洗い方も保湿も“なでなでタッチ”でいたわるように!
2022.04.08 更新
子ども(3〜10歳頃)の肌は、大人よりもデリケート。間違った体の洗い方を続けていると、肌あれやあせもなど、様々な肌トラブルを招く可能性があります。
小さい頃は親が一緒にお風呂に入り体を洗えますが、子どもが一人でお風呂に入れる年齢になると、親の目がなかなか行き届きにくくなりがちです。
親が体を洗ってあげるとき、親から子どもに体の洗い方を教えるとき、それぞれ大切なポイントや、入浴後の保湿ケアの方法などについてご紹介します。適切な洗い方やお風呂の楽しさを親が子に伝えることは、子どもの人生にとって大きな財産になります。
肌は皮脂腺から分泌される「皮脂」などにより乾燥から守られています。しかし、幼稚園入園の目安となる3歳頃から思春期の一歩手前の10歳頃までは、皮脂の分泌が少なく、肌は乾燥しやすい状態にあります。
「生まれたばかりの赤ちゃんは、妊娠中にお母さんからもらった黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で皮脂が多く分泌されています。
しかしその後、生後2~3カ月経つとその影響が徐々になくなり、皮脂量が減少していくため、肌は乾燥しやすくなります。その後も小学校低学年くらいまでは皮脂の分泌量が少ないため乾燥しやすいのです。
成長が進み、小学校高学年~中学生になると性ホルモンの分泌が多くなり皮脂の分泌も活発になるため、ニキビができる人も目立ち始めます」と野村皮膚科医院院長の野村有子先生は話します。
また、肌の最も外側にある「角質層」の厚さは大人でも0.01~0.03mm程度しかありませんが、子どもの場合はさらにその半分~3分の1程度の薄さといわれています。角質層は外部の刺激から肌や体を保護し、肌内部の水分を保持する「バリア機能」を担っているため、「角質層が非常に薄い子どもの肌はバリア機能も未熟」という特徴があります。そのため、外からの刺激に弱く、敏感といえます。
「こうした要因から“肌は乾きやすい”一方で、子どもは日中の活動量が多く“汗をたくさんかく”機会が多いため、汗で肌がベタベタした状態になりやすいという特徴もあります。
さらにバリア機能が弱い子どもの肌にとっては、汗に含まれる成分や外からの汚れが“刺激”となり、かゆみや湿疹などができやすくなることもあります。
子どもの肌を健やかな状態に保つためには洗浄と保湿ケアの2つが欠かせません。毎日の入浴時にきちんと体を洗って汗などの汚れを落とし、入浴後には肌の乾燥を防ぐための保湿ケアを行いましょう」(野村先生)
そこで知りたいのは、「子どもにはどんな洗浄剤を使えばいいの?」という点。野村先生は「泡で出てくるタイプのボディソープ」をすすめます。
「泡で出てくるタイプならば、泡は肌についただけで表面の汚れを吸着して落とすことができるので、タオルなどでこする必要がありません。
お風呂で子どもを待たせているような状況なら、泡立てる時間ですら焦りを感じてしまうこともありますが、最初から泡で出てくるタイプなら時短にもなり、親御さんの気持ちの負担も軽くなることでしょう。
泡の利点は、皮膚をこすることなく、スムーズに体全体に広げて洗うことができることです。泡のキメが細かいほど汚れが落ちやすくなるので、泡タイプのボディソープを選ぶ際の目安にしてください。
ボトルをプッシュするだけで泡が出てくるボディソープは、子どもが自分で体を洗う際にお風呂の楽しさを感じるきっかけにもなります。子どもに正しく洗ってもらう第一歩として、またお風呂好きになってもらうのにも一役買ってくれそうです」(野村先生)
もちろん、泡タイプのボディソープでないといけないわけではありません。添加物が少ない利点をもつ固形石けんや、お好みのボトルやテクスチャーが数多く選べる液体のボディソープもありますので、「基本的には、使い心地の良いもの、肌なじみの良いものを選べばOK」と野村先生。
