改正では、スイッチOTC製品に加え、外用鎮痛消炎薬、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、かぜ薬、鼻炎用点鼻薬、鼻炎用内服薬、抗ヒスタミン薬又はその他のアレルギー用薬としての効能又は効果を有すると認められる製品が対象に加わり、対象製品数は従来の2倍近くに増えます。なお、2022年1月から新たに対象となった製品では「共通識別マーク」が未だ表示されていないものが多いので、プライスカードやPOPも見逃さないでください。また、詳細は厚生労働省サイト内 の対象製品ページをご確認ください。
最後3つ目が「申告手続きの簡素化」。確定申告での申請時に必要だった健康診断書類の提出義務が簡略化され、さらに申請しやすくなりました。
2022年1月から対象製品が拡がり、申請のしやすくなった「セルフメディケーション税制」。ぜひこの機会にご利用ください。
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