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【食中毒の基礎知識】ならないための3原則って?原因と対策を解説【前編】

June 17, 2024

  • 取材・執筆:只野まり子
  • イラスト:マコカワイ
  • 編集:服部桃子(CINRA, Inc.)
  • 監修:成田崇信

更新日:2024年07月02日

気温と湿度が高くなると、食材が痛みやすくなってきます。食中毒を防ぎたいとは思いつつ、見えない菌やウイルスをどう対策したらいいか、悩まれる方も多いのでは?そこで今回は、管理栄養士の成田崇信さんに食中毒について取材。前編では、食中毒の原因と、暮らしのなかで発生しやすいシチュエーションについてうかがいました。食材ごとに起こりやすい食中毒の例を知れば、きっと対策もしやすくなるはず。食中毒の知識を身につけて夏を満喫しましょう!

食中毒を予防する「3原則」とは?

——そもそも、食中毒にかかるとどのような症状が起こるのでしょうか。

体内に入った異物を排出しようとするので、主に嘔吐や下痢、腸の痛み(腹痛)、下痢に伴う脱水などの症状が起こります。からだから水分が出て行くので、ナトリウムやカリウムといった、体内に必要なミネラルが足りなくなることも起こり得ます。食中毒の原因菌や原因物質によっては麻痺症状が出ることもありますね。なお食中毒を予防するために覚えておきたい「3原則」があります。それが、以下の3つ。

1 つけない

そもそも、食中毒細菌がいなければ食中毒は起こりません。ですから、食中毒の原因になる有害な原因菌やウイルスを食品に付着させないこと。ついてしまったら、洗い落とすことで予防となります。基本的であり、とても有効な食中毒予防法です。

2 ふやさない

「つけない」ことは大事ですが、食べ物から完全に細菌を除去することは困難です。食中毒細菌が食品のなかで増殖すると食中毒を起こすリスクが高くなります。細菌は温度と栄養と水分の条件が整うとあっという間に増殖してしまいます。調理した食品はすぐに食べてしまうか、時間を置くときは冷蔵庫で保存するなど、食べ物のなかで細菌を増やさないことが予防のポイントです。

3 やっつける

多くの食中毒細菌は熱に弱いので、食べる前に十分な加熱をし、細菌をやっつけてしまうことで、食中毒を予防できます。やっつけたあとには「つけない」ようにすることが大切です。

バーベキューは要注意?3原則が通用しないシチュエーションと対策

——3原則を守れば基本的には食中毒を防げるのでしょうか?

細菌の種類によっては、「つけない・ふやさない」は有効だが、「やっつける」は効果が限定的など、3原則がそのまま通用しないものもあります。そこで、食中毒の代表的な原因菌と対策をまとめました。

——こんなに原因菌があったのですね。挙げていただいたなかで、夏に食中毒を引き起こしやすいものはありますか?

ありがちなのは、調理後の料理をつくりおきとして常温で放置し、サルモネラ属菌やブドウ球菌が繁殖して食中毒を起こすケースです。

また、屋外でのバーベキューでは、O157に代表される腸管出血性大腸菌とカンピロバクターによる食中毒は発生しやすいですね。衛生状態が良くない場所で調理することや、生肉を触ったトングの使いまわし、生焼けの肉を食べることによって感染するので、バーベキューの際は注意が必要です。

食中毒になりやすい人、なりにくい人の違いとは?

——ところで、同じものを食べても食中毒になりやすい人となりにくい人がいますよね。それはなぜでしょうか。

同じものを食べても食中毒になる人とならない人がいる理由として、腸管出血性大腸菌やカンピロバクターの場合は少ない菌でも食中毒を引き起こすため、同じ場所で同じ食材を食べていたとしても、菌が多く付着している部分を食べてしまうことで、その人だけ運悪く食中毒になってしまった、ということもあると思います。

また、子どもや高齢者は成人と比較して食中毒になりやすいと言えます。子どもの場合は、抵抗力が備わっていないことや腸内細菌が整っていないことがその理由です。1歳未満の子どもにハチミツを与えてはいけないことはよく知られていると思いますが、理由としては、1歳未満の子どもは腸内細菌叢が整っていないため、ハチミツに混入していることがあるボツリヌス菌が体内で増殖するリスクがあるからです。

高齢者の場合は加齢によって胃酸の分泌が減り、食べたものに付着しているさまざまな菌などを胃酸で十分に殺せないことが、食中毒を起こしやすい理由の一つです。

成人でも、抗菌薬の服用などによって腸内細菌のバランスが崩れていると食中毒になりやすいと考えられます。

——食中毒になってしまった場合の対処方法について教えてください。

食中毒になってしまったら、脱水を起こしやすいのでスポーツドリンクなどで水分補給してください。嘔吐したとしても、少しは吸収できているので、まずは口をゆすぐ程度、その次に一口ずつと、ゆっくり根気よく飲ませましょう。もちろん、心配なことがあれば速やかに医療機関を受診することが大切です。

——「食中毒かも……」と感じたとき、医療機関を受診する目安があれば教えていただけますか。

食中毒の患者数は年間1万人程度ですが、これは医療機関を受診して食中毒と診断された人の数であり、実際にはもっと多くの人が食中毒になっていると想定しています。数字に表れないのは、軽い症状のため受診するまでもなく自然に治っているからと考えられます。

1~2回の下痢で終わらずにずっとトイレから出られない、途中から水のような便しか出なくなる、便の色が変わる、からだを動かすのがつらい、嘔吐が続くといった症状がある場合は受診することをおすすめします。その際に、最近どんなものを食べたのかを思い出せるようにしておくことが大切です。

特に子どもと高齢者に関しては、大丈夫だと思いこまずに、念のために受診しても良いと思います。脱水だけでも命にかかわることがありますので、慎重に様子を見てくださいね。

——ありがとうございます。後編では、食中毒にまつわる「あるある」なお話をおうかがいします。

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