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「皮膚科医・小林智子先生に教わる 肌ゆらぎの原因と対処法、そして 敏感期の過ごし方。」記事のメインビジュアル

皮膚科医・小林智子先生に教わる いつでも誰にでも起こり得る「肌ゆらぎ」の原因と対処法とは。

November 1, 2023

  • 取材・文:及川夕子
  • 撮影:柏原 力
  • イラスト:野瀬奈緒美
  • 編集:大森奈奈
  • 監修医師:小林智子

更新日:2024年08月27日

いつもと同じお手入れをしているつもりなのに、なんだか肌がカサつく、肌あれが気になる……。季節の変わり目、年齢を重ねるにつれ訪れるライフステージの変化、または生理周期に伴って肌が敏感になることはありませんか。

肌の調子が悪いと、それだけで心がしずんでしまう。だから、肌がいつも健やかでいられるようなケアができたら――。

今回の特集は、年代や生活、体調の変化などの影響を受けやすい私たちの「肌」がテーマ。美肌づくりに深く関わる皮膚のメカニズムや健やかな肌を保つための日々のお手入れについて、皮膚科医の小林智子先生にお話を伺いました。

体質だけではない、肌のゆらぎの要因は?

―― 季節の変わり目、年代やライフイベントによる生活の変化、また生理前などに化粧ノリが悪くなったり、調子のいいときとそうでないときが交互にやってきたり…。いわゆる肌が“ゆらぐ”というのは、どのような状態なのでしょうか。

肌がゆらいでいるという状態は、基本的には「肌のバリア機能」が低下している状態がベースにあることが多いです。肌が本来持っている「肌内部のうるおいを保つ働き」と「外部刺激から守る働き」、この大事な2つの働きが低下しがちで一時的に肌が敏感になっています。

バリア機能が低下するとさまざまな外部刺激に弱くなるので、いつもと同じ化粧水を使ってもピリピリするように感じたり、吹き出物や湿疹ができやすくなったり、赤み、かゆみ、ごわつきといった不調があらわれやすくなったりします。

―― 健やかな肌を保つためのバリア機能が低下してしまうのはどのようなときでしょうか。

たくさんの要因があります。例えば、寒暖差や乾燥、紫外線、アレルギー物質(花粉)などの外部刺激にさらされること、それから過剰な洗顔、こすりすぎといった間違ったスキンケア、生活習慣の乱れ、ストレス、ホルモンバランスや加齢など、様々な要因によって肌のバリア機能は低下してしまいます。肌質だけによるわけではないのです。

ただ、敏感に感じやすい人、そうでない人というように個人差はあります。その人がいくつ要因を持っているかによっても、肌への影響は変わってくるからです。例えば、もともとアトピー素因を持っていらっしゃるような方では、外部環境やストレスの影響をより受けやすくなっていると考えられるので、敏感になりやすいともいえます。また、もともとニキビがある肌では紫外線を浴びることでさらにニキビが悪化するといわれています。

ストレスと肌のゆらぎとの関係を知っておこう

―― バリア機能はストレスの影響も受けるのですね。人生にはさまざまなライフイベントが起こり得ますし、進学、就職、結婚といった喜ばしい環境の変化にもストレスはかかってきます。ストレスがあるとき、肌ではどのようなメカニズムが働くのでしょう。

過度のストレスを受けると、バリア機能を担う肌の保湿因子の産生が低下する可能性があることが報告されています。肌にツヤ・ハリがなくなったり、ちょっとした刺激にも弱くなり、うるおいが逃げやすい状態にもなりやすいです。

意外と盲点なのは、ストレスが「負の連鎖」の引き金になるということ。何か心配ごとがあったり、うまくいかないことがあると眠りが浅くなって生活リズムが乱れたり、食べ過ぎやお酒の飲み過ぎなど暴飲暴食に走ったりすることってありませんか。こうした行動の変化や生活の乱れが、肌の新陳代謝の妨げになることで、バリア機能のさらなる低下にもつながりかねません。

ストレスを感じているときこそ、意識的に健康的な生活を心がけて、自分の肌や心をいたわってあげてくださいね。

―― 小林先生が指摘されたように、肌が敏感になる条件は一つではなく、環境だったり年齢や生活の変化によるものだったりとさまざま。一生を通じて人それぞれに敏感な時期があると考えています。

そうですね。バリア機能の低下は年齢や性別に関係なく、いつでも誰にでも起こり得るものです。ただ、外来で患者さんをみていますと、男性よりも女性の方が圧倒的に肌の変化に敏感ですし、自分は敏感肌だと思っている方は多いですね。

肌の調子は女性ホルモンのリズムにも左右される

―― 女性のほうが敏感肌だと感じている人が多い。それはどのようなことが影響しているのでしょう。

一つには、女性には毎月生理周期があるため、女性ホルモン分泌のリズムによる影響を受けやすいということ。肌あれやニキビが起きやすいといわれているのは、排卵後から生理が始まるまでの黄体期です。この時期は皮脂分泌を促す黄体ホルモンの分泌が増えることから、肌が脂っぽくなったり、毛穴が詰まりやすくなったりしてあごや口の周りなどにニキビができやすくなる人もいます(※1)。生理前には、肌も心も不安定になりがちですよね。

