- 取材・執筆:阿保幸菜
- イラスト:ちちち
- 編集:服部桃子(CINRA, Inc.)
- 監修医師:大井美恵子
更新日:2023年11月28日
冬になると顕著になる肌の乾燥。季節に合わせたよりよい対策をしていきたいものですが、肌の水分量・皮脂量は年齢ごとに低下していくため、年齢に合ったケアも考える必要があります。でも、ついつい昔からのケアをそのまま続けている、なんて人も多いのでは?そこで今回は、女医によるファミリークリニックの院長で皮膚科医の大井美恵子先生に、基本の乾燥対策のお話に加えて、ケア方法のOK・NGをジャッジしていただきました。
知っておきたい、年代ごとの乾燥肌対策
年齢によって肌の乾燥具合が変化する理由とは?
思春期のころは男女問わず男性ホルモンの分泌が活発になり、それが皮脂腺を刺激して皮脂の分泌量が多くなります。10代~20代前半は皮脂が活発に分泌されたり、肌の水分量も多かったりと、ある程度うるおいが保たれているので乾燥しにくいのですが、皮脂分泌が落ち着いてくる20代後半あたりから、乾燥が始まることが多いようです。私のクリニックには幅広い年代の患者さんがいらっしゃいますが、40代になるとしみ、50代になるとハリ、60代ではあらゆる肌変化が気になる……というふうに、年代とともにご相談いただく肌の悩みも変化します。
20代~30代:肌がゆらぎやすい世代。化粧水はとにかく惜しまずたっぷりと!
ホルモンバランスの変化によって、肌の水分・油分のバランスが変化したり、生理の前後で肌状態がゆらぎやすかったりする年代です。ですから、とにかく「化粧水を惜しまない」ことを意識していただきたいです。
また、化粧水は少量で、「(乾燥を防ぐためには)乳液やクリームをたっぷりつければいい」と考える方が多い傾向にありますが、肌に水分をしっかり与えずに油分だけを与えると、ベタついたり湿疹ができたりすることもあります。例えば、夏に湿疹で受診されて、お話を聞いてみるとエアコンなどで乾燥するからとクリームを塗りすぎて、それが原因で湿疹が発症したという方もいらっしゃいました。
乾燥が気になる時期や、特に気になる部分がある場合は何度も重ね塗りして、常に肌表面をうるおいでヒタヒタ状態にしておくこと。その後の乳液やクリームはうるおいをキープするためにフタをするものと考えて、肌を擦るように塗るのではなく、手で優しくプレスし、なじませることを意識しましょう。
ちなみに、脂性肌だと思っていらっしゃる方は、じつは水分が足りていない場合が多いんです。乾燥から守るために肌が一生懸命皮脂を分泌するため肌表面がテカテカしてくるので、とにかく水分を与えてあげることが大切です。ちなみに、化粧水はサイトやまわりの人のおすすめも参考にしつつも、きちんと自分の肌に合っているものを探すようにしましょう。
40代~50代:ホットフラッシュによるインナードライに注意!
更年期が近づくとホルモンバランスの変化によりホットフラッシュ(※1)が出てきて、化粧水やクリームが汗で流れて乾燥するというお悩みをよく聞きます。汗をかいたまま放置すると、インナードライといってどんどん肌の内側の水分まで蒸発していってしまいます。汗をかくと肌がうるおっていると感じる方も多くいらっしゃいますが、それは勘違いなんです。
※1 上半身ののぼせ、ほてり、発汗など、更年期障害の症状
日中、メイクをしていて汗をたくさんかいたあとは、少しクールダウンして、メイクがよれた部分だけでも薄くクリームを塗り、上からパウダーをはたくだけでも乾きにくくなりますよ。
60代以降:乾燥が進みやすい世代。塗りすぎ・叩きすぎに注意!
加齢とともに肌のターンオーバーが乱れ、乾燥がより進みやすくなります。ですが、乳液やクリームを過剰に塗りすぎないことを意識していただけたらと思います。更年期を過ぎた60代以降の方は、稗粒腫(はいりゅうしゅ)(※2)という白いポツポツが現れることがあるのですが、保湿剤の塗りすぎにより毛穴が詰まって発生する場合もあります。ですから、やはり塗りすぎには注意です。
※2 1~2㎜程度の小さく白いできもの。主に目のまわりにできる
また、化粧水をつけるときに、肌をパタパタと叩くようにパッティングする方が多い年代なのですが、この方法は年代問わず、摩擦や刺激によりしみ、くすみの原因になるのでNGです。昔教わった美容法というのが各年代にあると思いますが、基本的に肌は優しく包むように扱ってあげましょう。
ちなみに、60代の方のなかには、マスクをしていれば日焼けをしないと思い、日焼け止めを塗らない方もいらっしゃいます。しかし、マスクにはUVカット効果はないのと、マスクをつけていると湿気などにより毛穴が開いてしまうため、ダメージをより受けやすくなってしまいます。「マスクをしているから大丈夫」と思わず、より集中的にケアをすることを心がけるとよいでしょう。
妊娠中・出産後:特に肌が敏感な時期。刺激を抑えて!
