やさしく?しっかり?どっちが正解?
2022.04.08 更新
子どもは頭皮も乾燥しやすいのが特徴です。一方、汗をかきやすいため、頭皮や髪のベタつき、ニオイなども生じやすくなり、ついついゴシゴシ洗いたくなりがち。
乾燥によるフケやかゆみ、汗によるトラブルを防ぐためには、この時期の頭皮の特徴を知り正しいケアを心がけましょう。頭皮や髪に負担をかけないような洗い方をすることと、洗い残しやすすぎ残しをしないようにすることが大切です。
たくさんの毛穴が密集している頭皮は、皮脂を分泌する皮脂腺が全身の中で最も多い部位※1ではありますが、3~10歳ごろの子どもの皮脂の分泌量は、生後すぐの頃や思春期以降の肌に比べて少ない傾向にあります。このため、乾燥によるフケが出やすいのが特徴です。
一方、汗を出す汗腺(エクリン腺)の数は生まれたときから生涯変わらないとされている※2ため、頭の小さい子どもは大人に比べ、汗腺の密度が高いといえます。もともと頭皮の汗腺の密度自体が、手のひら、足の裏に次いで高く※3、汗をかきやすい部位で、さらに一般に子どもは大人に比べて活動量が多いため、結果、子どもは頭に汗をかきやすい条件がそろっているのです。このため、頭が汗で蒸れたり、頭皮や髪の毛がベタついた状態になりやすく、それを放置すると汚れが刺激となってあせもができたり、雑菌の繁殖でイヤなニオイの元になることもあります。
「だからこそ、毎日のお風呂で体とともに頭もきちんと洗って清潔に保つことが大切です」と、野村皮膚科医院院長の野村有子先生は話します。
「ただし、体と同じように、正しい洗い方をしないと頭皮の乾燥や地肌あれを招き、フケやかゆみなどの原因になる可能性もあります」(野村先生)
参考:体の正しい洗い方はこちら
※1 山村雄一, 久木田淳ほか「現代皮膚科学大系第3巻A」335, 1982
※2 松岡和彦, 日本医科大学医学会雑誌, 41巻(5), 250-258, 1974
※3 Extreme Physiology & Medicine 2(4), 2013
では、実際の正しい洗い方を、6つのステップに沿って紹介していきます。
「シャンプーで洗い始める前に、まずお湯のみで頭皮と髪を洗い流しましょう。これを“予洗い”といいますが、それだけでも頭皮や髪の汚れの大半を落とすことができます。また、その後のシャンプーの泡立ちも良くなるので、摩擦による髪へのダメージも防ぐことができます」と野村先生は説明します。
「子どもが自分で頭を洗えるようになったら、まずは予洗いの方法から教えるのがおすすめです」(野村先生)
髪が長い場合は、予洗いの前にブラッシングもプラスしましょう。
「毛先のからまりやもつれなどをほぐせるのはもちろんのこと、髪の表面に付着した汚れもブラッシングによって取れるので、よりスムーズに予洗いができます」(野村先生)
「シャンプーを直接頭皮につける方がいらっしゃいますが、それはNG。頭皮や髪をこすりながら泡立てることになり、負担がかかります。まずは手のひらにシャンプーをとり、よく泡立ててから、泡を頭皮や髪につけて洗いましょう。泡で出るタイプのシャンプーなら、その手間を省くことができます」と野村先生。
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なお、「毛量がまだそれほど多くなく、髪も短い低年齢層の子どもの場合は、髪や頭皮も体と同じボディソープで洗ってもかまいません。『体の正しい洗い方 』で紹介した、泡タイプのボディソープなどもよいでしょう。髪が伸びて長くなってきたり、全身用のボディソープでは髪にきしみを感じるようになってきたら、シャンプーに切り替えるタイミングと考えてください」(野村先生)
シャンプー剤を選ぶ際には、子ども用や家族皆で使えるタイプのもの、敏感肌用などを選んでみるのもよいでしょう。大人向けの洗浄力の強いタイプや香料の強いタイプでは子どもの頭皮や髪には負担が大きくなることがあります。
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頭を洗う上で特に大切なのは、頭皮についた汗や皮脂などの汚れをきちんと落とすことです。「頭皮を傷つけないように、爪を立てずに指の腹を使って洗うことが鉄則です。指の腹を頭皮に密着させ、指先を細かく動かしながら髪と髪の間などすみずみまで丁寧に洗いましょう」と野村先生は話します。