なお、固形石けんや液体のボディソープなどの洗浄剤を使う場合も、しっかり泡立ててから洗いましょう。
ただし、乾燥しやすい子どもの肌のためには、次のことにも留意が必要です。
小学生になる頃には、親が子どもの体を洗ってあげる時期から子どもが自分で洗うようになる時期への移行期が訪れます。
移行するまでに伝えたい、大切な洗い方、すすぎ方をチェックしましょう。
ゴシゴシ強くこするような洗い方をすると、肌にとって必要な皮脂まで取り除いてしまったり、肌表面の角質層を傷つけたりすることになり、バリア機能を低下させる原因になる場合があります。また、子どもの体を洗ってあげる場合には、ゴシゴシ洗いの“不快感”からお風呂嫌いになってしまう可能性も。
「基本は、“いい子ね”となでなでするようなやさしいタッチを心がけましょう。昨今どのご家庭も忙しく、毎日のお風呂も大変とお察ししますが、親が子どもを洗ってあげる時期は人生のほんのひととき。『洗わなきゃ』という親側の気持ちではなく、『洗ってもらっている本人は、今心地よく・気持ちよく感じられているかな?』と子どもの気持ちに思いを馳せがなら洗えるといいですね」(野村先生)
「汗や汚れがたまりやすく、すすぎ残しが起こりやすいのは、わきの下やひじの内側、ひざの裏、おしりの下など、曲げたり伸ばしたりすることが多い体の部位です」と野村先生。腕を上げてわきの下やひじの内側を洗う、ひざを伸ばして裏側まで洗う、前かがみになって腰やおしりの下を洗う、といったことを意識的に行いましょう。
すすぎの際も同様に、体全体の泡を流した後にわきの下やひじ、ひざ、おしりなどをそれぞれ丁寧にシャワーやかけ湯で泡を落としましょう。
強い水圧がかかるシャワーや水道水に含まれる塩素の影響で、過度に皮脂が洗い流されて肌あれの原因になる場合があります。
「肌への負担を軽減するには水圧をできるだけ弱めに調整するほか、浴槽のお湯を使ったかけ湯で洗い流すのもおすすめです。また、塩素を減らしたり、除去したりする効果のあるシャワーヘッドなどに切り替えるのもよいでしょう。
楽しみながら洗い流す習慣をつけるきっかけとしては、ゾウさんの形をしたジョウロにお湯を入れて使うなど、楽しさをプラスすることも子どもに興味を持たせるのに役立ちます」(野村先生)
次に、親が子どもの体を洗う場合・子どもに洗い方を教える場合のポイントをご紹介します。
両手のひらに泡をとり、子どもの肌に泡を塗り広げながら、なでるようにやさしく洗いましょう。日々の普通の汚れならタオルなどを使う必要はありません。手のひらで洗うメリットは、タオルによる物理的な刺激を加えないだけではありません。
「自分の手で子どもの肌に触れることで、カサついたり肌あれを起こしたりしていないかなど、肌の状態をその都度確認することもできます」(野村先生)
タオルを使うときには、ガーゼ素材など肌あたりのやわらかいものを選ぶとよいでしょう。
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「自分で体を洗うようになった子どもたちに多く見られるのが、ボディソープの使い過ぎです。前述の泡タイプのボディソープなどは押すだけで泡が出てくるので、おもしろくてつい出し過ぎてしまうのです。『1回分の量はこのくらいだよ』と最初に親御さんが手のひらにとって見せるなどして、適量を教えてあげましょう」(野村先生)
「最初から全身をすみずみまで洗うことを教えようとしても、なかなか難しいものです。まず自分の目で見えるところから、手のひらで肌をなでるようにやさしく洗うように教えましょう。これができるようになったら、手の届きにくい背中などをやわらかいガーゼタオルで洗う方法を学んでもらうといいでしょう」(野村先生)
