本文監修:女医によるファミリークリニック 院長 竹中美恵子 先生
ぷるぷるとしている子どもの肌は、一見水分をたっぷりと含んだみずみずしい肌と思われがちです。しかし、子どもの肌は未完成なため、肌の一番外側で刺激から肌を守る表皮の厚みは、大人の約半分しかありません。
また、肌表面から水分が過剰に蒸発することを防ぎ、肌の潤いを保つ皮脂膜も、生後1カ月をピークに2~3カ月で皮脂の分泌量が低下し、思春期まで低い状態が続きます。その結果、肌の水分量も大人と比較すると少なめです。
こうしたことから子どもの肌は、大人よりバリア機能が低く、外部刺激に敏感で、特に乾燥が激しいシーズンになると皮膚がかさついたり白く粉が吹いたりしがちです。そして、さらにひどくなると、かゆみや湿疹が生じるようになります。
環境問題 | 新型コロナウイルス感染対策 | 秋冬でも汗をかきやすく |
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年々、夏の猛暑は厳しさを増し、あせもや日焼けなどで皮膚科を受診する子どもが多くなっています。また、もともと秋冬は空気が乾燥する季節ですが、全体的な傾向としても日本の相対湿度は低下傾向にあり、ヒートアイランド現象による乾燥化が進んでいるといわれています。 | 新型コロナウイルス感染予防対策の影響を受け、「マスクかぶれ」や手指の消毒で肌荒れを起こした子どもの受診が増えたといいます。 皮膚のバリア機能が弱い子どもは、マスクのこすれで肌荒れが起こりやすく、アルコール・手洗いなどが重なると肌が乾燥しやすくなります。 |
子どもは小さな体ながら大人と同じ数の汗腺を持っていて、とても汗をかきやすい特徴があります。また目に見えるところでは汗をかいていないのに、服の中は汗で湿っていることもあります。特に最近では、フリース素材など風を通さない冬の衣類も多く、保温効果の高い衣類を着せていると、脱いだら体が汗でびっしょりというケースもあります。 |
フリマで買った衣類 | 写真映え狙い | オーガニックでもアレルゲンになる成分を含む場合が |
フリマアプリの普及により、子育て世代で子どもの服やアイテムをフリマで購入する人が増えています。 ただし、身に着けるものを購入したときは、使用前に注意が必要です。前に使っていた人が使用している洗剤や柔軟剤が肌に合わず、子どもがかぶれや肌荒れを起こす可能性があります。使用前に、普段使用している洗剤で一度洗濯しましょう。 |
最近は年間を通じて親子で楽しめるイベントも多く、子どもをかわいい姿にして写真に収めたくなる機会もあるでしょう。 ただし、肌に触れたり塗ったりするものには注意が必要です。クリニックでよくある受診が、子どものメイクをした後の肌荒れ。目や口の周りは皮膚が特に薄いため、アイシャドウやリップで肌荒れを起こすことがあります。 最近では、顔に絵や文字を転写するタトゥーシールや、絵を描くフェースペイントでかぶれる子どもも多くなっています。我が子かわいさでしたことが、思わぬ皮膚トラブルにもつながるので、注意してください。 |
敏感肌を気にしてボタニカルやオーガニックのスキンケアを使用している女性も増えています。 しかし、自然由来だから子どもにも安心と思うのは禁物です。香料が含まれているものもあるほか、植物成分には、アレルギーの抗原となり得るタンパク質が含まれているものもあります。 オーガニックコスメを含め、肌に合ったものを選びましょう。 |
日常的なスキンケアは、大人も子どもも同じ、「洗う・補う・守る」です。皮膚に付いた汗やほこりなどの汚れをしっかりと洗い流し、低刺激のローションなどで保湿することも忘れずに。また、空気が乾燥している季節は、外部刺激にも敏感になりがちです。赤ちゃんでも使えるワセリンなどで、しっかり肌をガードしてあげましょう。
また、スキンケアは皮膚トラブルを防ぐだけではありません。子どもにスキンケアをしてあげることでスキンシップが生まれます。親子のスキンシップは、子どもの健やかな成長にもつながる上、触れ合うことによりお互いにハッピーホルモンといわれる 「オキシトシン」が分泌されることが科学的にも明らかになっています。
