- 取材・執筆:宇治田エリ
- 編集:森谷美穂、服部桃子(CINRA, Inc.)
- 監修医師:坪内利江子先生
更新日:2024年09月25日
普段はきちんと紫外線対策をしている人も、曇りのときに気を抜いて日焼け止めをしっかり塗らずにいたら、うっかり日焼けをしてしまった……! という経験がある人も多いはず。そんなとき、どんなアフターケアが有効なのでしょうか?
今回は、屋外での活動が多く日焼けにも気を遣っているランニングアドバイザーのsahoさんと、キャンプ女子の森風美さんに、普段は気をつけているのに「うっかり日焼け」をしてしまった経験とその後のアフターケアについて教えてもらいました。その内容について、銀座スキンクリニックの院長・坪内先生からアドバイス、効果的なアフターケアの方法を教えていただきました。
うっかり日焼けはいつ起こる?気をつけたい時期とアフターケア
季節や時間、天気によって変わる、日差しと紫外線量。健康美塾読者も「長袖を少しだけまくったら、そのかたちに焼けてしまった」「日差しが弱いし、まあいっか。と思っていたら真っ赤に!」など、うっかり日焼けの経験があるよう。まずは日焼けの基本知識と、アフターケアの方法を坪内先生に確認しましょう。
――日焼けにも、赤くなる日焼けと、くすみやしみ、しわが増えるような日焼けがあると思いますが、どのような違いがあるのでしょうか?
坪内:日焼けを引き起こす紫外線(UV)には、UV-A(A波)とUV-B(B波)があり、それぞれダメージの受け方が変わります。
UV-Bは波長が短くとてもエネルギーが強い紫外線で、やけどのような炎症「サンバーン」を起こします。人によっては肌が赤くなったり、黒くなって皮膚がむけたりするほか、ひどい場合は水ぶくれになることも。また、DNAや細胞が傷つけられ、将来的に皮膚ガンの危険性もはらんでいます。ちなみに炎症がおさまったあとは、肌が黒っぽくなる症状がしばらく続く「サンターン」も起こります。
UV-Aは、皮膚の奥深くに届き、老化の原因となる活性酸素を増やしたり、コラーゲンを壊したりして、肝斑※やしわ、たるみの主な原因となったり、ニキビへの悪影響を引き起こします。UV-Bのようなサンバーンは起こりにくいのですが、ゆっくりとサイレントに肌へ影響を与える紫外線です。
※肝斑はUV-AだけでなくUV-Bも原因と考えられています。
――どちらも肌への影響は大きいですね。知らないうちに日焼けをしてしまった「うっかり日焼け」は、どのようなときに起こりやすいのでしょうか?
坪内:日本の場合、UV-Bの紫外線量は夏場が圧倒的に多く、冬になると弱まりますが、まったくなくなることはありません。また、UV-Aは一年中降り注いでいるうえに、曇りの日であっても、室内にいても、肌へ影響を与えます。
そのため、日常生活で日焼け止めを塗らずにいて、思わず日に当たってしまったときに、うっかり日焼けが起こりやすいといえます。特に肌の対策をしたい方は、気をつけたいところですね。
屋外で活動するときはUV-A、UV-Bともに防ぐ時間が長いものを。曇りの日や屋内で活動するときは、UV-Aを防ぐPAの「+」が多いものを選びましょう。塗り忘れしがちな耳の裏や、デコルテも忘れずに塗りましょうね。
――日焼けで赤くなるタイプ・黒くなるタイプの人がいると思いますが、その違いはありますか?