体を洗い、清潔に保つことは生涯にわたってとても大切なこと。毎日続けられるよう、楽しいことだと子どものうちに感じてもらうことが理想的です。「最初のうちは水遊びするような感覚で、親子一緒に楽しみながら体を洗うことを教えるといいですね」(野村先生)
なお、子どもと一緒に入浴しなくなると、きちんと体を洗えているかどうかチェックするのが難しくなります。
「洗い残しが続くと、その部分の肌があれやすくなります。『わきの下』や『ひじの内側』、『ひざの裏側』など洗い残しやすい部分の肌の状態は定期的に確認しましょう。
また、肌着に黄色っぽいシミがついているような場合も、肌に何らかのトラブルが生じている可能性があるので、洗濯のときには確認しましょう」(野村先生)
体を清潔に保つことと同時に重要なのが、入浴後すばやく行う保湿ケアです。まずお風呂から出たら、大きめのバスタオルで体をふんわり包み込みましょう。体についた水分をゴシゴシ「拭き取る」のではなく、やさしくポンポンとタオルを押し当てて「吸い取る」ことが、肌の乾燥や肌あれなどを防ぐ大切なポイントです。
体の水気が取れたら、なるべく早く保湿ケアを行いましょう。というのも、入浴後10分を超えると肌の水分量が減少することが、大人の女性の肌を対象に行われた研究結果※1からわかっているからです。
※1:健康な20~49歳の女性14人を対象に、入浴前後の角質層の水分量の変化を計測。入浴10分後までは入浴前より角質層の水分量が多かったが、それ以降は入浴前と同程度まで低下。さらに30分後、60分後では角質層の水分量が入浴前より有意に低くなった。
データ : 日本健康開発雑誌 第39号 : 1-5, 2018より改変
「短時間で効率よく保湿ケアを行うには、ボディローションやボディミルクなど、水分が多く伸びの良いテクスチャーの保湿剤を使うのがおすすめです。
両手のひらにたっぷりの量をとり、さーっと肌の上に塗り広げましょう。
しっかりなじませようと“肌にすりこむ”ようにつける人もいますが、摩擦が肌への刺激になるのでNGです。肌の上にのせるような感覚でつければOK。体を洗うときと同様に“なでなでタッチ”を意識するといいですね。
また、お風呂上がりにすぐケアができるように、脱衣所にボディローションなどを置いておくのがおすすめです。お子さんのケアと同時に、親御さんも一緒にされるとさらにいいですね」(野村先生)
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粉が吹くほど乾燥していたり、あれている部分には油分の多いワセリンを塗布すると、肌内部の水分の蒸発を防ぎ、肌を保護してくれます。
「ワセリンのテクスチャーは硬めです。上手に塗るには、最初に手のひらに適量をとったらもう一方の手を重ねて包み込むようにして温めること。やわらかくなって伸ばしやすくなります。また、ローションを塗るときのように一度に塗り広げようとせず、肌の上に少しずつ点置きしてから伸ばすようにすると、ムラなくなじませやすくなります」(野村先生)
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とはいえ、どんなに肌のために良い保湿剤であっても、子どもによっては「ベタつくからイヤ」など拒否反応を起こしてしまうこともあるでしょう。
「子ども自身の使用感の好みなどを尊重することは、保湿ケアを習慣化していく上でも大切なことです。
テクスチャーなどの異なる複数の保湿剤を実際に使ってもらって、子どもに好きなものを選んでもらうといいですね。子どもも『自分で選んだ』といううれしさから、保湿ケアにもより積極的になるのではないでしょうか」(野村先生)
今回紹介した体の洗い方や保湿ケアを数日間続けていても肌の乾燥が改善しない、あるいはかゆみがあり、かきむしったり、傷跡が残ったりしているような場合には、アレルギーなどが潜んでいたり、別の原因がある可能性もあります。その場合はなるべく早く皮膚科を受診しましょう。