正しいくすりの知識を身につけよう 第1回
2023.9.7 更新
「くすりは“なぜ”水で飲むようにいわれるの?」「飲み忘れたとき、次の服用まではどうしたらいい?」……いざ聞かれると、普段からくすりを飲む習慣がある人でも、正しく答えることは難しいかもしれません。
薬局やドラッグストアで「よく効くくすりを」と選んでも、使い方が間違っていれば、正しい効果を発揮できず、それはもったいないことです。疑問をすっきりと解消して、正しく有効にくすりを役立てましょう。
A1.
くすりの吸収が邪魔されたり、効果が強まったりすることを防ぐため、水かぬるま湯で飲みましょう
くすりは水かぬるま湯で飲むのが基本です。それは、くすりが水に溶けて効果が現れるように設計されているからです。それ以外の飲み物で服用すると、飲み物との組み合わせによっては、くすりの効き目が弱まったり、逆に効きすぎたりすることがあります。そうしたことがないように、「水で飲む」ことが原則だと知っておきましょう。
また、冷たい水で飲むとくすりが溶けにくいため、吸収されにくくなってしまいます。逆に熱すぎると分解されてしまうものもあり、飲み込みにくいので、「常温または体温と同じくらいのぬるま湯」で飲むのが最適です。
「特に注意すべき」飲み合わせを個別に知っておくことも大切です。影響が出る可能性がある飲み物の一つが牛乳です。それについて薬剤師の鈴木伸悟先生は次のように説明します。
「胃の中はもともと強い酸性ですが、牛乳を飲むことで中和されて中性になります。そのため、例えば胃の中のような酸性環境では溶けずに、腸の中のような中性に近い環境で溶けるように設計されているくすり(腸溶性製剤)を牛乳で飲んでしまうと、くすりが胃の中で溶け、分解されて効果が弱まったりしてしまうのです。便秘薬の一部などが、こうした腸溶性製剤にあたります」
グレープフルーツジュースも注意が必要な飲み物です。病院で処方される血圧を下げるくすり(カルシウム拮抗薬)は、グレープフルーツに含まれる「フラノクマリン類」によってくすりの作用が強くなり、副作用が出やすくなります。
横浜薬科大学教授の小出彰宏先生は、「これは、小腸からくすりが吸収されるときに、くすりを分解する“チトクロームP450(CYP)3A4”という代謝酵素を、フラノクマリンが邪魔するためです。その結果、くすりが作られたときに設計された本来の効き目よりも強い効果が出るわけです」と説明します。
また、グレープフルーツジュースだけでなく、リンゴジュースやオレンジジュースなどの果物ジュースに含まれる成分の中には、小腸でくすりが吸収されるのを阻害する働きがあるものも。その場合には、くすりの効果が弱まることがあるので注意が必要です。
「例えば、花粉症などによるアレルギー性鼻炎などに用いられる抗アレルギー薬で、“フェキソフェナジン”という抗ヒスタミン成分が入ったものは、グレープフルーツジュースと一緒に飲まないようにしてください。腸からのくすりの吸収が邪魔されて、効き目が弱くなる可能性があります」と鈴木先生は話します。
カフェインを多く含むコーヒーや紅茶、緑茶、エナジードリンクも注意が必要です。「市販の風邪(かぜ)薬や、せき止め薬、解熱鎮痛薬、鼻炎薬などにもカフェインが含まれるものが少なくありません。こうしたくすりをエナジードリンクなどのカフェインを多く含む飲み物で飲むと、心臓がドキドキしたり、吐き気をもよおしたりすることがあるので避けてください。風邪(かぜ)のときはしっかり休むのが基本。カフェインをとりすぎれば興奮して眠れなくなることもあるので気をつけましょう」と鈴木先生は注意を促します。
このほか、アルコールでくすりを飲むのも厳禁です。効き目が強く出すぎて副作用が現れやすくなります。「解熱鎮痛薬として用いられる“アスピリン”は、アルコールと一緒に飲むと胃粘膜を荒らし、出血を引き起こしやすくすることが報告されています※1」(小出先生)
なおアルコールを日常的に飲んでいる人は、そうでない人に比べくすりを分解する代謝酵素の活性が高く、くすりが効きにくくなる可能性もあるといいます。
タバコを吸っている人も、アルコールと同じようにCYPなどの代謝酵素が活性化することで、気管支拡張薬などの効果が低下する可能性があるといわれています。
月経困難症などで低用量ピルを処方されている女性もタバコには要注意。
「喫煙により血栓症のリスクが上がることが報告されています※2。低用量ピルを使う場合は、ぜひ禁煙を」と鈴木先生は呼びかけます。
注意が必要な飲み物とくすりの組み合わせ | |
---|---|
牛乳 | 牛乳で胃の中が中性になり、本来中性に近い環境の腸で溶けるように作られたくすりが胃で溶け、効果が弱まることがある。便秘薬の一部がこれに当たる。また、抗生物質の中には牛乳中のカルシウムと結合して吸収されにくくなり、くすりの効き目が弱まるものもある。 |
グレープフルーツジュース | 高血圧の薬(カルシウム拮抗薬という種類)などの効果を強めることが知られている。一方、抗アレルギー薬の中には効き目が弱まるものもある。 |
ジュース | 炭酸飲料などの酸性の飲料は、くすりの吸収を遅くしたり、効果を弱めたりすることがある。 |
コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなど | カフェインが含まれている飲み物は、かぜ薬や解熱鎮痛薬、せき止めなどのカフェインを含む薬と一緒にとると、眠れなくなったり、心臓がドキドキしたりする可能性がある。 |
アルコール | 多くのくすりの吸収や効き目に影響し、副作用が起こる恐れがある。 |
(監修:横浜薬科大学・小出彰宏先生)
A2.