子どもへのスキンケアは、親子の愛情を深めるチャンスでもあり、一生のうち短い一時だけママやパパからしてあげられるケアでもあるので、大切にしていきましょう。
赤ちゃんの体を洗うときには、洗浄料をよく泡立てて包み込むように洗いましょう。洗い過ぎやこすり過ぎは乾燥肌の原因になるので、手を使って優しく洗ってあげてください。洗浄料は、肌に刺激を与えないできるだけ成分がシンプルなものがよいでしょう。
「顔→頭→おなかと手足→背中→おしり→股間」の順番で、洗浄料をよく泡立てて包み込むように洗いましょう。
わきの下や足の付け根のあたりなどくびれた部分には汚れが残りやすいのでしっかりと。
頭も汗をかきやすい部分。爪をたてないように気を付け、泡をのばすようにして洗い、皮脂の多い頭皮もきれいに。
全身をきれいにしたら、洗浄料が残らないようにしっかりすすぎましょう。
【第一三共ヘルスケアの該当製品】
バリア機能を守りながら洗うシンプル処方。
デリケートな肌に余分な負担をかけにくい固形石けん。
0歳から使える赤ちゃんのための全身シャンプー。しわやくびれの汚れも片手で洗いやすい泡タイプ。
入浴後には必ず保湿剤を塗って肌を守りましょう。選ぶときには、赤ちゃんでも使える肌に優しい処方で、塗りこまなくても肌にすっとなじむ、のびの良いタイプがよいでしょう。
【第一三共ヘルスケアの該当製品】
0歳※の赤ちゃんから使える全身用保湿ミルク。するする伸びてべたつかない、みずみずしい使用感です。片手で使いやすいポンプタイプ。
※生後28日以上の乳児を対象とした連用テスト済み(すべての方にアレルギーや皮膚刺激が起こらないわけではありません)
肌のバリア機能を守りながら肌あれを防ぎます。
コクがあるのに伸ばしやすく、特に乾燥が気になる部分におすすめのクリームタイプ。
【第一三共ヘルスケアの該当製品】
「ロコベースリペア」シリーズは、皮膚のバリア機能に着目して開発された皮膚保護保湿剤です。バリア機能をサポートする3つの肌脂質成分を配合し、高い保湿力・長時間持続・低刺激にこだわった処方です。
秋冬は空気も乾燥している上、皮膚の水分量も少なくなるので、衣類の摩擦などの刺激も感じがちです。
手だけでなく顔や目元、唇を含む全身に使用でき、添加物などを加えていないワセリンは、赤ちゃんにも使えます。
【第一三共ヘルスケアの該当製品】
「プロペト ピュアベールa」は、白色ワセリンをさらに精製し不純物を極力カットし、防腐剤無添加・無着色・無香料でベタつきが少なく、伸びの良い高品質ワセリンです。
油分が被膜となってお肌を覆うことで、肌表面からの水分蒸発を防ぐとともに、乾燥や摩擦などの外部刺激からお肌を守ります。また、優れた使用感で、お肌に余分な負担をかけず、手だけでなく顔や目元・唇を含む全身に幅広く使うことができます。
かゆみの多くは、乾燥肌による皮膚のバリア機能の低下から引き起こされます。未完成な子どもの肌はバリア機能が低く、少しの刺激でかゆみを感じたり、湿疹ができたりします。アトピー性皮膚炎のかゆみも一部は乾燥肌に由来するといわれています。
かゆみは、「引っかきたくなるような不快な感覚」と定義されており、特に子どもは我慢できずにかきむしってしまいます。患部をかき壊してしまうことで、皮膚のバリア機能が低下し、少しの刺激でも皮膚が反応するようになります。すると、皮膚の炎症が悪化しやすくなり、患部も拡大する、「かゆみの悪循環」に陥ってしまいます。
子どもが「かゆみの悪循環」に陥らないように、まずは保湿で対処します。それでもかゆがり、すぐに皮膚科に行けないときは、市販のかゆみ止めや、化膿を伴っている場合には抗生物質を配合した皮膚薬で対処するとよいでしょう。
子どもがかゆみを訴えたら、焦らずまずは保湿剤を使ってあげましょう。保湿をして乾燥を防ぐだけでかゆみが収まることも多くあります。特に、肌がかさついている、白く粉を吹いている場合は、乾燥によるかゆみであることがほとんどです。
汗をかいていても、引いた後の肌は乾燥しています。一度、肌を清潔にしてあげて、保湿剤を優しく塗りましょう。
炎症による痛みや化膿がなく、かゆみだけなら、かゆみを抑える抗ヒスタミン成分を配合したノンステロイドタイプのかゆみ止め(鎮痒消炎薬)がよいでしょう。抗ヒスタミン成分は、かゆみを引き起こすヒスタミンのはたらきをやわらげる効果があります。