生理前のニキビなど、女性ホルモンに起因する症状の場合には婦人科で女性ホルモンのバランスを整える薬を処方してもらえます。相談してみてもいいかもしれませんね。

※1 黄体ホルモンには、ニキビや多毛をひきおこしたりするアンドロゲン(男性ホルモンの一種)に近い作用もある。

バリア機能を健やかに保つ、回復させるケアの原則とは

―― 肌が敏感に感じているときやバリア機能が低下しがちなときのスキンケアで注意すべき点はありますか。また、健やかな状態に回復させていくために取り入れたいケアのポイントについて教えてください。

敏感肌のお手入れというと「まず保湿」と思いがちですが、実は与えること以上に、例えば洗浄などの「(バリア機能を)失わないケア」がとても大切なのです。なぜならバリア機能は皮膚を守る最前線の防御機能だから。まずはそこから見直していきましょう。

肌が敏感なときのスキンケア・ボディケアのポイント

●洗浄
しっかり汚れを落としたいからと、ゴシゴシ洗いすぎると摩擦で肌表面を傷つけたり、バリア機能の低下につながります。とにかく肌にやさしい洗顔を心がけて。

●保湿
肌本来のバリア機能を高めてくれる保湿成分としてお勧めなのは、セラミドやコレステロール配合の保湿剤。肌がゆらいでいると感じるときは、保湿アイテムは1つに絞ってケアを。敏感肌向けに開発されたスキンケアブランドを取り入れるのもいいでしょう。

また、普段はお勧めできる美肌成分であっても、肌が敏感なときには注意したい成分があります。レチノールなどのレチノイド、ビタミンCといった美容成分、またグリコール酸などのピーリングアイテムの使用を一時的に控えたほうがいいでしょう。アルコールや香料など、刺激を感じやすい成分もできるだけ含まれていないものを選びたいですね。

年齢に応じて起こりやすい肌ゆらぎへの対処法

―― 年齢やライフスタイルの変化に伴い、肌が敏感になることもあると思うのですが、年代ごとの傾向やケアのポイントについてもアドバイスをお願いします。

思春期〜10代
過剰な皮脂分泌が原因の思春期ニキビで悩む方が多いですね。ニキビは若さの証ではないし、あって当たり前でもないということは知っていただきたいです。ニキビが気になるあまり、過剰な洗顔で肌を傷めてしまう人もいます。なので洗顔料は肌と同じ弱酸性タイプ、また洗いすぎて皮脂を奪いすぎない洗浄成分を持つ製品を使うなど、肌を擦らない洗顔と保湿を意識してみましょう。

20代〜30代
就職、結婚、育児、転職・転勤などのライフイベントがあり、ライフスタイルにも変化が大きい時期です。その時々のストレスや忙しさ、生活習慣などが肌に影響してくることがあります。また、妊娠中や出産後の女性にも、その時期特有の忙しさがあると思います。

バリア機能を健やかに保つには、正しいスキンケアはもちろんのこと、質のいい睡眠やバランスの良い食生活が欠かせません。栄養不足や寝不足が続いてしまうと、ターンオーバー(皮膚細胞の生まれ変わり)が停滞し、肌の修復が遅れたり皮脂のバランスもくずれやすくなります。ストレスを感じているときや忙しいときには、できるだけシンプルケアを心がけ“時短”しながら乗り切るという方法をお勧めしています。

40代〜50代
とくに40代後半あたりから訪れる更年期から閉経に向けて、肌質が大きく変化していく時期といえます。ターンオーバーが遅くなり、角質層ではセラミドをはじめとする細胞間脂質が減少して皮膚自体が薄くなっていきますし、水分保持能力も低下して乾燥肌が深刻化しやすいです。女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が激減することによって、かゆみや湿疹などの症状に悩まされる方もいます。

まずは、バリア機能を健やかに保つ対策として、保湿成分を補うことが大切になります。保湿成分でいうとアミノ酸やセラミド、ヘパリン類似成分、ヒアルロン酸などを補うとよいでしょう。紫外線対策もしっかり行いましょう。

ずっと肌の不調を感じているなら、トラブルかも。メディカルチェックの活用も

―― 最後に、肌や心のゆらぎに悩むすべての年代の方へメッセージをお願いできますか。

日々皮膚科で診療していると、さまざまな肌トラブルを抱えた方が相談にきます。自分でいろいろな方法を試したけれど、よくならない……と長年悩んできた方も多いです。

ゆらぎというのは、いいときも悪いときもあって、波がある状態です。でも、ずっと肌に何かしらの不調を感じているなら、それはゆらぎではなくトラブルが起きている可能性が大きいと思います。ご本人が敏感肌だと思っていたら実はそうではなくて、調べたら皮膚疾患が隠れていたという場合もあります。肌質は一人ひとり違いますし、肌トラブルというのは複雑でわかりにくいものなのです。

バリア機能を健やかに保つためのセルフケアについてはご紹介した方法をぜひ続けてみてください。迷ったときには皮膚科医のメディカルチェックも上手に活用してくださいね。

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