原則、コップ1杯の水を飲みましょう
100~200cc、コップ1杯程度の水かぬるま湯で飲みましょう。
「もちろん、わざわざ水の量を測る必要はありません。市販薬の場合はコップ1杯程度の多めの量の水で飲み込むと、くすりが速く胃に届きやすくなります」と鈴木先生。
多いように感じるかもしれませんが、量が少ないと、くすりが喉や食道、胃、腸の粘膜などにくっついてしまうことがあります。そこでくすりが溶けてしまうと、粘膜に炎症を起こす可能性があり、効果も十分に期待できなくなるのでこの量が必要なのです。
「ただし、処方薬の中には、できるだけ少ない水で飲むタイプのものもあるので、くすりを受け取るときには薬剤師の説明をよく聞くようにしてください。市販薬にも、口の中で溶けて水なしで飲めるものがあります」と鈴木先生。
A3.
先に少量の水で口の中をうるおしておくと飲みやすくなります
粉薬やサイズが大きめの薬は飲みにくいこともあるでしょう。
「粉薬の場合、先に少量の水で口の中をうるおしておくと、飲みやすくなります。それでも飲みにくい場合は、オブラートを使うといいでしょう。現在は、フィルム状のものだけでなく、ゼリー状のものもあり、お子さんにも飲みやすいようにできています」と小出先生。
「また、錠剤が大きくて飲みにくい場合は、薬剤師に相談してください。重要なのは、勝手にすり潰したり、かみ砕いたりして飲まないことです。腸で溶けるように作られている薬など、そのままの状態で飲むことで効果を発揮するようにできているくすりの場合はその機能が失われてしまうからです。薬剤師に相談すれば、同じ成分でサイズの小さいものがあれば教えてもらえます」(小出先生)
A4.
飲み物の種類や、飲む人の体質・体の大きさにもよります
飲み合わせの悪い飲み物を飲んでしまったとき、どのくらい時間が経ったらくすりを飲んでも問題がないでしょうか。
「例えば牛乳と便秘薬の場合なら、1時間以上空けるといいでしょう。アルコールの場合、アルコールを代謝する能力は個人差が大きいので一概にはいえませんが、一般的には男性が350ml缶のビールを飲んだとき、早ければ2~3時間でアルコールが分解されるといわれています。ただし、飲むとすぐに赤くなるなど、体質的にアルコールに弱い人や女性はもっと時間がかかります。くすりを飲むときにはアルコールを控えましょう」と鈴木先生は説明します。
一方、「グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類は、体外に出るまでに約24時間かかるとも、数日かかるともいわれています。個人差がとても大きいのです。血圧を下げるためのカルシウム拮抗薬は毎日飲むくすりですから、これを服用している方はグレープフルーツもジュースも口にしないのが賢明です」と小出先生は注意を促します。
A5.
2回分を一緒に飲むのはダメ。血中濃度が高くなりすぎて危険です
くすりは体に吸収され、血液中に溶けて全身を回ります。このとき血液中に溶けているくすりの濃度のことを「血中濃度」といいます。どのくすりにも効き目が現れるための適切な血中濃度があり、それに応じて用法・用量が決められています。ですから、飲み忘れたからといって、2回分を一緒に飲むのはダメ。血中濃度が高くなりすぎて、副作用が出やすくなります。危険ですから絶対にやめましょう。
A6.