おすすめの方法に「ジグザグ洗い」があります。指を開いて頭皮にのせ、顔のほうから後頭部に向かって、ジグザグに動かすように洗います。その際、指の位置をずらしながら、頭皮全体をまんべんなくジグザグ洗いしましょう。また、汚れがたまりやすい頭頂部や耳の後ろ側から後頭部の首近くにかけては特に念入りにジグザグ洗いをすると効果的です。
体を洗うときと同じように、シャンプー後も頭皮や髪に泡が残らないよう丁寧にすすぎましょう。
「髪の生え際や耳の後ろ側、フェイスラインなどはすすぎ残しの多い部分です。特に意識して洗い流すようにしましょう。泡が残っていると、皮膚炎などのトラブルの原因になる場合があります」と野村先生は注意を促します。
また、すすぎの際に使うシャワーの水圧が強すぎたり、お湯が熱すぎたりすると、皮脂が取れすぎて頭皮の乾燥の原因にもなります。手桶などを用いたかけ湯も頭皮への負担が少なく、自分で頭を洗えるようになった子どもにもおすすめの方法です。ただし、最初のうちはうまくできないのが普通。「その場合には、水鉄砲など水遊びで使うような遊び心のあるグッズを取り入れてみると喜ぶ子どもが多いですよ。子ども自身が楽しんで『すすぎ』というプロセスを受け入れやすい方法を考えてみましょう」と野村先生はアドバイスします。
大人の場合はシャンプー後にコンディショナーやトリートメントを使うのが一般的ですが、「子どもの場合、よほどパサついたりしていない限りはコンディショナーなどを使う必要はありません。使い過ぎたり、すすぎ残しがあったりすると余分な油分などが頭皮や髪に残ってしまうこともあるので気をつけましょう」(野村先生)
ただし、頭皮が乾燥しやすく、赤みやフケなどが出やすい場合などは、野村先生はオイルを使った次の方法をすすめているといいます。
「これだけで十分、頭皮も髪もうるおいます。天然椿油100%の植物性オイルなど、人間の皮脂に含まれる成分を多く含むオイルなら頭皮への負担も少なく、子どもにも安心して使うことができます」と野村先生。
また、髪が長い場合には、毛先のみにコンディショナーをつけてもよいでしょう。
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すすぎを終えたら、まずタオルで頭皮や髪の水分を吸い取ります。
「自分でシャンプーができるようになったときは、タオルはできれば頭と体、それぞれ分けて用意しましょう」(野村先生)。手早く、かつ効率よく水分を吸収することができるからです。
タオルはやわらかく肌ざわりが良く、吸湿性の高いものを選びましょう。
タオルドライの際に気をつけるのは、頭皮や髪をゴシゴシこすらないこと。タオルでやさしく頭皮を押さえ、髪はタオルに挟み込むようにして押さえると水分はきちんと吸収されます。とはいえ、タオルドライだけで完全に乾かすことはできないので、ドライヤーによる乾燥も必要です。頭皮に水分が残っていると蒸れたり、雑菌が繁殖したりする原因になるためです。
「毛量が少なく、髪が短い子どもの場合は、高温や強風のドライヤーで乾かすのはNGです。なるべく低温、弱風のモードで使いましょう。大切なのは頭皮をしっかり乾かすこと。指で髪を分けたり、手でかき上げたりしながら、頭皮に直接風が当たるように工夫しましょう」(野村先生)
一般的に乾燥しやすい子どもの頭皮ですが、「髪の毛で覆われて保護されているので、体のように入浴後の保湿ケアは必要ありません。ただし、フケやかゆみなどが気になる場合には、子ども向けの頭皮用の保湿ローションなどを塗布することで落ち着くことがあるので試してみてください。数日様子を見てもフケやかゆみが治らないようなら、皮膚科を受診するといいでしょう」と野村先生。
子どもが一人でお風呂に入るようになると、親の目が行き届きにくくなるのは頭も体も同じです。
「髪の生え際や耳の後ろ側などの肌があれているようなら、シャンプーの洗い残しやすすぎ残しがあるサインと考えましょう。
成長とともに、子どもの多くは親と一緒にお風呂に入りたがらなくなります。
そんなときには、シャワーヘッドを替えたり、新しいシャンプーを使い始めたりするタイミングで『一緒に試してみない?』と誘ってみるのも一つの方法です。たまに一緒にお風呂に入り、実際に子どもがどのように洗っているかを見てみることで、改善点などがわかるはずです」と野村先生は話します。
子ども自身に好きなシャンプーを選んでもらうなど、子どもの自主性を尊重するのも野村先生がすすめる効果的な教え方の一つ。楽しい、うれしいという気持ちが成長につながり、一生ものの正しいケアを長続きさせる秘訣になるかもしれません。