- 取材・執筆:只野まり子
- イラスト:川添むつみ
- 編集:服部桃子(CINRA, Inc.)
- 監修医師:熊田朗子先生
更新日:2024年07月19日
首まわりがあいた服や水着を着る機会が増える季節。せっかく薄着をするなら、背中やデコルテまできれいに整えたいもの。でも、意外と見落としがちかつ、ケアもしづらいこれらの部位。一体どのように対策をするとよいのでしょうか?
今回は、暑い季節に起こりがちな背中やデコルテの肌トラブルの原因や対策から、セルフケアの方法について日本皮膚科学会認定皮膚科専門医の熊田朗子先生にうかがいました。
背中にできたニキビのように化膿した赤いブツブツ。アクネ菌が原因じゃないことも
——夏のような暑い季節は、背中・デコルテについてどのような肌悩みを抱えた患者さんが多くなりますか?
まずニキビが多くなりますね。背中にニキビのようなできものがもともとあった場合、暑さでかいた汗により悪化しやすくなります。それに加えてアトピー性皮膚炎の悪化、あせも(汗疹)、金属アレルギーも夏に増える代表的な肌トラブルです。
アトピー性皮膚炎もニキビ同様に汗で悪化しますし、金属アレルギーは汗をかくことで汗と金属が反応してかぶれやすくなります。あせも(汗疹)は文字どおり汗をかいてできる発疹です。
——背中のできものも、ニキビの場合があるんですね。
じつは、「ニキビ」といっても顔にできるニキビ(尋常性痤瘡:じんじょうせいざそう)とは原因が違うことも珍しくないんです。
顔にできるニキビ(尋常性痤瘡)は毛穴に皮脂が詰まりアクネ菌が増えることが原因で発生するのですが、一方で、背中にできるニキビのような赤いブツブツは、もともと皮膚にいるカビの仲間である真菌が増えて炎症を起こすことでできる毛包炎(もうほうえん)である場合もあります。
カビの仲間「真菌」によるからだの赤いブツブツの予防・ケアは?
——背中のニキビや、ニキビのような赤いブツブツに対し、自分で対処はできるのでしょうか?
ニキビの予防には、こまめに汗を拭くことに加えて皮膚を清浄にすることが大切です。からだを洗うときは、たっぷりの泡でこすらず洗うように心がけ、洗った後はしっかりと洗い流しましょう。また、シャンプーやコンディショナーがしっかり洗い流せていないことも背中の皮膚トラブルにつながりやすいので、頭を洗ったあとは背中をシャワーでよく洗い流すようにしてください。
背中やデコルテにできた赤いブツブツは、細菌や真菌に効果のある抗生物質や抗真菌成分が配合された薬を選びましょう。炎症がそれほどひどくない場合は、セルフケアをして1週間〜10日ほどで症状が軽くなることが多いです。それでも改善が見られない場合は、皮膚科を受診する必要があります。
ほかにも起こる背中・デコルテの皮膚トラブル
——ちなみに、先ほどお話にあった金属アレルギーの場合はいかがでしょう? 首などに症状が出たらネックレスの着用をやめることで改善するのでしょうか。
基本的には金属をつけている部分に症状が出るので、その部分に触れている金属の着用をやめれば改善しますが、症状を放置してひどくなると「自家感作性皮膚炎(じかかんさせいひふえん)」という状態になり、金属が触れていない部分にも湿疹が広がることがあります。そこまで進んでしまうとセルフケアで対処するのは難しいので、金属アレルギーと思われる場合はそもそも金属のアクセサリーを避けるなどの対応が大切です。
——あせもでも同じように症状が広がることがありますか?
あせもは、胸・背中など汗をかきやすい場所や、首・肘・膝など汗のたまりやすい場所に出やすいです。あせもは放置されやすく、かきむしって皮膚が厚くなってしまったり、色素沈着を起こしたりと、症状がひどくなってしまうことが多いですね。
こまめに汗を拭いたり、シャワーを浴びたりできれば症状は改善しますが、皮膚の状態が悪化している場合は皮膚科で処方されるステロイドの塗り薬を塗ることが対処法になります。もともと皮膚が弱い方やアトピー性皮膚炎がある方は悪化しやすいので、早めに皮膚科を受診していただきたいです。
——汗で悪化する皮膚トラブルが多いというお話でしたが、有効な汗対策はあるのでしょうか。
自分でできる対策としては、風通しのいい服を着たり、汗をかいたらこまめに拭いたりすることですね。汗を拭くときは肌にやさしい綿素材のガーゼタオルがおすすめです。背中の真ん中あたりが一番汗をかきやすいので、背中の汗が多い方は可能ならリュックも避けたほうがいいでしょう。下着も綿のものを身に着けて、汗をかいたあとに取り替えられるとよりいいですね。
なお病院では、手のひらと脇の汗には汗をとめる塗り薬を処方することができます。それ以外の部位の汗には、飲み薬があります。汗による皮膚トラブルが多い人は、皮膚科で相談してみることをおすすめします。
「普段からキレイ」な背中とデコルテをつくるコツ
——汗に対するケア以外に、背中やデコルテを普段からきれいに保つ方法はありますか?
肌の摩擦がトラブルにつながるので、からだを洗うときにゴシゴシこすらないことが原則です。特に背中は強くこすってしまいがちな場所ですが、そんなに頑張って皮脂や垢を落とす必要はありません。ボディソープをしっかり泡立てて、手でやさしく洗い、よく洗い流すことが大切です。
背中やデコルテに限らず、皮膚全体のトラブルを減らす意味では、食習慣や睡眠時間、ストレスなども関係してくるので、生活習慣の見直しも大切な要素です。
——食事も関係してくるのでしょうか。
油っぽい食べ物や糖質が多い食べ物は皮脂の分泌を増やすので、例えばコンビニでご飯を買うときに野菜を追加するなど、できる範囲でよいので工夫してみてください。ビタミンB2やビタミンB6、ビタミンCも、ニキビをできにくくしたり炎症を早めに鎮静したりするのに必要な栄養素です。
——じっくり向き合ってケアする必要がありそうですね。
特に背中のトラブルは自分では気づきにくいため、発見が遅れてそのぶん治療にも時間がかかってしまいがちです。それに皮膚が厚いので、薬などが浸透しにくい場所でもあります。背中の赤いブツブツなどは完治まで時間がかかることがあります。じっくり時間をかけて治療をしていくことを大切にしてください。
——ありがとうございました。後編では、背中・デコルテを整えるストレッチを、ヨガインストラクターのMarikoさんにうかがいます。
- 1