痛みが強いときは服用後4時間以上経っていれば、飲んでもOKです
頭痛や月経痛などのときに服用する市販の解熱鎮痛薬(痛み止め)は頼れる味方。利用したことがある人も多いのでは? 解熱鎮痛薬を飲んだ後、しばらくは痛みが軽くなっていたのに、また痛み出した……。そんなケースもあるでしょう。その場合、すぐにまた解熱鎮痛薬を飲んでもよいのでしょうか。
「1日3回まで飲めるタイプの解熱鎮痛薬の場合は、4時間以上経っていれば飲んでもかまいません。それは、飲んでから4時間以上経つとくすりの大半は体の外に出ていくと考えられるからです。1日3回飲むタイプなら、4時間空ければ2回目のくすりを飲んでも、血液濃度が高くなりすぎる心配はありません」と鈴木先生は説明します。
【第一三共ヘルスケアの該当製品】
ただし、これは、突発的に痛みを感じたときの場合の話。慢性的に続く痛みの場合は、自己判断で鎮痛薬を使用し続けずに、病院で原因や治療法を相談することが大切です。慢性的な頭痛で解熱鎮痛薬を使いすぎると、服用間隔を空けたとしてもかえって頭痛がひどくなる「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」になることがあるため、市販薬を使用するときには、用法・用量や注意事項を守って飲むことが大切です。月に10日以上鎮痛薬を服用しているどうか、これも医療機関を受診する目安になります。
また、風邪薬の場合も、そのくすりが1日に何回飲むタイプかによって、次のくすりを飲むまでに空ける時間が違ってきます。
「1日3回のタイプなら4時間以上、1日2回タイプなら6~8時間以上空けるようにしてください。」と鈴木先生。
例えば、風邪薬を服用し、せき以外の症状が治まってきたときに、風邪薬からせき止め薬に切り替えたいという場合も同じです。風邪薬を飲んでから4時間以上(1日3回タイプ)、あるいは6~8時間以上(1日2回タイプ)空けてからせき止め薬に切り替えるようにしましょう。
A7.
くすりを使用する量が決められた用量を超えて過剰になることをいいます
くすりは目的の効果を得るために、適切な用量が決められています。もし、その量よりも多く飲んでしまうと、副作用が起こるリスクが高まります。
最近、特に若い世代で問題になっているのが、決められた用量を超えてくすりを過剰に摂取する「オーバードーズ(overdose=OD)」。“ドーズ(dose)”とは、くすりの“用量”を意味する英語です。
「くすりは用法・用量通りに使用するときの安全性は確認されていますが、それを守らず一度に大量に服用するのは大変危険です。急性中毒により、意識を失ったり、昏睡状態になったりすることもあります。また、くすりを無毒化したり体外に排出したりするために働いている肝臓や腎臓などの臓器の負担も大きくなり、機能を弱めてしまいます。
オーバードーズでは、風邪薬やせき止めが使用されることがあります。例えば風邪薬に含まれる“エフェドリン”という成分は、適量であれば気管支を広げ、せきを鎮める効果がありますが、とりすぎると心臓がドキドキしたり、血圧が上がったり、震えやめまいなどが起こることがあります。オーバードーズを続けていると、依存性により自分の意思ではなかなかやめられなくなるようなくすりもあります。もちろん、くすりを無毒化したり体外に排出したりするために働いている肝臓や腎臓などの臓器の負担も大きくなり、機能を弱めてしまいます。オーバードーズは体にとって非常に有害で、命の危険もあるので、絶対にやめてください」と小出先生。
A8.