かき壊し防止にパッチ剤のかゆみ止めもよいでしょう。パッチによるかぶれ防止に、日頃からワセリンを塗って肌を整えておくとより安心です。
かゆみのある部位に傷がある場合は、刺激を避けるために液剤ではなく、アルコールを含まないクリームタイプがよいでしょう。
【第一三共ヘルスケアの該当製品】
【第一三共ヘルスケアの該当製品】
ノンステロイドでクリームタイプの治療薬。かゆみのほかに、赤ちゃんの湿疹やかぶれにも。
かゆいところをかき壊し、傷口が汚れていたりすると細菌が入り込み、炎症を起こし、赤く腫れて痛む、ジュクジュクした膿(うみ)が出るなど、化膿の症状が見られることがあります。
こうした場合は、細菌の増殖を止める役割を持つ抗生物質が配合された薬で対処します。化膿した部位にステロイドを塗るとかえって悪化することがあるので、ノンステロイドのものを使いましょう。
【第一三共ヘルスケアの該当製品】
「クロマイ」は化膿を伴う皮膚トラブルに対応した、抗生物質配合の治療薬。上記の2つの製品は、いずれもノンステロイド。
「クロマイ-N軟膏」は、抗真菌成分も配合した軟膏タイプ。
「クロロマイセチン軟膏2%A」は、ベタつかず肌なじみのよいクリームタイプ。
かゆみを伴う赤い湿疹があれば、皮膚が炎症(皮膚炎)を起こしています。皮膚炎の治療に使われるステロイドにはたくさんの種類があり、効果の強弱によって5つのランクに分類されますが、市販のステロイド外用薬は、弱い方から3ランク(「弱い(Weak)」「普通(Medium)」「強い(Strong)」)のみが配合されています。(医療機関でも、よほど炎症がひどい場合を除いて、子どもには通常、主にこの3ランクの中から処方が行われます。)
ステロイド外用薬は皮膚炎の治療に高い効果を発揮しますが、乳幼児への使用においては特に、炎症を起こしている部位によっては副作用が起こることもあります。市販のステロイド外用薬を購入する際には、事前に薬剤師などの専門家に相談し、使用する部位や範囲も含めて詳しく伝えることが大切です。また市販のステロイド外用薬は2週間を目安に使用し、5~6日間使用して改善が見られない場合は使用を中止し、医療機関を受診するようにしましょう。
ステロイド外用剤について詳しくは「ステロイド外用剤の上手な使い方」をご覧ください。
赤ちゃんや乳幼児に起こりやすい皮膚のトラブルは、それぞれ原因や対処方法が異なります。子どもによく起こる皮膚トラブルとその対処法についてまとめました。
子どもによくある 皮膚トラブル |
新生児 | 乳児 | 幼児 | 解説 |
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乳児湿疹 (脂漏性湿疹・新生児ニキビなど) |
〇 | 〇 |
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接触皮膚炎 (おむつかぶれなど) |
〇 | 〇 |
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|
あせも (汗疹) |
〇 | 〇 | 〇 |
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とびひ (伝染性膿痂疹(のうかしん)) |
〇 | 〇 |
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じんましん (蕁麻疹) |
〇 | 〇 | 〇 |
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虫刺され | 〇 | 〇 | 〇 |
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乾燥肌 小児乾燥性湿疹 (肌荒れ) |
〇 | 〇 | 〇 |
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水いぼ (伝染性軟属腫) |
〇 | 〇 |
|
子どもの皮膚トラブルにおいて、トラブルを防ぐ日常のスキンケアとトラブルが起こったときの正しい対処は、欠かせません。よくある質問にお答えします。
Q.