妊娠中や出産後の肌は特に敏感な状態なので、なるべく肌に刺激を与えないことが一番大事です。また、授乳期では体の水分が母乳にいくため、肌の乾燥が加速しがちです。その際はできるだけ敏感な肌に適した化粧水やワセリンなどで保湿していただくほうがいいと思います。
巷でよく聞く乾燥対策。これって○?それとも×?
Q.朝はメイクをしていないし、肌も乾燥させたくないので、洗顔料を使わずに顔を洗う。
洗顔料を使わないほうが肌の調子がいい気がしても、皮膚科学的にいうと、夜寝ているあいだは、しっかりメイクをしたときと同じぐらいの皮脂が肌に溜まるといわれていますし、老廃物も肌から出ています。それらが溜まった状態で出かけて日中日差しを浴びると、しみもできやすくなります。そのため、できれば朝もきちんと洗顔することをおすすめします。
Q.Tゾーンのテカリが気になるので乳液やクリームは使わない。
乾燥により皮脂が過剰に分泌されるので、ベタつきやすいTゾーンほど、たっぷりと化粧水をつけること。うるおいを与えたあとは、乳液も塗ることをおすすめします。乳液を塗る前に、ローションパックをしてあげてもいいと思います。
Q.毎日シートマスクを使って保湿ケアをしている。
シートマスクは肌の表面全体へ均一にうるおいを与えることができます。特に、仕事や家事、育児、介護などさまざまな理由で洗顔後のケアに時間が割きづらい方におすすめです。シートマスクを5分程度つけて肌全体にうるおいを与えたあとに化粧水をつけると、化粧水のなじみがよくなります。私は、朝洗顔をしたあと、まずシートマスクを顔に貼ってからちょっとした家事をしたりしています。シートマスクをつけるだけで手の込んだスキンケアをしなくても済むので、忙しい女性の味方と言えるでしょう。
Q.しっかり毛穴の汚れを落としたいので、毎日スクラブ洗顔をしている。
スクラブにもさまざまな種類があります。粒子が粗めのスクラブ剤が配合されたものは肌に負担がかかりやすく、かえってダメージを受けてしまいます。そうすると外的刺激を受けやすくなるため、週に1~2回程度の使用がおすすめです。
Q.冬場は肌に負担をかけたくないので日焼け止めを使わない。
紫外線対策は基本的に365日必要です。夏と冬で紫外線量は変化するものの、基本的に紫外線は年中降り注いでいます。特に日中10時から14時のあいだは夏も冬も要注意です。(※3)さらに、雨の日でも晴れている日の8割は紫外線が降り注いでいます。
紫外線は、骨をつくるために必要なものでもあるのですが、しみやしわといった光老化の原因や、白内障の原因にもなると言われています。ですので、油断しがちな冬も紫外線対策をしていただいたほうがいいと思います。
冬に日焼け止めを塗るとかさつきや乾燥が気になるという方は、日焼け止めのせいというよりは、肌が乾燥しているためだと考えられます。スキンケアでしっかりと保湿をしていただいたうえで日焼け止めを塗っていただければ、気になりにくくなると思います。
「肌は内臓の鏡」。外側だけじゃなく内側もケアしてあげて
「何を使うか」よりも、「どの頻度でやるか」と「人の意見に惑わされず、自分の肌に合うものを選ぶ」ことが大事です。
また、「肌は内臓の鏡」と言われています。普段からお水をしっかり飲むことも、とても大切です。1日に摂取する水分量の目安として、秋冬は体重×30cc、夏場は体重×50ccと伝えていますが、だいたい2リットル前後が目安です。コーヒーやお酒、お茶などは利尿作用があるので、お水がおすすめ。体が水分不足になると肌も乾燥しやすくなります。
肌には心の状態やホルモンバランス、食生活などが現れるものなので、調子が悪いなと感じるときは、外側からケアするだけでなく、ぜひ生活を見直してみてください。「ストレス溜めてないかな」「いまを楽しんでいるかな」と、自分の内面を気にかけて労ってあげたら、きっと肌も美しくなっていくはずですよ。
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