効きすぎる可能性があるのでNGです。市販薬同士でも注意しなければならない組み合わせがあるので、注意しましょう
風邪薬、頭痛薬を、一つのものだけで飲む場合の安全性は確認されていますが、2種類以上のくすりを組み合わせたときには思わぬ影響が出ることがあります。これを「くすりの相互作用」や「くすりの飲み合わせ」といいます。
例えば風邪をひいて頭痛もする……。そんなときは風邪薬(総合感冒薬)と痛み止め(解熱鎮痛薬)を一緒に飲むと、よく効きそうな気がするかもしれません。でも、この飲み合わせはNGです。その理由は「これらのくすりには同じ成分が入っており、その成分の血中濃度が高くなりすぎてしまうから」と小出先生は説明します。
「風邪薬には実は“熱を下げて痛みを和らげる”解熱鎮痛成分が含まれています。ですから、風邪薬と解熱鎮痛薬を一緒に飲むとくすりが効きすぎたり、副作用が起こったりする可能性が高くなるのです」(小出先生)
「漢方薬なら一緒に飲んでも大丈夫?」と思うかもしれませんが、これもNG。「風邪のときには葛根湯や麻黄湯という漢方薬が使われますが、これらの中には“エフェドリン”という成分が含まれています。これは呼吸を楽にして、せきを鎮める作用のある成分です。
風邪薬やせき止め薬にもメチルエフェドリンという成分が含まれているものがあるので、一緒に飲むと摂取量が多くなりすぎて副作用を起こす可能性があります」と小出先生。
このほか、風邪薬とアレルギーなどのくすりも一緒に飲むのも避けましょう。「この場合は、“抗ヒスタミン薬”などの眠気を催す成分が含まれているので、眠気が強くなりすぎる可能性があります。抗ヒスタミン薬はせき止めや酔い止めの薬などにも含まれていますから、注意してください」と鈴木先生。
抗ヒスタミン薬を含むくすりを服用する場合には、車の運転などは避けてください。
それでは、外用薬(点鼻薬、貼り薬、塗り薬など)の場合はどうでしょう。例えば、風邪薬と花粉症用の点鼻薬、花粉症の飲み薬と点鼻薬などを一緒に使ってもよいのでしょうか。
「医療機関で処方される医療用医薬品では気をつけないといけないものがありますが、市販薬の場合は併用できるものが多いです。例えば抗アレルギー薬と点鼻薬を一緒に使う、解熱鎮痛薬を服用しながらかゆみ止めの塗り薬を使うといったことは可能ですが、購入時に薬剤師などに相談するようにしましょう」(鈴木先生)
とはいえ、市販薬の組み合わせについて「大丈夫かな?」と疑問に思うことも少なくないでしょう。
まずはくすりの説明書(添付文書)をしっかり読むことが大切です。説明書には、一緒に飲んではいけないくすりや、どのくらい時間を空けて飲むべきかなどが明記されています。
「説明書を読むことはもちろんですが、わからないときはぜひ薬剤師に相談するようにしてください。自己判断は禁物です。また、おくすり手帳は医療機関からもらったくすりの情報を“書いてもらう(貼り付けてもらう)もの”と思っている人が多いかもしれませんが、使った市販薬やサプリメントについて、“自分自身で記入しておく”のも大切です。そうすれば、自分が飲んでいるくすりとサプリメント全部について総合的に相談しやすくなります」と小出先生。
抗菌薬は、悪い細菌を殺したり、増えるのを抑えたりするくすりです。肺炎や膀胱炎など細菌感染が原因の病気にかかったときに医療機関で処方されます。ちなみに、風邪はほとんどがウイルスによるものなので、抗菌薬は効きません。
このような誤用で不必要な抗菌薬を飲むことも問題ですが、実は抗菌薬を適切に服用しないことでも大きな問題が起こっています。それが、抗菌薬が効かない「薬剤耐性菌」の出現です。
「薬剤耐性菌とは、抗菌薬が効かなくなってしまった菌のことです。処方された抗菌薬を勝手に減量したり、飲むのを途中でやめたりすると、生き残った細菌が薬剤耐性を獲得し、薬剤耐性菌ができてしまうリスクが高まるのです」と小出先生。
例えば5日間分の抗菌薬を処方されたのに、3日目には“症状が治った気がする”と飲むのをやめてしまった経験はありませんか? 実は症状が治まっても、原因となる細菌はまだ完全にはいなくなっていません。鈴木先生は人気漫画の『鬼滅の刃』(作:吾峠呼世晴)を例にとって、次のように説明します。
「抗菌薬で最初に殺されるのは弱い菌から。『鬼滅の刃』でいうと下弦の鬼たちで、実は上弦の鬼(ラスボス)はまだ倒れていません。その段階で、症状がなくなったからと抗菌薬を飲むのをやめてしまうと、どうなるでしょうか。強い上弦の鬼だけが生き残って、抗菌薬に対抗する“技”を身につけた『薬剤耐性菌』となってしまうのです。これを防ぐには、抗菌薬を決められた(処方された)期間、しっかり用法・用量を守って飲み切ることが大切。それにより、下弦の鬼だけでなく、上弦の鬼まで倒せます」
抗菌薬が効かない薬剤耐性菌は、今世界中で増えており、国際的な大問題になっています。感染症にかかっても効く抗菌薬がなくなると、たくさんの人が命を落とすことになりかねません。
国連は人類が地球で暮らし続けていくため2030年までに達成すべき目標として、「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げています。その中の一つが「すべての人に健康と福祉を」という目標。
大げさなようですが、薬剤耐性菌が増えることは、この目標の達成をも危うくします。
そしてその予防策の一つが、処方された抗菌薬を指示通りに飲み切ること。それは大きな視野で見ると、SDGsの達成にもつながるというわけです。
A9.