「軟膏」と「クリーム」どちらを選ぶといいの?
A.
有効成分をチェックして、同じであれば、使いやすさや使い心地で選んでもよいでしょう。
軟膏もクリームも、ベースとなる成分(基剤)に有効成分を混ぜ合わせてつくられています。有効成分が同じでも、使い心地や刺激性などに違いがありますが、皮膚薬は一定期間使い続けられることが重要なので、使い心地で選んでもよいでしょう。
Q.
保湿剤や皮膚薬はどれぐらい塗ればいいの?
A.
1FTUを基本に、ティッシュが落ちないぐらいの量を目安にするといいでしょう。
1FTU(1フィンガーチップユニット)を基本に塗るようにしましょう。1FTUで手のひら2枚分の広さに塗ることができます。塗り終えた時に、肌にティッシュをのせて落ちないぐらいなら適量です。
Q.
皮膚トラブルのときにお風呂に入って大丈夫?
A.
熱いお湯は避け、ぬるま湯で。お風呂後はなるべく早く保湿ケアをしましょう。
お風呂に入ることは問題はありませんが、汗をかくと湿疹ができてしまうので、お風呂は熱いお湯ではなく、ぬるま湯で入れてあげましょう。
上がる前にシャワーを浴びさせて、乾燥性湿疹を防ぐために保湿剤を全身に塗ってあげてください。特に、顔は皮膚が薄く乾燥しやすいので、顔から塗ってあげるとよいでしょう。
Q.
子どもがお風呂やスキンケアを嫌がります。
A.
しっかり抱きしめてあげてください。子どもが喜ぶような工夫も考えてみましょう。
私の子育て経験からも、しっかりと抱きしめてあげれば、ほとんどの子どもはお風呂やスキンケアを嫌がりません。
また、子どもが喜ぶような工夫をすることも大切です。お風呂であれば、洗浄料を泡タイプにすると子どもは喜びます。スキンケアを嫌がりお風呂上りに十分塗れないようなら、子どもが寝ている時を狙ってこっそり塗るというのもよいでしょう。子どもが塗った薬をなめないようになれば、自分で塗らせてみるのもよいでしょう。
Q.
子どもの肌に赤い湿疹が!アトピーですか?
A.
アトピー性皮膚炎はそうそうかかりません。保湿でしっかりコントロールしましょう。
子どもの肌がかさついたり、赤い湿疹ができたりすると「アトピーですか?」と聞かれる親御さんがとても多くいます。しかし、アトピー性皮膚炎は、そうそうかかるものではありませんし、しっかりとコントロールすれば重症化することもほとんどありません。
アトピー性皮膚炎も乾燥によって起こることが多いので、深刻に悩まず、まずはしっかり保湿を心掛けてください。特に小さい頃からの保湿が重要です。
教えてくれたのは・・・
女医によるファミリークリニック
院長 竹中美恵子 先生
小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。「女医によるファミリークリニック」院長。
2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本小児皮膚科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本リウマチ学会などに所属。