食事の後、みぞおちの辺りがジリジリ焼けるような感じがするという経験をしていませんか?このような「胸やけ」の症状は、何らかの原因で胃酸が逆流し、食道の粘膜を刺激することで起こります。通常は、食道と胃の間は飲食時以外、噴門が閉じられていて胃酸の逆流は起こりません。なぜ胃酸が逆流するのか、その原因を探り、早期に対処しましょう。
「胸やけ」とは、みぞおちの上の辺りがジリジリ、ヒリヒリと焼けるような感じ、しみる感じなどの症状をいいます。食べ過ぎや飲み過ぎなどでムカムカする「むかつき」、「胃もたれ」といった症状とは異なるものです。
本来、食道と胃のつなぎ目部分(噴門部)の筋肉(下部食道括約筋)は、食べたり飲んだりする時以外にはしっかり閉じていて、胃液が食道に逆流することを防いでいます。ところが何らかの原因によって下部食道括約筋の締まりが悪くなると、胃液が食道に逆流しやすくなることがあります。
胃の粘膜は、胃酸による刺激を受けないよう粘液により保護されているのですが、食道の粘膜はこのような機能が弱いため、逆流した胃酸に刺激されて、胸やけの症状が起こるのです。
胃酸が逆流しやすくなる原因としては、主に以下の3つが考えられます。
胃酸の逆流は、食道と胃のつなぎ目を閉じる下部食道括約筋がゆるむことによって起こります。げっぷをすると一時的に下部食道括約筋がゆるみ、胃酸が逆流します。そのほか次のような原因で、下部食道括約筋の圧力が低下し締まりが悪くなることがあります。
肥満や前かがみの姿勢などによって腹圧がかかり、胃酸の逆流が起こりやすくなることもあります。
胃酸の逆流は胃酸の出すぎによっても起こります。
ピロリ菌(正式名称:ヘリコバクター・ピロリ)に感染していない元気な胃の人が衛生環境の改善や除菌治療の普及によって増えたことや、食生活の欧米化(脂肪の多い食事が増えたこと)などにより、日本人の胃酸の分泌が高まったこともその原因と考えられています。(参考:「胃痛の原因」)
また、胸やけの症状が出る「胃食道逆流症(GERD)」という疾患があります。胃食道逆流症は日本人には比較的少ない疾患といわれてきましたが、近年では増加しており、現在では日本人の10~20%に該当すると推測されています。
胃食道逆流症の場合、胃酸が逆流することによって、胸やけのほか、呑酸(酸っぱい液体が上がってくる感じ)や胸の詰まり、のどの違和感、咳などの症状がみられ、胃酸の分泌を抑える薬を使うと症状が改善することが知られています。
もともと、日本人と欧米人では胃の形状が異なります。日本人に多い胃の形は、かぎのように折れ曲がった「鉤状型」なのに対し、欧米人に多くみられるのは「牛角型」と呼ばれる形状です。
一般的に、日本の食生活は穀類中心で、日本人の胃は血流が悪くなりやすく、動きもあまり活発ではないため、胃痛や胃もたれなどの症状が起こりやすい傾向があります。一方、肉食中心の欧米人は、胃の働きが活発で胃酸の分泌も多く、胸やけや十二指腸潰瘍など、胃よりも食道や腸の症状が多い特徴があります。
ただし、近年では食事の肉食化など、ライフスタイルの変化により、日本でも若い人には欧米型の胃が増えており、それにより胸やけを起こす人も多くなっているといわれています。
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