坪内:その人が持つメラニン(紫外線などから肌を守る物質)の量によって紫外線に対する反応は異なります。比較的肌の色が黒い方はメラニンの色素が多く、逆に肌の色が比較的白い場合は、皮膚に含まれるメラニンが少ないタイプとなります。
前者の、もともと比較的肌の色が黒い方でメラニンが多いタイプの方は、紫外線に当たったときにメラニンが作用し皮膚の表面で紫外線をキャッチできるので、ダメージが奥まで浸透しにくい傾向があります。
後者の、よく「日焼けするとすぐ赤くなる」という比較的肌の白いタイプの方は、メラニンの量が少ないため紫外線が皮膚の深層部まで届きやすく、ダイレクトにダメージを受けてしまいます。
ちなみに、日焼けしてすぐは肌が黒くなるけれど冬には戻るという方や、もともとは肌が白かったけれど子どもの頃から屋外スポーツを続けていてずっと肌が黒いという方は日焼けのダメージに強いと思いがちですが、しっかりと紫外線のダメージを受け、残ってしまっています。日頃から対策を怠らないようにしましょう。
ランニングやキャンプでのうっかり日焼け対策に、専門医がアドバイス
屋外での活動をメインにしている方は、日に焼けてしまう機会も多いでしょう。ときにはしっかり対策をしたつもりでも、うっかり日焼けをしてしまうことも。そんな方は、日頃どんな日焼け対策をしているのでしょうか。 今回は、ランニングアドバイザーのsahoさんと、キャンプ女子の森風美さんに、そんなエピソードと対処方法をヒアリング。坪内先生にアドバイスをしてもらいました。
曇りの日でうっかり日焼けに。ランニングアドバイザーsahoさんの場合
──トライアスロンレースは一般的に、スタートからゴールまで3時間ほどかかります。レースの参加者ではなくても、アウトドアアクティビティの途中で天候が変わってしまう、という経験のある方も多いのではないでしょうか。
坪内:思っていたよりも天気がよくなってしまい、紫外線対策が十分にできず日焼けしてしまったという話はよく聞きますね。基本的に、長時間外にいる場合は、曇りであっても晴れることを想定して、ウォータープルーフの日焼け止めをしっかり塗っておくことをおすすめします。
──sahoさんの場合は、パックや美容液で水分を補うアフターケアをしています。
坪内:肌のほてりや赤みがない軽い日焼けであれば、保湿の目的でパックや美容液を使うのは良いと思います。けれど今回のsahoさんの場合、肌が赤くなりサンバーンが起こっているため、「これはやけどだ」と受け止めて、薬局か皮膚科へ行き、ステロイド剤や、炎症を抑える薬をもらいましょう。できる限り早くやけどを治すことが大切です。日焼けした場所が真っ赤になったり、水疱ができかけていたり、痛みがひりひり激しい場合は受診をおすすめします。
日焼け後は肌がとても乾燥しているため、水分補給をしっかり行ないましょう。特に、ビタミンCなど抗酸化作用のある果物を食べることは良いアクションです。果物は、オレンジやグレープフルーツなどにビタミンCが豊富に含まれています。ただ、糖質の摂りすぎはニキビの原因にもなるので、食べすぎないよう注意してくださいね。
車内での日焼けも要注意。キャンプ女子森風美さんの場合
──坪内先生が先ほど、紫外線のうちUV-Aは室内にいても肌に影響を与えるとおっしゃっていましたが、いかがでしょうか。
坪内:車内であっても、UVカットのフィルムが貼られていないかぎり、UV-Aはガラスを通るのでじわじわと日焼けしてしまいます。そのことを念頭に置いて、移動中もしっかりと紫外線対策が必要です。
日焼け止めは塗る量が少なければ、たとえ数値の高い日焼け止めであっても短い時間しか効果が続かないので、こまめに塗る意識をもちましょう。
──日焼けしたあと、肌を冷やして保湿をすることは効果的でしょうか。
坪内:応急処置としてとてもいいアクションだと思います。紫外線によるサンバーンは、広範囲に熱の影響が及ぶので、濡らしたタオルや流水で広く冷やすと効率的です。
炎症が落ち着いたら肌の内側からもしっかり対策が必要です。紫外線を受けると「活性酸素」が体内でつくられ、しみ・しわ・たるみなどの肌のトラブルが起こります。日焼け後にしみ・そばかすができてしまったら、それらを薄くしていく内服薬の服用をおすすめします。
野菜については、抗酸化成分であるβカロテンが豊富なにんじんやかぼちゃ、リコピンが豊富なトマトなどを意識して摂るといいと思います。また、野菜ではありませんが、抗酸化成分であるアスタキサンチンが多く摂れる鮭もいいですよ。
肌のダメージは、日ごろからコツコツとケアをすれば、しっかり防ぐことができます。注意しているつもりでも完璧に日焼け対策は難しいもの。うっかり日焼けを防ぎつつ、適切なケアをして、健やかな肌でいられるようにしましょう。
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