ダメ。医師から処方されたくすりは“その人だけのくすり”です
医師はくすりを処方するときには、その人の体質や体の状態に合わせて、一番安全で効果的なくすりを選んでいます。例えば何歳か、男性か女性か、体の大きさはどのくらいか、何かほかのくすりを飲んでいるか、持病やアレルギーはないかなど、くすり選びのポイントになる要素はたくさんあります。つまり、医師から処方されたくすりは、その人だけのものだということです。
「自分が風邪のときに飲んで効いたからといって、他の人にも効いて安全だとは限りません。逆に害を及ぼす可能性さえあります。病院で出されたくすりは絶対にもらったり、あげたりしないようにしてください」と鈴木先生は強調します。
では、市販薬はどうでしょうか。風邪薬を常備して家族で一緒に使っている方もいるかもしれませんね。
「市販薬は家族で共用するように常備するケースも少なくないでしょう。基本的には大丈夫ですが、家族の年齢や持病の有無などによっては一緒に使えないものもあるので注意が必要です。
例えば、子どもが飲める解熱鎮痛薬の成分はアセトアミノフェンなどに限られますし、くすりによって飲む量が違います。また高齢者がいるご家庭なら、その方に持病があるかどうかで使用を控えたほうがいいくすりもあります」(鈴木先生)
【第一三共ヘルスケアの該当製品】
「また、これまでにも紹介したように、風邪薬に含まれるメチルエフェドリンは気管を広げてせきを鎮める作用がある一方で、血圧を上げたり心拍数を増やしたりする作用もあります。これは高血圧の方にとっては注意が必要な作用になります。また、鼻炎薬などの鼻詰まりに効くくすりに含まれているプソイドエフェドリンは高血圧の方は症状が悪化するおそれがあるので飲めません。
家族が共用するくすりを常備したいという場合は、購入時に家族の年齢や持病などの情報を薬剤師に伝え、相談することをお勧めします。もちろん、くすりの説明書を読んで確認することも重要です」(鈴木先生)
A10.
食事と食事の間。食後およそ2~3時間後が目安です。食事中に服用するという意味ではありません
くすりを飲むタイミングには「食前」「食後」「食間」「寝る前」「頓服」などがあります。くすりに応じて、いつ飲むかが決められていますが、間違いやすいのは「食間」かもしれません。
「『食間』を食事中に飲むと勘違いしている方もいるようです。食間とは、『食事と食事の間』のこと。食事をしてから2~3時間ほどたったころを指します。胃の中がほぼ空になった状態でくすりを飲みましょう」と鈴木先生。
なお、「食前」は食事の30分ほど前。「食後」は食事が終わって約30分以内。「寝る前」は就寝の30分ほど前。「頓服(とんぷく)」は症状が出たときなど、必要に応じて飲むことです。くすりの説明書(添付文書)には、いつ飲むべきかが明記されています。指定されたタイミングを守って服用しましょう。
A11.
くすりによって捨て方が違います
使用期限が切れたくすりや、医療機関で処方されて余ったくすりを捨てるときには、どうすればよいのでしょうか。くすりは容器から取り出し、錠剤は封筒などに包んで捨てます。軟膏やクリームなどは紙に包んで捨てましょう。これらは燃えるゴミとして出せます。
使用済みのくすりの容器は自治体の分別方法に従って処分するのが一般的ですが、最近はリサイクル資源として再利用する動きも出ています。
第一三共ヘルスケアでは、2022年10月より「おくすりシートリサイクルプログラム」の実証実験を横浜市内で始めました。これは、使用済みの「おくすりシート」(PTPシート=錠剤やカプセルをプラスチックとアルミニウムなどで挟んだシート状のもの)を、薬局やドラッグストア、病院などに設置した専用回収箱で回収する取り組みです。回収したPTPはリサイクル処理して、新たなリサイクル製品として再生します。
おくすりシートは日本国内で年間約13000トン生産されています。高齢化の伸展に伴い、今後も使用量の増加が見込まれています。
おくすりシートはゴミではなく、貴重なリサイクル資源。持続可能な社会の実現に向け、資源として循環させる仕組み作りが望まれています。